古墳出土の金属製針について
大谷 宏治
古墳出土の針を集成・検討すると、古墳時代の金属製針は長さから4種類に区分することができ、古墳時代を通じてb類(5〜10㎝)を中心として使用され、古墳時代前期末〜中期前半に長さが短いもの(a類=5㎝未満)が確認できること、やや太いものと細いものの組み合わせが確認できることから、古墳時代中期の段階で長さや太さによる機能分化が進んでいたことを想定した。また、針を副葬する被葬者の性別は必ずしも女性だけに限定されるものではないことを確認した。さらに、針の副葬状況から、針は農工具とともに副葬されることが多いことから農工具とともに生産用具として位置づけられていた可能性を想定した。また、被葬者が針を使用した職掌(服飾生産や皮革製品生産)との関連性があることを想定するとともに、針を使用した生産が地域的に限定されていた可能性を想定した。一方で、北部九州では頭部付近に副葬される事例が多いことから、針の副葬にあたって地域的な副葬の風習の違いが存在した可能性も想定した。