栃木県南東地域の五輪塔-益子地域の五輪塔を中心として-
上原 康子
( UEHARA Yasuko )
栃木県南西部の益子町には多数の中世五輪塔が存在するが、これまでに調査は実施されておらず、その実態は把握されていない。本稿では町内の五輪塔の実測調査を行ない、近県の調査・研究成果を基に若干の考察を加えた。益子地域では宇都宮家墓所や大郷戸で遅くとも14世紀初頭頃から五輪塔が造立されはじめ、15世紀以降周辺の墓地でも五輪塔が用いられるようになる。この地域では花崗岩製の五輪塔が多く、地元産の凝灰岩を用いる宇都宮地域とは様相が異なる。益子に最も近い花崗岩が採掘される場所は筑波山系の地域であり、同地域からの石造物文化の影響も少なからず及んでいたのではないか。