仙台城本丸石垣の地震被災と伝統的な土木技術
Earthquake Damages and Traditional Engineering Works Technology in the Main Enclosure Stone Wall of Sendai Castle
金森 安孝
( KANAMORI Yasutaka )
仙台城本丸跡の石垣は、昭和30年代以降、変形が著しくなり、仙台市は1997年から工期6年間で石垣解体修復工事に着手した。並行して行われた仙台市教育委員会による発掘調査によって、現存石垣の背面構造を記録化し、階段状石列や排水施設とともに、地中に埋没していた2時期の旧石垣を発見した。石垣は、伊達政宗が慶長年間に築いた築城期の石垣(Ⅰ期)と、元和2年(1616)の地震で崩壊して再築されたⅡ期石垣で、現存最古の城絵図「奥州仙台城絵図」に描かれる石垣である。仙台藩が江戸幕府に提出した修復窺や老中奉書等の記録から、Ⅱ期石垣は正保3年(1645)および寛文8年(1668)に起きた地震で全面崩壊したのち、崩壊を免れた北東部の石垣「東築留」を残して再利用し、寛文13年(1673)以降に修復された現存石垣(Ⅲ期)であることが判明した。現存石垣内部の土木構造は、旧地形を熟知し、地震で崩壊した旧石垣石材を再利用した階段状石列の敷設や、既存の排水施設を連結して活かすなど伝統的な土木技術が駆使され、その理念と工法は修復石垣に活かされている。修復石垣の安全性確保の目的で記録化の上で導入された耐震補強工の耐震性能は高く、東日本大震災(2011)以降の地震による被害を免れている。