UAV-LiDARによる小豆島加藤家石丁場の高精度地形計測
1.はじめに
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下、産総研)と独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所(以下、奈文研)は、2022年度より共同研究「全国文化財情報デジタルツインの社会実装に関する研究」を締結し、2つの目的を掲げている。
1.文化財デジタルデータに関し、データ仕様およびメタデータの標準化モデルを作成する
2.文化財デジタルデータに関し、プラットフォームおよびデータ連携基盤を構築する
これらの目的を実現するために、協力機関と連携し事業推進している。近年では、UAV-LiDARの急速な技術発展と低廉化によって、文化財分野への実務利用も視野に入りつつある。詳細な3D地形モデルは、文化財調査の基礎データとなる。そこで、山中での文化財分布踏査での有効性を検証するために、香川県小豆島の大坂城石垣石丁場を対象にUAV-LiDARによる高精度地形計測を試みた。計測は、産総研が株式会社アクセス(奈良県広陵町)に委託して実施した。
図1 小豆島小瀬のUAV-LiDAR計測範囲(赤枠)
2.計測緒元
2.1 スケジュール(実績)
計測日:2022年12月5日
計測スケジュール:
7:40 - 9:00 調整点設置、観測
9:00 - 15:00 小型機による試験飛行、オルソ画像撮影、レーザ計測、データチェック
2.2 作業仕様
計測場所:香川県土庄町小瀬。香川県指定史跡 大坂城石垣石切小瀬原丁場跡。図1
面積:33ha以上
点密度:100点/㎡以上
※山頂付近は試験的に400点/㎡
撮影回数:1回
2.3 機材
機体名:UAV航空機
最大離陸重量:25kg未満
最大到達高度:500m
レーザシステム
最大発射レート : 200kHZ
システム正確度 : ~5cm
スキャナー視野角 : 360°
GNSS/IMU : ApplanixAPX-20
リターンパルス数 : 5パルス
図2 UAV-LiDAR機体
3.結果
当該地は、急斜面で木々が繁茂しており、人間が容易に立ち入れない場所である。そこでUAV-LiDARを活用することで、写真では判別できなかった地形情報を取得することができた。木々に覆われ、把握できなかった道や近代と思われる採石跡を可視化できた。また、巨石と思われる地点などもデータ上で確認できたため、実際の現地踏査の際に、効率的で質の高い調査をすることが可能となる。
※本稿は、小豆島石丁場調査委員会 2023 『小豆島石のシンポジウム2023資料集「日本遺産の石の島、新たな発見と保存をめざして!」』 掲載の 高田祐一「UAV-LiDARによる小豆島加藤家石丁場の高精度地形計測」に一部加筆修正のうえ、転載するものである。
図3 オルソ画像
図4 陰影図(グラウンドデータ)
図5 地表面(木々をデータ上で除去)
図6 山頂付近の3D点群データ(重ね岩とお堂付近)
図7 山頂付近の3Dデータ(重ね岩とお堂付近。木々を除去)
図8 木々に隠れて見えなかった道跡が見える
図9 巨石らしきものが見える。現地調査が必要
図10 鉄塔まで3D化可能
図11 重ね岩の断面図
図12 重ね岩の鳥居までデータ化