鹿角製装身具類について 東海地域の縄文時代晩期を中心に
川添 和暁
骨角器という動物性素材の道具類は、さまざまな種類のものが包括されている。単に動物性素材を使用しているという点から一括して論ずる前に、それぞれの道具に対する製作・使用・廃棄の諸様相について考古学的な検討を行う必要があると考えている。近年、筆者は、特に鹿角の使用に関して、製品との対応関係の検証作業を行っている。本稿は、その中でも東海地域の縄文時代晩期における装身具類についての成果である。13種類の分類の中で、ごく一部を除き非半截系の材への比重が高く、各分類に対応する材の法量・形状がほぼ定まっていた可能性を提示した。また、各分類における製作・使用状況は同一ではないようである。さらに、分類の一部に関しては、吉胡・伊川津の両遺跡が製作+使用遺跡、その他の多くが使用遺跡となることが窺えられた。このように、同じ鹿角製でも、根挟みを中心とする棒(点)状刺突具とは、製作・使用・廃棄(埋納)の状況が大きく異なることを指摘することができる。