瓶子窯跡出土の文字陶片
武部 真木
瀬戸市凧山町に所在する瓶子窯跡は、近世の茶入を多く焼成した窯跡として古くから存在が知られている。この窯跡の物原部分について発掘調査を行ったところ、文字を有する小陶片が多数出土した。近世の窯業遺跡に限らずほとんど類例のない出土遺物であり、しかも文字の多くが「人名」と判断できるなど極めて特殊な資料であることがわかった。生産工程上での陶片の役割をはじめ、瓶子窯跡の操業時に結び付く人物の特定など調査はまだ端緒についたばかりではあるが、瓶子窯跡の解明のみならず茶陶生産に関わる重要な史料の発見と考え、報告書刊行に先立ち概要を紹介しておく。