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田善とテンセン ―亜欧堂系銅版江戸名所図における表現技法上の諸問題―
Who was “Tensen” ? ーAn etcher who had similar etching techniques and expressions to Aōdō Denzen in the late Edo period.

塚原 晃 ( Tsukahara Akira )
江戸時代を代表する銅版画家・亜欧堂田善は、その優れた観察眼と斬新な造形感覚で、多くの江戸名所風景を銅版画で制作したとされている。その中でも、「アサクサヲクヤマ」「ミツマタノケイ」などのカタカナの画題と「アヲヲテンセン」などと画家名を記した大形の江戸名所風景シリーズは、田善の風景銅版画の傑作として知られてきた。ところが近年、その中の一図「アサクサヲクヤマ」の鑑識を疑問視する説が出された。これを受けて本稿では、表現技法上の観点から、亜欧堂田善の銅版画基準作と大形江戸風景図を比較した。結果、奇妙なプロポーションの人物表現、稚拙さの目立つ描線、独特なカタカナ表記など、基準作の作風とは相いれない表現を多数指摘できることが判明した。結論としては、これらの大形江戸名所銅版画を制作した「テンセン」なる人物は、亜欧堂工房で田善のごく近くで銅鐫に関わった人物で、田善本人とは異なる意図や趣向のもとに、これらの銅版画を密かに作っていたと思われる。
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総覧登録日 : 2021-11-19
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