大阪府河内平野における11~17世紀の河川氾濫と土地利用の変化
River Flooding and Land-use Change in the Kawachi Lowland Plain, Osaka Prefecture, from the 11th to 17th Centuries AD
井上 智博
( INOUE Tomohiro )
大阪府河内平野における11~17世紀の地形形成・堆積環境変化と土地利用の関係について、島畠の発達過程に着目して整理した。島畠の分布は河川活動によって形成された高まりである沖積リッジの範囲とほぼ重なっており、沖積リッジの形成に伴って発達したと思われる。13~14世紀と15世紀後半~17世紀に発達した島畠は「洪水復旧型」に分類され、数十年に1回程度の頻度で起こった洪水の復旧過程で規模が拡大していった。夏季降水量を反映する中部日本の樹木年輪の酸素同位体比変動を参照すると、洪水復旧型島畠が発達した時期には降水量が数十年周期で激しく変動しており、島畠発達の背景に降水量変動があった可能性が示唆された。また、花粉分析データは15世紀後半以降にマツ属が急増したことを示しており、その時期以降に周辺の山地などにおいて人間活動が活発化し、森林破壊が起こったと推定された。森林破壊は土砂流出量を増加させ、島畠発達の一因となったと推定される。これらのことから、洪水復旧型島畠は、降水量変動や沖積リッジの発達という自然環境と、山地利用による土砂流出量の増加などの人間活動の相互作用によって発達したと考えられる。