静岡県柏峠黒曜石原産地の産状に関する考古学的評価
阿部 敬
中村 雄紀
三好 元樹
柴田 亮平
伊豆半島中東部にある柏峠黒曜石原産地に関する地質学文献の渉猟と現地踏査を行った。調査成果とその評価は以下の通り;①黒曜石産出岩体は宇佐美火山よりも新しい第四紀の「柏峠石英安山岩」である。②散在する黒曜石の分布範囲はこの岩体の分布範囲にだいたい収まる。③黒曜石原石のサイズは露頭の大型亜角礫と露頭直下の小型亜角礫とで二極化している。④発見露頭の規模とそれに付随する黒曜石の大きさ・質は、愛鷹・箱根第2期に安定供給された大型・良質原石には見合わないが、同第三期や武蔵野台地Ⅳ下・Ⅴ上層段階の供給原石としてはありえた。④初期細石刃石器群に伴う代官山型細石刃核に選択的に利用された小型亜角礫は、発見された小規模な露頭直下でも大量に分布する。⑤踏査で採集された細石刃核は剥片素材で、しかも代官山型より際立って大きく、異なる時期そして/あるいは地域的な細石刃石器群の存在を暗示する。⑥柏峠産黒曜石はその利用目的に対して原石の産状と採取方法とが密接に関連する。