堂ヶ谷経塚出土の腰刀に関する予察
大竹 弘高
平安時代末期頃の短刀は、伝世品を含め、類例がほとんど知られていない。そのため、堂ヶ谷遺跡のように、一つの遺跡からこれほどの短刀が出土することは稀なことであり、平安時代の刀剣類を研究する上でも有効な資料になり得ることは間違いないであろう。本稿では、堂ヶ谷経塚出土の腰刀を刀身の長さと、切先の形状によって4種類に分類することを試みた。鎌倉時代の伝世品でも定尺より長いものや短いものが知られ、堂ヶ谷経塚出土の腰刀も同じような傾向を示す事と、切先の形状の違いは使用上の機能の違いによるものではないかという事を推測した。また、棟角より刃画の幅が狭いものが複数認められることから、研減りによる形状の変化の可能性を指摘した。ただし、曲げられた状態のものもあることから、埋納のために加工された腰刀も含まれる可能性もあり、茎や画の形状も大多数の腰刀とは異なることが、含まれることから、これらの異質な腰刀類の類例を探り、さらに研究が必要であろう。