Ibaraki Prefecture

常陸太田市集中曝涼【文化財解説（青蓮寺】

　青蓮寺の由来は、親王であったころの天武天皇が天智９年（670）から２年ほど留まられ、帰還後に仏像や聖徳太子の像を安置したとの言い伝えがあります。その後五百余年を経て、周観上人が天台の法流を伝え、皇跡山極楽院瑞巌寺と称したとされます。畠山重忠の第2子重秀は、父が殺された元久２年（1205）に出家、恵空と称しましたが、父の墓を尋ねて常陸に来た際に当山の太子堂に泊って太子の夢を見、そのお告げに感じて親鸞の弟子となり、法名を性証と改めました。性証は建保6年（1218）に再訪の折、荒れはてた境内を整え、堂宇を建てて浄土真宗の寺として住みました。その後に青い蓮の夢を見たことから、青蓮寺と改めたと伝えられています。

県指定文化財 木造阿弥陀如来立像
　青蓮寺の本尊である本像は、像高53.5㎝，光背も含めると102㎝、檜材の寄木造りの立像で、鎌倉時代後期の作と考えられています。整った顔立ちや流麗な衣の線など、とても美しい像ですが、両手が手首から先が失われているため（現在は後補）、元はどのような印相であったのかがわからないのが残念です。（昭和46年10月28日指定）

市指定文化財 豊後国二孝女関係資料（17点）
　青蓮寺は「豊後国の二孝女」の舞台となった寺院でもあります。現在の大分県臼杵市の農民、河野初右衛門は、文化元年（1804）に浄土真宗の開祖親鸞上人の遺跡巡拝の旅に出発。京都、越後、陸奥を遍歴するも病に倒れ、ついにここ青蓮寺で動けなくなりました。文化8年（1811）、親鸞上人550回忌の折、京都西本願寺で青蓮寺住職と初右衛門の菩提寺である臼杵の善正寺住職が出会い、初右衛門が病臥、7年におよぶことを伝えました。知らせを聞いた初右衛門の娘つゆととき（当時22歳と19歳）は、周囲に反対されながらも臼杵を出発、同年6月から4ヶ月かけ幾多の苦難を乗り越えて約300里（約1200ｋｍ）を踏破し、青蓮寺で再会を果たした3人は、水戸藩や臼杵藩の援助を受けて、翌年無事に帰郷をはたしました。
　この物語は、臼杵では代々語り継がれ、供養碑が建てられ、地元の小学校の校歌にまでなっています。一方の青蓮寺には、残念ながらこの物語は語り継がれていませんでしたが、平成17年春に、地域の研究者の手によってこれらの資料の存在が明らかとなり、各種の資料をまとめた「豊後国の二孝女」が豊後国の二孝女研究会によって発刊され、注目を浴びることとなりました。現在では、県立高校の道徳の教科書にも採用されています。また、物語調に現代語訳した「実話 病父を尋ねて三百里 豊後国二孝女物語」も発刊されています。
　平成22年、関係資料17点が市指定文化財になり、青蓮寺境内に顕彰碑が建てられました。なお、平成23年5月には「二孝女顕彰会」が発足し、二孝女の顕彰活動を推進しています。（平成22年9月8日指定）