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※過去開催分含む
デジタル技術による文化財情報の記録と利活用 > 6 号 > 文化財3Dモデル公開に関する検討会議

文化財3Dモデル公開に関する検討会議

岩佐 朋樹 ( 長崎県埋蔵文化財センター(当時) ) 岩村 孝平 ( 岡山県備前市教育委員会 ) 宮本 利邦 ( 阿蘇市教育委員会 ) 橋口 剛士 ( 嘉島町教育委員会(当時) ) 金澤 舞 ( 和歌山県立紀伊風土記の丘 ) 高田 祐一 ( 奈良文化財研究所 ) 上村 緑 ( 和歌山県立紀伊風土記の丘 ) 神 啓崇 ( 福岡市 ) 水戸部 秀樹 ( 山形県埋蔵文化財センター ) 石井 淳平 ( 厚沢部町農業委員会(当時) ) 中村 良介 ( 産業技術総合研究所 ) 仲林 篤史 ( 東大阪市(当時) ) 堀木 真美子 ( 愛知県埋蔵文化財センター ) 野口 淳 ( 金沢大学(当時) ) 林 正樹 ( 富田林市 )

Brainstorming Session on Publishing 3D Models of Cultural Properties

Iwasa Tomoki ( Nagasaki Prefectural Archaeological Center ) Iwamura Kouhei ( Bizen City Board of Education ) Miyamoto Toshikuni ( Aso City Board of Education Education Department Education Division ) Hashiguch Tsuyoshi ( Kashima Town Board of Education ) Kanazawa Mai ( Wakayama Prefectural Kii-fudoki-no-oka Museum of Archaeology and Folklore ) Takata Yuichi ( Nara National Research Institute for Cultural Properties ) Uemura Midori ( Wakayama Prefectural Kii-fudoki-no-oka Museum of Archaeology and Folklore ) Jin Hirotaka ( Fukuoka City ) Mitobe Hideki ( Yamagata Prefectural Center for Archaeological Research ) Ishii Junpei ( Assabu Board of Education ) Nakamura Ryosuke ( National Institute of Advanced Industrial Science and Technology ) Nakabayashi Atsushi ( Higashiosaka City ) Horiki Mamiko ( Aichi Prefectural Center for Archeological Operations ) Noguchi Atsushi ( Kanazawa University ) Hayashi Masaki ( Tondabayashi City )
岩佐 朋樹, 岩村 孝平, 宮本 利邦, 橋口 剛士, 金澤 舞, 高田 祐一, 上村 緑, 神 啓崇, 水戸部 秀樹, 石井 淳平, 中村 良介, 仲林 篤史, 堀木 真美子, 野口 淳, 林 正樹 2024 「文化財3Dモデル公開に関する検討会議」 『デジタル技術による文化財情報の記録と利活用』 遺跡地図・3D・GIS・モバイルスキャン・デジタルアーカイブ・文化財防災 https://sitereports.nabunken.go.jp/online-library/report/8
 3次元データを活用することで、発掘調査の効率化や迅速化が期待できることが議論された。具体的には、3次元データを用いることで遺構の深さや広がりを把握しやすくなり、試掘調査の結果を分析したり、発掘調査の規模や作業量を事前に推測しやすくなる。また、3次元データからレポート用の2次元図面を作成するツールがあれば、作業の省力化にもつながる。さらに、3次元データを一般公開すれば、発掘調査の普及啓発にも役立つ。

開催の背景と目的

共同研究「全国文化財情報デジタルツインの社会実装に関する研究」に基づき2022年10月に産業技術総合研究所と奈良文化財研究所で全国文化財情報デジタルツインプラットフォームを構築した。

現在は、既にオープンになっているデータや関係者の3Dモデルを掲載している。全国の文化財関係機関の3Dモデル公開基盤として位置付けており、文化財3Dモデルを登録する中で明らかになったインターフェースやモデル自体の課題を、実務レベルで議論する必要がある。そこで、先進的に3Dを導入されている全国の各機関に参集いただき、議論することで考え方の整理をはかり、実務レベルでの対応を検討する。 また、検討会の中で各機関の公開可能なデータの「全国文化財情報デジタルツインプラットフォーム」への登録作業を通じて、活用の可能性および課題を明確にする。2023年2月17日・18日 奈良文化財研究所にて開催した。

全国文化財情報デジタルツインプラットフォーム(3DDB)へのデータ登録の試行

高田 皆さんに各自の3Dデータを産総研の3DDB Viewerに登録する作業を一通りやっていただきました。気づいた点やあればいい機能などありましたら、頭出しということで発言を一人ずつお願いしたいと思います。

中村 もし可能でしたら、登録してもらったデータの簡単な解説や紹介も一緒にお願いします。

野口 私が登録したものは、東京都の国分寺市の調査で出た縄文中期の恋ヶ窪遺跡の竪穴住居です。これ、実は中村さんも一緒に行って、調査区全体は中村さんがBLK2GOというもっと立派なスキャナで測って、個別の遺構をiPhoneのScaniverseで測っています。

 この遺跡のデータで全景と個別の遺構2つのデータの3つのデータを登録しています。これは何をやったかと言うと、iPhone LiDARを使っている人は大体わかると思います。この竪穴住居が4,5m径あって、大体ScaniverseにてAreaモードで処理していますが、柱穴とか土器を埋めてる埋甕炉があまりキレイにスキャンでないので、そこだけ再度小さい範囲でScaniverseのdetailモードで処理をしています。そのため、近くに寄って一回竪穴住居01というデータの表示をオフにすると、個別に測った遺構が表示され、遺構レベルでみると、こちらのほうが詳細なモデルです。この遺跡レベルのモデルと個々の遺構レベルのモデルについて、今後中村さんと相談で、どうやって重ねてどうやって表示・非表示を切り替えるのかを検討する必要があると思っています。実はこれ、ぴったりに合わせると、全体のデータの中に埋もれちゃって見えないので、わざと少しだけ浮かしてるんですよね。ただ、おそらく今後、発掘でやってくると微細図の代わりに取る、今まで10分の1とかで取ってたような図面に相当するデータと、それから40:1とか100:1で取ってた住居全体とかのデータがどんどん重なってくると思うので、それをこれからどうやって、重ね合わせていけばいいのかなというところで、そのサンプルになればいいかなというところです。ちなみに、中村さんの話だとBLK2GOとかScaniverseのAreaモードでやると、柱を建てる穴の底まで撮れないんですよね。なので、そういうところはiPhoneとかiPadで、ぎゅっと中まで、ギリギリまで近づけて撮るので、そういうデータが重なってくるというようなものを今入れています。

今日はこれだけしか入れてないんですけど、他には全体にまだ住居があります。問題点は、実はこれは報告書を見ても位置座標が戻せない。よくある報告書の通りで、全体図の中のどこっていうのは見ればわかるんですけど、この住居址1個を座標でここに入れようとするとできないので、これが今後の課題です。

中村 このデータは手作業で配置しているのですか?

野口 そうです。手で配置しているので、実は位置はあんまり正確じゃないです。

なので、これからやるべきことは、これを調査した会社さんがあって、それはトータルステーションでデータを持っているので、そのデータがなくなる前に観測データをもらってきて、このモデルに与えるっていうのを、ちょっとやんないといけない感じですかね。

中村 viDocっていう製品はiPhoneやiPadにGNSSのいい精度のアンテナをつけるんですね。そうすると、スキャンしたときにRTKのGNSSのデータがつきますので、一応考証だとフィックスしてれば、数センチぐらいの精度で出るっていう話なので、その状態で位置情報がついて、それこそEPSGコードもちゃんとついていれば、3DDB Viewerにアップロードしたら、もう何もしなくてもそこに表示できるはずです。しかし、さっきの話なんですが、センチぐらいの精度であればやっぱり足りないのか、それともセンチあれば、これを読み解くよりは全然OKなのかみたいな話を皆さんにお聞きしたいです。viDocはiPhone、iPadにつけなくちゃいけないんですけど、値段はこれからどんどん安くなると思いますし、あとはRTKの補正情報というのを送ってもらわなきゃいけなくって、それは今ソフトバンクの「ichimill」というサービスだと、ひと月5000円くらいですが、たぶん、常に発掘やっているような現場であれば、別に毎日毎日じゃなくても、それをやるときにそこで使うという感じであれば、そんなに手が出ないってことでもないんじゃないのかなと。

先ほど申し上げたように自分で位置情報をのっける手間とかを考えれば、測量しただけでセンチ単位でバンとはまる、手作業で位置情報を合わせなくても位置情報から自動で配置されるっていうんだったら、価値があるって言う話なのか、そこら辺も是非皆さんの話をお聞きしたいです。もしそれが今後も普及しそうなら、さっき言ったみたいにviDocのデータから一発でモデルが配置されるようなものを作っておけば、今日みたいに皆さんがいちいち手作業で位置を合わせるようなことをやらなくても、現場で測って、3DDB Viewerの登録でも自動で位置が配置されるよねって話になります。そのあたり是非みなさんのご意見とか伺えればと思います。

野口 その点について、今日ここに来る前にもかなり意見交換しています。実はこれ、今の位置合わせって2種類要素があって、中村さんが今言ったのは絶対座標の位置座標の話なんですよね。絶対の位置座標がどのくらいまで精度がよければ使えるのかって言う話とは別に、我々的にはさっきの石の位置、大きい図面の中の石の位置と、小さい方の図面の石が合っている方が重要になってくるので、それぞれがセンチメートルの誤差で精度高いですよって言われても、例えば土器の口とか石の大きさが、誤差で飛び出ちゃうと・・・っていうことになって、逆に言うと絶対座標精度は悪くても重ね合わせがよければいいという判断もあり得るので、そこなんですよね。だから逆に言うと、パーツのデータはむしろ位置座標の精度は求めないで、全体の中にはめ込んでいくみたいなルールの方がもしかしたらいいのかもしれない、というふうにちょっと思っています。

橋口 嘉島の橋口です。私が登録したものは区画整理に関する事業のデータです。持ってきたデータ容量が重く、サブサンプルを行ったため、点群になってかなり粗いですが、甕棺という大きな甕の中にに人を埋葬するもののモデルです。

当町が甕棺の分布の南限付近に当たるとこで、大体700基ぐらい出ている中でちょっと変わったものが出たので今日持ってきました。

これは弥生時代中期のものです。町の東にある台地の上で、そこを区画整理して、今分譲しているというところですね。

中村 ここはいま住宅地ですか?

橋口 そうです、はい。もうちょっと引きでみてもらうと、このあたり一帯がもう、住宅地に変わっていくんですね。かれこれ20何年間調査をしているというところです。今まで、そういった感じで平成29年頃から3次元モデル作ってため込んできているので、これがこのViewer上ではまっていくと、すでに家が建ってしまってわかんなくなってきたところも、実は昔・・・といった形で紹介できるのかなという風に思いまして、非常に有用だなというふうに感じました。以上になります。

宮本 阿蘇市の宮本です。これはですね、熊本県の指定史跡になっている中通古墳群の中の、前方後円墳になっている上鞍掛塚A古墳というものです。もともとこの古墳群は昭和34年に県指定史跡になったんですけど、当時の測量図ってたぶん簡単な任意座標で平板測量したようなやつばかりで、それ以外に図面がなかったのです。数年前から九州の別府大学文化財研究所に委託して、据え置き型のスキャニングレーザーステーションでレーザー測量をずっと1基ずつ継続してやっていて、これが確か昨年度やった分です。今回データをこのシステムにあげるために、自分でそのデータからかなり間引いてずいぶん軽くしたので、結構点群で荒くなっています。一応、座標を持っているデータなので、簡単に地図上に配置されるだろうと思って何回か試したら、うまくいかなかったのですが、ついさっき再度入れたらうまくいったので、これがいまいちよくわかんないですね。EPSGの設定を入力しても、うまく配置されなかったり、急にうまく配置されたりという状態でした。


上鞍掛塚A古墳(阿蘇市)を全国文化財情報デジタルツインプラットフォームにて表示。閲覧はこちら


つい先ほど配置を試したらうまくいきました。なので、ちゃんとLASデータで座標を持っているデータで行えば、あまり手作業で配置をやらなくてもちゃんとピタッとはまる、うまくいくっていうことが成功した事例ですね。モデルの位置の取り方ですね、フォトグラメトリもそうですけど、ちゃんと現地での調査の時に、基本的には測量座標でちゃんと位置データを取っておく必要はあるのかなというのが私が感じているところです。あと、問題は過去のデータがなかなか任意座標で取っていたりとか、旧測地系で取ってたりとかしているようなデータとか、3Dモデルはさすがにないと思いますが、そういったものはどうしても手作業でやらざるを得ないので、このシステムに載せるときの一番の課題は位置合わせが個人的にはかなり課題かなと感じています。

水戸部 この3Dデータは、山形県鮭川村の上野遺跡にある中世末期の館の調査で見つかった石組池のものです。幅は5~6mくらいです。佐々木氏の城に近いことから、関連する館だと考えられます。

 2004年に計測しました。当時はまだメタシェイプはありませんでしたが、フォトグラメトリ自体は行われていました。手作業で共通点を指定して3Dデータを生成するという大変な作業を伴うものでした。今はもうありませんが、福島県いわき市にあった会社に委託して実施しました。写真から3Dデータを生成し、オルソ画像を出力してトレース済みの図を納品してもらいました。3Dデータ自体は納品されませんでしたが、当時使用した写真と座標データを使って、メタシェイプでつい先日に作り直したものです。

 OBJ型式で出力したデータで、座標を持った状態でアップロードしました。現地はすでに圃場整備が終了しており、詳しい位置を確認することは困難ですが、おおよそ正しい位置に置かれたと思います。

中村 先ほどの嘉島の甕棺の事例のように、住宅地になっていたりとかするとなかなか難しいと思いますが、こういうふうに整備した後の田んぼだったりとか、ショッピングセンターの駐車場になってたりしてるところだったら、例えばこのデータがあれば、そのタグをつけておいて、現地に行ったときにiPadをかざしたりとか、眼鏡をかけると実はここにこういうふうにかつて池があったんだとか、こういう甕棺が埋まってたんだとか見たりすることができますが、そのような需要ありますか?広報業務とか皆さんがされるときに博物館で見るんじゃなくて、ほんとはここにあったんだよっていうのが現地で見られるという仕組みは、もし作ったら、使っていただけるような需要とかありますかね。やっぱり今の敷地の関係があるからなかなかそんなのは難しいみたいな。岩橋千塚みたいに、完全に公園になっていればもちろん問題はないんでしょうけど。一般的な話でっていうところで。

こうやって当システムにのせちゃうと、逆にいうと見せてもらったときはまだその遺跡の場所は田んぼでしたけど、この後家が建ったら、そのうち背景地図の画像も家のデータになるじゃないですか。そうするとある意味、ここに載せているだけでも、自分の家が遺跡の上に建っているというのが見えちゃう訳なんですが、そこら辺がどれくらい受け入れられるのか。もちろん、このシステム上で見るのと現地に行って見るのではちょっと違いがあると思いますが、この仕組みの実装を考えるときにこれぐらいの了解を得なくちゃいけないとか、業界的なコンセンサスとしてあるのか。

岩村 私は備前市の担当者ですが、残念ながら備前市で4.0CCで公開できるモデルがちょっと調整つかなかったので、岩橋千塚の前山A13号墳を登録しています、地中に埋まっていますが。こちら2019年3月22日にZenFone ARで当時撮ったものです。形状が、尖度部分が非常に高く切り立ったような形状になっているので、比較的DEMとか、仮に地形の3Dモデルがあれば合わせやすくてですね、また航空写真からもこの尖度部分が見えやすいので、ある程度位置が推測しやすいという感じになります。こういったもので、石室に限らず縦方向の地形が含まれるようであれば、それを入れ込んでおくと、そのタイミングで広域の3Dモデルを撮ったり、航空写真があったりすると合わせやすいのではないかなと、手合わせしながら思いました。

中村 LiDARで計測した岩橋千塚古墳のモデルからみてみるとちょっと下になっていますね。地理院のDEMは10mメッシュぐらいの精度しかないので、LiDARで取得した点群モデルの方が正しいと思うんですよ。今地理院のDEMを信じて合わせていただきましたが、岩橋千塚古墳だったらこのLiDARのデータに合わせて位置合わせをしてもらえれば、その方がぴったり合うんじゃないかなと。さらに、例えば今、東京と静岡は全域、広域な点群データがあるので、そのエリアなら地理院DEMじゃなくて、その点群データに合わせてもらうといいと思いますし、岩橋千塚とかだったら岩橋千塚のLiDARで取得した背景点群に、個別の古墳のモデルを全部位置を合わせてもらうと正しく出るんじゃないかなと。あと、地下を表示する機能も絶賛実装中で、近日中に使っていただけるようになる予定です。

野口 経験的に地理院のDEMの10mメッシュだと、考古埋文関係で言うと、例えば径が10m未満の墳丘とか、あとお城関係で幅が5m未満の土塁とか土橋は大体地形の起伏が出ないため、墳丘の場合はぺったんこになっている場合が多く、堀とかは埋まっている場合が多いんですね。そこで、さきほど岩村さんが言っていた、その対象だけでなくその周りも撮っておくっていうのが、すごい大事になると思います。

石井 北海道厚沢部町の石井です。私が対象に選んだのは、近代の鉱山遺構です。

OBJで幾何補正したモデルが最初はうまく正しい位置に入らなかったのですが、EPSGコードを入れた後にアップデートのボタンを押すのを忘れていたようです。

アップデートをしてから3件のデータを試してみると、Cloud Compare位置合わせをしたとおりにスパッと位置がはまりました。操作性としては、全般的にボタンとかが小さいのが気になりました。ただ、モデルの配置はすごくうまくいきました。ありがとうございます。

岩佐 長崎県の岩佐です。自分としては、先ほどから言われているように、位置合わせがちょっと難しいなっていうのは思いました。逆に今回は、XYZがちゃんと入っているモデルを持ってこないといけないかなと思っていましたが、手動で合わせていいんだったら、XYZを持ってないモデルもどんどん持ってきて入れたらよかったかなと思っております。

DEMで高さを合わせている時と、起伏があまりない表示の時の高さを見比べると、起伏があまりない表示の時は浮いているように見えちゃうので、実際見る方が見るときにちょうどいい感じで、自動で動いてくれたらありがたいなと思っています。対象にした遺跡は佐世保要塞です。長崎のハウステンボスのある佐世保市が海軍の鎮守府が置かれた場所になり、その鎮守府を守るために陸軍が要塞を作っており、そこの砲兵連隊という部隊の基地がここにあり、その付属の病院の事務室ぐらいにあたる遺跡です。その近代の遺跡を掘りまして出てきたところで、レンガの基礎が出てきているところですね。今、3月の頭から展示をするので、それの準備をしているところです。私から以上です。

金澤 私は特別史跡岩橋千塚古墳群の保存活用を行っている和歌山県立紀伊風土記の丘資料館に務めています。古墳は園内だけで500基あり、埋葬施設も横穴式石室だけでなく竪穴式石室や箱式石棺もあります。いずれも盗掘を受けているものが多く、開口しているものも多くある状態ですので、記録作成のため数年前から野口さんや岩村さんに教えてもらいつつ、岩橋千塚古墳群の3次元モデルの取得を進めています。今回は箱式石棺をもつ前山A17号墳の3次元モデルで位置合わせをさせていただきました。作業を行った結果、私も少し位置合わせが難しく感じました。3次元モデルを作成する範囲の中に座標杭などが入っている古墳は良いのですが、岩橋千塚古墳群では主要なもの以外は現地に座標のわかる杭などが無い場合が多くあります。今回の前山A17号墳は復元古墳ということもあり、モデル内に座標杭がないものです。そのため、モデルを読み込むと一番最初にアフリカ近海の海上にモデルが表示されてしまいます。ただ、表示範囲が広すぎて長さ数mのこのモデルですと、最初は米粒状にしか表示されず認識が難しく、また少しカーソルを動かしてしまうとモデル自体を見失ってしまいます。そのため、モデルがどこにあるか確認ができたり、モデルの位置に戻る機能があればありがたいと思いました。

また、3次元モデルを岩橋千塚古墳群内に持ってこれたとしても、平面はおおよそ合わせることができますが、標高を持たないモデルの高さを併せることが少し難しいです。、野口さんのお話にもあったように、岩橋千塚古墳群では一部のエリアで3次元の点群データがあるので、配置するモデルと対象エリアの点群を地形の起伏などが似ているところで自動で配置してもらえるとと便利だと思いました。さらに、岩橋千塚古墳群は古墳数が多いので、一個ずつ3次元モデルを配置できるだけでなく、モデルの読み込みや位置合わせを一括自動処理できたら、こちらは微調整で作業が完了するので取り付きやすくなるかと思っています。

加えて、今使用されている座標は世界測地系だと思うのですが、岩橋千塚古墳群も含めて和歌山県の場合、古いデータは旧日本測地系で世界測地系へ未変換のものが多いです。インターネット上などで簡易に測地系の変換はできますが、ずれがみられるものもあります。そのため旧日本測地系のままでも取り込みと配置が出来るよう検討いただけるとありがたいなと思っています。以上です。ありがとうございます。

上村 紀伊風土記の丘の上村です。初めて位置合わせをやってみましたが、モデルが宙に浮いてしまいました。これは前山A111号墳といいまして、さきほどのもの(前山A47号墳)が箱式石棺ですが、前山A111号墳は竪穴式石室ということになります。大正の初め頃に調査されており、もうすでに開いていて、今もこの開いた状態で展示をさせていただいているので、土の流入とかも激しくて、保存していくために調査したときに金澤さんが記録していたモデルになります。モデルが宙に浮いていることしか、気になるところはないですが、さきほど金澤さんがおっしゃったとおり、位置合わせにやや苦労する印象があったので、自分の今やっている作業中のモデルがどこにある(配置してある)のかを自動追尾する機能のようなものがあると、手動での作業も非常にやりやすいかと思いました。

この登録方法やシステムに慣れるまでが大変かと思うので、詳しい操作方法などありますと非常にありがたいかなも思います。最初は不安しかありませんでしたが、なんとか位置合わせでもき、操作性もいいと思います。慣れれば誰でもできそうでよいと思いました。以上です。ありがとうございます。

神 福岡市埋蔵文化財課の神と申します。私が用意してきたデータについて、野口さんに容量を下げていただくなどしていただきましたが、アップロードがうまくできなかったので、岩村さんのデータをお借りしました。用いたモデルは岩橋千塚A46号墳になります。

こちらについても地上面より浮いてしまっているのかな、といった感じです。位置合わせを行い感じたのは、現況の航空写真があり、上から見たときに、ある程度位置合わせがしやすかったというがあります。私が用意していたデータは、元岡G6号墳という九州大学の移転に伴う調査で見つかった、庚寅銘大刀の出土で有名ですがが、そちらのモデルが石室の石のみのデータになるので、やはり位置合わせをするのは、難しいのかなと感じました。以上です。

堀木 愛知県埋蔵文化財センターの堀木です。設楽ダムに沈む胡桃窪遺跡というところの全景と部分のモデルを貼り付けました。よく見ると、この航空写真に使われているものがちょうど発掘している最中の写真だったみたいで、これにぴったり合わせればいいと思いました。この写真はおそらく掘る前ですね。モデルが掘った後のものになりますが、合わせ方が悪くてモデルがちょっと浮いています。モデルについて、航空写真を撮ってもらう時に、ついでに動画を撮ってというように頼みました。その動画からMetashapeを使って作りましたが、初めすごく重かったので、100コマに1枚という形で写真をセレクトして、起こしたものになります。あとそこに別で貼り付けてあるものは、これは普通のデジカメで撮って Metashape で起こした詳細モデルで、(おばけのような足が写っていますけど、)これを上に載っけてみたものです。今、伏角がおかしいんですけれども、簡単にできるっていうはとても良いことで、これに座標値、評定点3つぐらい入れといて、そこに座標を当てておけば、きっちりかっちり面が取れるので、よかったなと思います。これの報告書が今度の3月に刊行するので、使っていいよっていう許可をもらって持ってきましたので、このまま全国公開しても大丈夫なデータです。一番だよって言うとたぶん編集者、大喜びします。今まですごい嫌がっていたのに、1番だって言うとたぶん喜んで使っていいって言ってくれるので、使えると思います。はい、以上です。


胡桃窪遺跡(愛知県北設楽郡設楽町) 全国文化財情報デジタルツインプラットフォームによる表示はこちら


仲林 京都府立大学の仲林です。私が登録したデータは京田辺市にあるシオ1号墳という古墳で、2019年の冬に府立大学で測量しました。

このデータについて、上の画像をクリックすると、京田辺市のwebでVRではないですが、パノラマ映像として公開されています。石室の中にも入れたりします。昔ここに家具を置いて、マンションぽいものを作ったりもしたこともありました。本当はこのデータを使いたかったのですが、データが重すぎたようです。

3Dビューア上では、大体位置を合わせてみました。今回ひとつ思ったのが、位置合わせとしてはGoogle Mapで元々測量した段階では当然公共座標データ上に載っている3Dデータを作りますが、今みたいにVRで公表するにあたって、その公共座標を持った3Dデータって、例えば、Unityとか3Dソフトに読み込んだときに、原点からとんでもなく離れた位置に出てきますので、基本的には大きい画像を間引いて使うことが多くて、このデータもそういったものなので、なかなか一発で合わせるっていうのができないです。その例として二条城の庭園のオープンデータを登録しようと思いましたが、データが重くてできず。これは二条城の二の丸庭園のフォトグラメトリしたデータですが、ここに書いている通り、「この3Dモデルは任意座標系です。公共座標に座標値を変換する場合、ソフト上でその間引いた数字をもう一回戻してください。」というふうになっており、要は何を目的にデータを公開するかです。例えばこういう景観があって、コンテンツとして使えるような3Dデータを公開する場合、当然公共座標で公開してしまうと3Dを作るエンジニアの人が困るというのがあるので、こういう形で間引いて公開することになると思います。例えば測量の生データを3Dでもらって、それを3Dビューアに上げるっていうのはそのままの座標値が使えますが、それとは別にデータそのもの、VRとかなんらかのコンテンツに活用することを前提として3D作った場合って、座標値が最初にとんでしまうので、そのあたりの受け渡しというか・・・。これだと単純にこの座標を足してあげればいくんですけど、今の仕様だと緯度経度になっているので、正しい位置に持って行くのがちょっと難しいかなというような印象を受けたというところです。以上です。

林 富田林市の林です。こちら細井廃寺と言いまして、和歌山県の人たちはおなじみの中村浩道大先生がいらっしゃった大阪大谷大学のすぐ北にある遺跡です。ただ実際に廃寺っていいましても、結構範囲が広くて、昔市史に載っていた別の遺跡と知らない間にマージされてしまいまして、寺ではないところを多分に含んでいます。こちらは寺でないところの更に北側の地区を大規模開発で試掘にいきましたら、遺跡出てきちゃいましたので、もう違う遺跡だとわかっていますが、遺跡の範囲を広げてしまえということで。本当は分けないといけないんですが、まあまあ今のところ広げてしまえということで、広げました。データは空中写真測量で、最近成果物の中にTINデータといって、3Dなのかよくわからない点みたいなのが入っていまして、CloudCompareとかで読み込んだら3Dぽくなりましたので、じゃあこのデータにオルソ画像を貼りつけて3Dデータにしてくれないかという話を、できないかっていう話をツイッターでしてたら、仲林さんが中間生成物で3Dデータもってるんじゃないっておっしゃいましたので、測量会社さんのほうに、じゃあ3Dちょうだいってお願いしたら出てきたのが、今共有フォルダの中に入っているこちらのLASデータとOBJですが、かなりきれいです。本当でしたら、こちらのほうの遺跡のiPhoneで撮ったデータを入れているのですが、FBXがうまいことアップロードできなかったんで、表示は残念ですが出来ていません。こちらのLASデータは使っていませんが、OBJのほうを使って、OBJのほうに対空標識を各セクションポイントに入れていまして、それを頼りに、ここ(画面上で示す)、これに関してはiPhoneのデータに対空標識っていうかセクションポイントの釘のところを赤く塗って、そこを含めてのiPhoneでデータを取りまして、こちらのほうにもセクションポイントに対空標識を設置しまして、こちらのデータとiPhoneのデータを重ねて位置合わせをしました。3Dモデルの位置合わせには、CloudCompareのAlignという機能を使っています。4点ありましたので、幸いなことに合いました。ただ残念なことに、さきほどの遺跡の場所より南の方に進んでいったところに土器棺が出ていて、そちらも土器棺の検出状況と取り上げ段階、全部取り終わったあとのデータをScaniverseのdetailモードで取った際にセクションポイントが入ってたらいいと思って取りましたが、セクションポイント2点だけだと位置合わせできないんですね。それだったら3点とっておけば良かったって、すごい後悔しています。

CloudCompareで位置合わせするときは、最低3点というのを覚えておいていただければ、セクションポイントがあって、セクションポイント4点つかってもいいし、クロスにとってもいいし、それか正三角形になるように対空標識を設置してもいいし、そういう位置合わせの方法もありますよという感じをやりたかったんですけども、ごめんなさい。ちょっとできてないです。

以上です。ありがとうございます。

高田 何点か論点があろうかと思います。クラウドOneDrive上のメモ帳の方にちょっと皆さんのものを記録しています。

 まず、インターフェイス上の問題ですね、ボタンが見えにくいとか、あとはデータの自動追尾機能とかそういったものは今後の改善、開発の候補になるかと思います。

それ以外に、位置合わせですね。当然ですが、調査時にしかるべき位置情報をきちんと入れて、データにもきちんと整理しておくことが大事かなと思いますし、あと途中ありましたが、日付、日時情報のところで、データを記録した日時と、本来その対象物、文化財の、鎌倉時代なのかとか本来の日時っていうのも一緒にするとよくないので、どう持たせるのかとかいうのもあろうかと思いますし、今、林さんおっしゃったように原位置が動いているものですね、現在の位置と本来の元々の原位置、本来の場所というのもやっぱり、今はどちらでも可能なんですが、厳密に考えるとちょっと区別した方がいいとかそういうこともあるかと思いますので、それも今後の検討課題かなという風に感じました。

総括的に野口さん、何かありますか?

野口 皆さんのお話を聞いて、位置情報が今後すごい重要になってくるのと、林さんの最後の指摘が重要で、従来の記録方法のつもりでやると、基本埋文の人って2点とればいいと思っているんですよね。平面図の世界に生きてきたので。縦でも水平でも。これを徹底しないと位置が定まらないデータが増えちゃうので、これがひとつめのネックかなというところで。

ただですね、iPhoneLiDARとかレーザースキャナ系の、要はIMUで水平が出ているっていうやつは、実は水平はフィックスしているっていう前提に立てば、2点でもCloudCompare上で無理矢理3点目を作ることができるんですよ。要はZは全部0で、XとYを例えば1mずつずらしたところの点があるはずだという前提で作ることはできるんですよね。そこが、過去はもう復旧できないので、遡るときはその手しかないかなという。あと、こういうのを積み重ねて全部メモにしているのを起こして、一昔前だとWikipediaとか使ってマニュアル作っていくのが早い。今あまりWikipedia使わないですよね、みなさん。そういうのを奈文研で作って、どんどん書き足しマニュアルみたいな場所ができるといいのかなと思う、ということで総括というより高田さんにパスを返します。

高田 また、仕事増やす(笑い)。でもあったほうが便利だと思います。


文化財3Dデータを真のデジタルツインにするために

野口 では、お時間をちょっといただいて、昨日から今日で、3Dデータを3DDBビューアにアップロードするっていう入り口に来たばっかりなのに、もう次の話をします。ちょっと早いよと思うかもしれないですけど、これからデータ公開始めるとそのデータ自体のメタデータも含めた整備も同時進行でやらないと、3Dデータだけどんどんあがっていって、これなんだろうっていうのがたまっていくと、これは大変なので、どうせなら今から、逆に言うとまだ何もないんだから今からやった方がいいんじゃないですかっていうことで、ぜひみなさんのご意見を聞いてよくしていきたいっていうことです。

 文化財3Dデータを真のデジタルツインにするためにということが、何が言いたいかというと、今の時点まででみなさんがやったのは、3Dデータを3D地図のうえに載っけるところまでで、まだデータだというふうに思っています。これをデジタルツインにするのに、やらなきゃいけないことがありますよっていうことになります。

ちょっと、何を言っているかわからない文章を最初にいきなり出します。国交省のPLATEAUのやつで、3D都市モデルの特徴と活用法で、ジオメトリとセマンティクスの統合モデルというふうに書いてあります。何言っているのかわからないので、でも、こういうことを今お国が議論していますよってことでちょっと覚えておいてください。これはWebで見れるので、気になる人は詳しく読んでください。

で、ざっくりまとめちゃうとこういうことを言ってるんですね。ジオメトリって、要は平たくいうと形の情報です。今まで、2次元の平面図だったのが3次元になっていきますよと。

それも3次元の四角い箱から始まって、もっとどんどん細かな形がついていきますということです。空間情報っていうのは、位置と、それから昨日やってみてわかったと思いますが、従来みたいなポイントの情報だけだと3D扱えないんですね。何かというと、ポイントだと方位とか向き、傾きがわからないので、XYZの座標1点だけじゃなくて、それに対して角度が与えられるか、最低3点の位置座標があることで初めて空間の中でフィックスするということです。

実はこれだけじゃ足りないよっていうのが、さっき言っていたセマンティックスってやつで、セマンティックスっていうとかっこいいんですけど、要は意味情報っていうことです。

これは何者なのかっていうことを示す情報です。これをつけましょうと。これはなんで必要かというと、昨日今日みなさんアップロードしたデータは、皆さん自身がなんのデータか知っているからわかりますが、第三者にはもうわかりませんということになります。これを与えましょうよということです。文化財の意味情報っていうと例えば総覧の抄録情報を見ると、こういう調査期間・面積・原因とか遺跡概要、種別・主な遺構・遺物・特記事項とかあって、あと都道府県によっては遺跡台帳にもっと詳しい情報を記載しているようなところもあったりしますし、要はそういうものを載っけていきましょうってことになります。

なんで意味情報を与えるのかというと、今言ったとおりのことですね。形と位置・状態に対して、対象がなんであって、どのような属性をもつのかっていうことです。今までの報告書だと、これが図面と本文・記述というので分かれていました。我々は人間なので、本になっているものを読むと、それを頭の中で組み合わせて理解することができます。ところがデジタルツインの一番いいところはデジタルデータなのでコンピュータが処理できる。そうすると今までのやり方で、形と空間情報だけ与えて意味情報は総覧のPDFを読めばわかりますだと、これもうコンピュータでは対応できないですね。だから、もうそのデータにちゃんとつけておきましょうということになります。ここまではよろしいでしょうか。

 じゃあ抄録情報をつければいいんですねってなりそうなんですけど、ここからが考古学・埋蔵文化財のややこしいところで、じゃあ、どの単位につけましょうか、何をつけましょうかということになってきます。考古学的な概念でいくと、地域とか遺跡群、遺跡があって、地区・地点みたいなのがあって、表土・文化層、検出面、複数遺構、遺構、遺構の中の部位みたいなのがずらっとあって、それぞれに異なる意味情報が入ってくるというのはもう、皆さんだとすぐ想像できると思います。加えて、埋文的な階層もあって、遺跡はもっと広いんだけど、発掘調査がここまでしかできないのでその区画っていうものって、必ずしも考古学的な単位と一致しないというのが山ほどあると思う。これってどうやって整理していきましょうかねっていうのがあります。

 さらに、データのスケールも一致しないっていうことが結構あると思います。ドローンとか飛ばして撮ると、遺跡群撮るときもあるし遺跡全体のときもあるし、発掘調査区だけ撮る場合もあると思う。ところが発掘調査区レベルだと、地上から撮るデータも入ってくると思います。さらに、最近特に話題になってきているiPhoneのスキャンとか、あるいは個別遺構のフォトグラメトリがあるとかなってくると、それらはどういうことかというと一個のデータがちっちゃい遺構だけのデータもあれば、複数の遺構が入っているデータもあるしということですね。それぞれデータの単位と、考古学的な単位と、埋文の調査の単位が必ずしも一致しなくて、どこに意味を与えていこうかということです。で、どこにどの意味情報を与えるのか、それがデータとどう対応するのかっていうのを整理しておかないと、結局コンピュータで処理してもらえないということになります。データのスケールでいうとこういう計測機器手法とスケールの違いみたいなのがあります。

これは岩橋千塚の例ですけど、航空レーザーでとったDEM、地理のDEMがあって、奈文研、産総研で飛ばしたドローンLiDARの点群があって、地上でこれ私が撮ったフォトグラメトリの墳丘のデータがあって、あとこれ岩村さんがとった石室のデータです。

同じこの墳丘じゃないではないですが、こういうのがあって、要はスケールが全然違って、含まれている内容も違うっていうのがあるって現実にできてきているということですね。

そうすると例えば、ドローンLiDARによる前山A地区のグランドデータについて、地区の単位で一個のデータになっていますが、この中に墳丘が山ほど入っています。このデータ全部に墳丘1個1個のデータくっつけますか?というと、これ現実的じゃないですよね。で、例えばこの今文化財情報デジタルツインの中で見るといくつかの石室の岩村さんのデータがこの中には載っているので、その石室には個別の意味情報がつけられます。でも、個別データがない墳丘とか石室っていうのは、意味情報ないままでいくのか、それともこの全体データの中の部分を区切って、範囲を例えば示して、そこに対して意味情報をつけてくみたいな作業をするのか、これをやらないと個別データがそろわない限り空白というか、意味情報がない部分ができちゃうんですよね。ところが、全体データに個別データを組み込んでいくと、すごい煩雑になっていく。これをどうやっていったらいいんだろうかっていうことが、ひとつ目の課題です。加えて、どうせやるなら考古学・文化財で独自のことをやるんじゃなくて、他の先行して整備が進んでいるものと連携出来るようにしないとまずいだろうなということがあります。そこで出てくるのが、そのPLATEAUとかも準拠している3D都市モデルの国際標準っていうCity GMLというのがあります。City GMLでは、LODという概念があって、Linked Open Dataの方ではなくて、Level of DetailのLODで、定義があります。これを文化財デジタルツインに応用すると・・・。

このような感じで例えばできるかもしれない。City GMLのLOD0っていうのは、高さ情報のない平面の形っていう定義にされていて、これは考古学、文化財でいうと遺跡範囲っていうものに対応するかもしれない。ただスケールを変えると遺構もこれに該当するかもしれないというのがあります。で、次に高さだけ加わったLOD1っていうのは、建物の例えば屋根の形とか無視して、平面に対して高さだけくっついているBOXモデルってやつなんですよね。これは例えば発掘調査区とか遺構とかの詳細な点群とかメッシュではなくて、単純に深さが加わっているデータ。例えば、昨日林さんがちょっと見せていただいたようなデータ、Z値がついているDXLなんかこういうのに該当するかもしれないというのがでてきます。

LOD2っていうのは、柱の穴とか炉とか竈とか、そういう部分まで形が全部入っている位置と形が入っているものみたいな、そういう整理の仕方ができてくるかもしれない。これを今後検討していかないといけないだろうなということですね。そのときに、問題はさっきのすごい階層が複雑で遺跡のLODと遺構のLODって、たぶん同じ順列には入れられなくて、遺跡には遺跡のなかでレベル0から2、3まであって、その中に今度遺構もレベル0から1、2、3みたいにしていくのが一番現実的なのかなと。

もうひとつの課題は都市モデルと違って、種類とか組み合わせがすごい多いんです。現代の都市ってある程度、規格性とか計画性があるので、例えば窓とかっていったら条件をかなり絞り込めるんですよね。ところが考古学、文化財の場合だと時代によってバラバラだし、地域によっても全然違って、例えば、関東から来た人は竈はこんな作り方するんだと言うんだけれども、関西にくると全然違うとか、そういう条件があったりするので、横断的な基準を与えられるかどうかっていうことが次の課題になってきます。それから意味情報自体の記述を標準化できるかどうかっていうことですね。用語の統一とかできるかどうか。もちろんバラバラでもいいので、このへんたぶんむしろ高田さんの専門になってくると思うんですけど、無理に統一しないで辞書を作って、これらは大体同じものですみたいにしていくのかとか、そういうことが必要になってくると思います。

中村 すみません、遺跡と遺構がどう違うかって簡単に説明お願いします。

野口 遺跡っていうのは、例えば竪穴住居が何軒もあって、集落・村になっているものを我々は遺跡と呼びます。一軒の住居は遺構と呼びます。で、更にその遺構の中に遺構の構成要素として柱を立てた穴とか竈とかがあるという理解ですね。

 実はこのあたり、国際的にも全然定まってなくて、ちょっとややこしいんですけど、City GMLの中に、更にその要素を、クラスっていうのを分けて建物とか道路とか土地利用とか植生とか地形とかいろんなクラスがあるんですけれども、これを文化財とか文化遺産とかにどうはめていくのかっていうのは、まだ実は全然決まっていない。日本だけではなくて決まっていないんですね。ちょっといろいろ教えていただいたんですけども、先行してイタリアとかギリシャが、いろんな文化遺産が多いので取り組みが始まってるみたいなんですけど、結局ここの中に割り当てるよりも、全部ビルディングに一括して、ビルディングの下位クラ、サブクラスとして文化財・文化遺産の分類を当てるほうがいいんじゃないかなっていう感触にはなってます。ただ、右側のはなんとなくイメージですけどこんないろんな上下とか、そこから派生して分類に対しての関係みたいなのを、こういうのを作ると機械が処理できるようになるので、先に用語をある程度統一しつつ、どの単位に与えるとか、それが何を意味するのかみたいなことは標準化してったほうがいいですよという話です。

 なんでCity GMLっていうことを言っているのかなんですけど、考古学・文化財で独自に作ればいいじゃないかっていう話もあると思うんですけど、City GMLと連携したいというふうに中村さんたちと今話をしてる最大の理由は、参照性・互換性ということで、文化財のデジタルツインが文化財のデジタルツインだけでいいのか、他のデジタルツインとつなげて使えるようにするのかっていうところにかかってくるので、どちらかというとつなげるほうにしたいという話です。先ほど、中村さんもずっと話してもらったんですけど、こういうことができるようになりますよと。さっきの産総研の地質、3D地質図のやつと文化財のやつをつなげていったら、どういう地質条件のところにどういう遺跡とか遺構ができるのかというようなことも、今後は研究できるようになりますし、そこから遺跡の中の災害痕跡と地質情報がつながると将来に向けた防災の情報にもなるんじゃないかとか、そういうことをするためにはやっぱり、一定の標準に合わせていかないと相互に比較できないだろうということですね。中村さん、高田さんなんかと話していると、そこにつながっていくと、過去の文化財・考古学の情報と現在の都市モデル、そして将来的な都市計画が全部つながると、考古学・文化財で今、公費も投入していろんなことをやっているのが、何の役に立つのかっていうときのひとつの説明にもなってくるだろうということになります。(詳細は本研究報告所収:野口淳2024「遺跡地図GISの3D化:課題と展望」を参照)

 あともうひとつ、全然どうしたらいいのかよく私もわからないので、これから考えることです。遺構の話までしましたけど、遺物も結構空間情報・位置情報持っていて、さっき中村さんが言ったように現地に帰したい。よくわかるんですけど、例えば、これは岩橋千塚のやつですけど、埴輪の原位置ってどこ?みたいな話ですね。端的にいえば、埴輪の基底部が残っていたら、ここが一応立てた場所だろうということにはなるんですけど、割れた後に移動、出土した地点の情報も当然あるわけですよね。破片は別の位置情報を持っていて、破片には破片の意味情報も持っているので、さらに復元した位置というのはそれなりの根拠があって復元しているわけですけども、こういうのをどうやって整理していこうか。個人的に思っているのは、どれか1個にしなきゃいけないってことではなくて、デジタルツインなので、複数持っていてもいい。復元位置情報、出土位置情報。出土位置情報にも、破片出土位置情報とかみたいなそういう情報を持っていてもいいんじゃないかと、ただそのためにはそれぞれに仕分けができるように、これは復元情報なのか、これは出土位置、つまり現場で観測された情報なのかっていうのを、仕分けていかなきゃいけないということ。で、今までは報告書とか論文書くときも、そこをあまり明瞭に区分しないというか図面やなんかにしてみてもどこなんだろうみたいなのが、あまりはっきりしなかったというのがあると思います。あとちょっと遡って、これに関連して岩橋千塚のデータが出てきたところで、金澤さんたちとつい先月も話題になったのが、遺物の位置情報と同じように、今後3Dになってくると、例えば古墳の墳丘の墳裾はどこなんですかって。今までは地図上に線をピッと引いて、ここですっていってたんですけど、3Dになるとほんとにどこなんだろうみたいなことがでてきます。これ3Dでなくても、この前、奈良市でウワナベ古墳の堀の中を掘ったら、墳裾が今まで考えていたよりもかなり大きくて、20mくらい墳丘長が大きくなったんですよね。そういうことってたぶん、これからもたくさんあって、山城なんかでも堀の端ってどこで、そこはわかるんだけど、上の端っこはどこでとりますかとか、そういうことが起こってくるので、データが詳細になればなるほど曖昧な部分が増えるというか、今までみたいに線とかでピッと書いてここっていうのができなくなってくる。それにどう対応するのかっていうのが課題なのかなというふうに思っております。

 今、一気に話題提供ということでしゃべってしまったんですけど、もう一度最後まとめると、ひとつは遺跡から遺構というようないくつかの階層があるときに、どういうふうに今後意味情報を与えていくのか、その単位をどう区切っていくのかっていうのがひとつめの話ですね。次にCity GMLというのに合わせるために考古学だけじゃなくて少し考えましょうと。これは提案ですね。最後に遺物とかさっきの墳丘の裾みたいな詳細な情報というのを、今までの記録方法でいいのか、今後ちょっと変えていかないといけないのか。それからその記録結果を解析するのにどういう手順が、手法ができるのかっていうことを、ちょっと考えていきたいなということで。できれば、これを日々発掘して記録をどんどん作っている人から、そんなのは実際には難しい絵空事だとか、自分とこだったらこういう事例に対して、こうやろうと思うみたいなのがあれば、何かいただきたいんですけれども、いかがでしょうか。

中村 正に今のお話が例えば、今日登録してもらったデータの名称をどうするか、遺跡・遺構・遺物みたいなのをやっぱり全部書くのか。そうするとたぶん長くなっちゃって全然わかんないと思うんですよね。だけど極端な話、落とし穴の名前、SKなんちゃらかんちゃらとか書かれても、たぶん皆さん以外誰も検索できないっていうか、誰もわからないと思うので、そこらへんは、例えばタイトルは一番細かいレベルで書いていくんだけど、上位になんとか古墳群とかなんとか遺構というところは、ディスクリプションのところに書いておけばいいよねとか。今ここで決めちゃったからって、全部未来永劫それなりってわけじゃないんですけど、なんらかのワーキングモデルみたいなやつを作ってやっていって、やっぱりこれはこうしていかなきゃいけないっていうのを、やっぱりある程度ほんとにまさに現場を知っている方々からインプットしていきながらでないと、なかなかできない部分もあるので。僕らはどちらかというと、考古の専門じゃないので、正に国交省さんとか、今の都市モデルとか未来の都市モデルをどう作るかっていうところの話の連携を、野口さんが話されていたみたいにやっていく部分もあるし、それと考古の現場、文化財データをより多くの人たちに届けるって観点から見たときに、どういうのが一番学問的に正しくて、かつ一般的にもわかりやすくて、他のデータにもつながりやすい、三方良しみたいな部分を、ぜひ今日議論をさせていただいて、そ目星をつけていただけたらと思います。

野口 さっきの今日の朝いちで、この後も公開に持って行ってもいいですって言っていたところの皆さんから、データの位置合わせまでは今もうできましたと。名前付けとかレスクリプションとかを、今の私からの投げかけも含めて、こういうふうに考えてみようと思いますというのがあれば、順番にお願いします。

議論のゴール設定

高田 まず対象の目的のゴール設定をしたいと思います。

野口さん頭がいい方なので、正直今の話がハイレベル過ぎる(笑い)。

今たぶん決められないっていうか、すごいレベルで、抽象的な話もありますし、哲学的なものもありますし、大事な話かと思うんですけども、ゴールを個人的に3点に考えました。

 まず、切り口としてデジタルツインはいろんな可能性があるんですけども、まず今回集まっていただいている皆さんはですね、基本的には文化財行政の方々です。で、そうしたときに、デジタルツインの例えば観点が大きく2つあって、例えば大学の先生がやる純粋な学術研究の面と、文化財行政にどう資するかっていうのがあります。今回は学術研究ではありませんので、文化財行政っていうのをまず主軸を据えたいと思います。その上で、ひとつめの観点が、文化財行政に立ったときに照会対応とか現場の調査迅速化。ふたつめの観点が活用です。ですので、今回のこの時間は、照会対応、調査迅速化という観点と、活用に絞らせていただきたいと思います。その上で、野口さんのインプットを踏まえて、どうしたらいいのかとかいうのがいいかなと思いました。

ちょっと話が大きくなりがちですが、軸をそれに据えて発言いただけるとありがたいかなと思います。

野口 公開準備できていますって手を挙げた人とか、喋らされそうだからやっぱやめますというのは無しにして、正直にもう一度手を挙げていただいても。なんか口火切ってもいいよって方は、いらっしゃいますでしょうか。

ファイル名の標準化

堀木 愛知埋文の堀木です。十数年前に標準化どうのこうの言っていたところの隅っこにいたんですけど、今回あげるファイルで、ファイル名の付け方とかを考えた時に、遺跡番号って決まってますよね。あれを使うのと、年度がどうしてもほしくなるので、年度を入れるのは最低限必要かなと。あと、調査区入れ始めるとややこしくなるので置いておいて、あと対象になるモデルの大きさですよね、全景なら遺跡と年度だけでOKだし、そこの中の小さな炉跡だけをやるのであれば、遺構番号がいりますよね。そのあたりを統一でファイル名にしておけば、ある程度整理つくのかな。上端下端といわれるとちょっと困りますが、そういう付け方をしていくと、限界なく付けていけるんじゃないかなというふうに考えました。

調査名というか、年度。遺跡番号と年度と、その後に全域なのか遺構番号かっていう区分でいけば、あとアッパーかアンダーかとか、1面目とか2面目とかいうのが付くといいのかなと思いました。

中村 今のお話でいくと、今回堀木さんが登録してくださったやつの、なんか年度があって遺跡名とかいう形でも、大体こういう名前が付くよというのが見えてくるって言うか、決まってくるって感じですか。

堀木 はい、大体それでいけるかなと。遺跡番号でいけば、ファイル名は整理ができるかなと。あと属性のところで、よみがなを付けるというような形にしていけば、たぶんダブるものもなく、いけるんじゃないかなと思います。

図面自体、映像自体が調査時になるはずなので、調査の時を入れたほうがいいと思います。長い、5年くらいやってるやつを出すとややこしくなってくるんで、20年度のA区とか21年度のA区とかいうふうにしていったら、重ならなくて全部別で扱えていいかなと思いました。

中村 一応、昨日言ってもらったところも、Dateっていうのを入れるところはありますが、それもその始まりと終わりみたいな感じに入れられるようになっていて、もちろんタイトルにも入れていただくし、例えば実際にその3次元測定したり、ドローン飛ばした日が何日だったら、日にちまで別に入れなくても、何年度の調査でやったものだったら、例えばそこにも入れていただくっていうことは可能っていうことですね。

その場合も、本が出た日じゃなくて、実際に調査した日を入れていただけるって。

堀木 属性が後で、別ファイルでつくるなら、その属性のほうでいっぱい入れればいいので、そういう形を取ればファイル名は統一できるかなと思います。

野口 堀木さん、ありがとうございます。堀木さんが投げかけていただいたので、ここから堀木さんのパスを受け継いでもいいですし、別観点からでもいいですよ。

City GMLの拡張

石井 厚沢部町の石井です。これって、City GMLにこのデータを接続しようって話になってくるってことですよね。City GMLは拡張できるのですか。City GMLのタグとして文化財パートみたいなものを付け加えることも可能だということなんですね。

中村 City GMLも一応AEDっていうエクステンション ディフィニションみたいなやつがあって、独自の拡張ができるので、例えば日本でPLATEAUがいろいろやっていますけど、そうすると必要なCity GMLに入ってない日本独自の規格みたいなのはそのエクステンションとして定義するみたいな形でやっているので。ただできるんですけど、エクステンションとして定義したやつをPLATEAUで表示したときにパッとボタン押したら、その項目が見れるようにするっていうのは、ある意味エクステンションした人がやらないと、標準のところではできないので、実際それがどこまでできるのかっていうのは異論があると思います。なので、エクステンションでいれるんじゃなくて、建物の話だとビルディングに入れるみたいな。野口さんが言っていたみたいな話だと、元々のCityGMLのファンクションがそのまま使えるっていう話もありますし、そのあたりは僕らには全然わからないですが、その文化財の独自にやりたいっていうのと、一般的な仕様にのっかるメリットデメリットをどのくらいそれぞれ見積もってやるかってとこになるのかなと思いました。

石井 その考古学の場合、例えば私のデータではひとつの調査区をLiDARで計測しましたが、当然その中にはいくつかの遺構は含まれてるわけです。だけどモデル名としては、1つですよね。ひとつユニークな名前を付けたとして、それで必要な意味情報が全部入っているのかな、ということはちょっと疑問に思いますね。

 このデータには例えばP1、P2、P3、P4みたいな遺構が入っているってデータはいらないのか。さっき堀木さんが言っていた全景みたいなので良いのか。そもそも調査区みたいな区分けは、すごく恣意的なものなので、私もひとつの遺跡を3ヶ所に分けてLiDAR計測をしたのでデータとしては3つ作成していますが、それをひとつの遺跡のように報告している。そういうものは、調査区と同じ概念になりますが、そういう区切り方をしていくのが本質的と言えるのかはちょっとよくわからないなと思います。

すみません、全然何の答えにもなっていませんが、思いついたことを言葉で並べました。

野口 石井さん的には今後どうしていくと、一番、先ほど特に高田さんの整理した文化財保護行政的にはどういうまとめ方をしていくとよさそうかなとか、見通しはありますか?

石井 結局コンピュータがデータとして扱う時に、何か共通の参照できるもの、要は考古学者がコンピュータを媒介にして、どうやって探すのかっていうことを考えたときに、遺跡名なんでしょうね。地点と遺跡名で探すんだろうと思います。その地点と遺跡名がオーバーラップしているものがそれだというふうに、人もコンピュータも認識するから、最低はそこなんですよね。位置情報と一意に決まる名前みたいなものが参照するものなのでしょう。はい、そこまでです。

AIの可能性

中村 全部オントロジーというさっきの意味の枠のやつとかあるんですけど、オントロジーを定義し始めるとオントロジーってある意味世界観そのものなので、必ずけんかになるんですよね。この分類は許せんとか、これはこっち側に引き込まれるべきだとか話になっちゃって、だからGoogleのえらかったところはオントロジーに踏み込まずに、Google検索などでなんかキーワード入れて検索すると引っかかるもの全部出すよっていうのをやっています。たぶん一般人はオントロジーとかわかんないので。考古学のなんとかって。それこそ、今まさに石井さんがおっしゃったように知っている遺跡名とか、あるいは地点名とか入れて検索するって話になっちゃうと思うんですよね。一方で、最近すごい話題になっている、たぶん皆さんもご存じだと思うんですけど、Chat GPTってのがでてきて、要は今までだったら単語だけ入れてそれをGoogleが検索結果を出してくれて、出てくる順番とかGoogleが決めた、なんか重要な順番ですみたいな話になってたんですけど、そのChat GPTとかだと、俺こういうもの探してるんだよって、こういうものってこうだよっていうのを説明すると、勝手に答えを出してきてくれてるわけですよね。だから今それGoogleは、Bingがあれをのっけちゃうと検索の覇者の位置を奪われるかもってびびっていて。ほんとにこの1年ぐらいで、そこがほんとにガラッと変わるかもしれないんですね。だからある意味、オントロジーを理解した検索エンジンができてくるかもしれない。ただその場合、野口さんがいつもおっしゃるのは、無から彼らはそれを生み出してるのではなくて、背後にインターネット上にある莫大なデータをAIがAIなりに意味をなにか組み上げてやっていてみたいな感じですので、それがほんとに考古学者が思うものと、文化財行政の人が思うものが合致しているかどうかっていうのは、どれくらい自分が思うデータをたくさん食わせられるかっていう、結局データでAIを教育してあげると、教育したように答えてくれるっていう話になってくるので、そういう部分も出てきちゃうんじゃないかなと思います。その一番最初は、今Google的にとりあえず遺跡・地点名で検索するってのは、すごい現実的な解決だと思うし、一方でその背後になにか世界観みたいなものが埋め込まれたり、情報が、それこそ総覧とかみたいな形で入っているわけなんですけど、それを単純に食わせるんじゃなくて、やっぱりある程度こういう方向性で理解してほしいというのを、まとめた上でAIに食わせるとAIの進化と相まって、いろいろでるんじゃないかと。

 最近すごく感動したのは、さっき言った大洗の磯浜古墳群は、LiDARで撮ってもらってるんですけど、その撮ってもらっている業者さんに話を聞いたら、富雄丸山古墳のLiDARも同じところが撮っているみたいな話があって、富雄丸山古墳ってすごい大きい円墳があるんですよね。そこで、たぶん出土品とか何かをみても、富雄丸山から出たなんとか模造品とそっくりでみたいな話があるんですよね。それも学芸員さんがいるから専門知識として教えてもらったんですけど、そういう時代とか墳丘の形式とか埋まってるものとか全部データとして入っていれば、それこそ、ある出土品が1個出てきたときに、これとつながっていそうなものが出てきたとこはどこ?って聞いたらデータを全部漁って、それこそ全部電子化されているぐらいになっていれば、形態的なやつとかを全部類似を見つけだして出してくるみたいなことが、ひょっとしたらできてくるんじゃないかなと思っていて、野口さんが土器とか石器とかは全部データを作って、全部ぶち込むんだって。今までだったら、そんなことしても誰が見るのって、その間のつながりがどうなるのっていうことが、人間にはどうしようもなかったみたいなことが、機械とかAIの力でできるようになってくる可能性があるって話もあると思います。

 やっぱりその入り口は名前でOK、一番人間がパッとわかるところの話だし、じゃあそれ以外の情報は全部入れないのかっていうとそうではなくて、なんらかの形で、それこそとりあえず全部デジタルにしてぶち込んどくと、形態のデータにしろ、デモストのデータにしろ、セマンティックのデータにしろ、その背後のつながりを、人間が囲碁と将棋の世界と同じように、AIと一緒になってそこで探していくみたいな話が、結構できるようになるんじゃないかなというようなことが僕の未来への期待みたいなところがあります。

業務フローに組み込む

高田 高田です。全部ぶち込むはいいと思います。問題は仕事増えるんですよ。で、仕事増えると、絶対進まないんですよね。そこで議論したいのは、これだけやると仕事純増になるので、今の枠組みをどう変えたら、これをどう使うとどう変えられるか、どう削減できるかとか、品質が上がるかとか、そういうアイデアがあればぜひ教えてほしいですね。それに向けて、機能を作るとかすると、一石二鳥というか仕事も早くなるし、品質も向上すると思われます。あとは活用もできるとか、一石三鳥四鳥の話にしていかないと、なかなか現実的に、要はまた花火で終わっちゃうので、現場レベルとしてこういうのがほしいみたいなのを聞きしたいんですけれども。

野口 今の、高田さんの問いかけでどうでしょう?今すぐに、具体的にという人、これがあればっていう人いらっしゃいますか?

石井 単純にいえば、発掘調査報告書の編集工程の中にこの作業が組み込まれれば良いってことですね。ということは、このデータをアップロードすることによって、報告書の図面ができるとかになればそれでいい。今はLiDARでデータを取ってもIllustratorに持って行くから、そこで行程が二股に分かれる。インターネットにあげるデータ、Illustratorに持って行くデータに分かれちゃうけど、一本道にしてあげてアップロードしたデータをそのままアップロードした先で編集して出してくるみたいなことにすれば、理屈としてはそれが一番効率的ということになるかなと思います。

仲林 さっきのLODについて、3Dデータに限っていうと、LODが一番高いのはスキャンした3Dデータってことになるんですよね?

ということは3DモデルはこのLODの1とか4とかっていうとことは別のもの、rawデータというか生データみたいな、元データみたいな位置づけになるのでしょうか。

野口 そうですね、これはあくまでも抽象化したモデルなので。

仲林 そうですよね。そこから抽出するデータっていうのは、今石井さんがおっしゃってたみたいに、報告書にどうのせるかっていうデータとして抽出してるってことですよね?このLOD0だったら、Illustratorでトレースした高さ情報を持たないデータとか、LODが高くなってくると、遺構の柱穴をさらに線をつないだり、もしくは復元を伴うことまで可能になる?と考えると、結局その報告書を作る過程というのが、LOD化する過程になるということで、LODを作る元になるのが3Dデータであれば、当然その報告書を書く前提としてそこに3Dデータがあるわけで、要は位置情報を持った3Dデータから報告書を作っていくっていうのがこれをやる意義というか、DX的なものも含めてそういう理解になるということでしょうか。結局そこは、報告書は紙で出すというのが前提であるので、そのデジタルツイン上にあるいろんな3Dスキャンデータからジオメトリのデータを読み取るというか、ジオメトリでありまた意味情報でもあるデータを抽出していって、それを作っていく過程っていうのが正に報告書を作るのと同じことをするってことであったら、この行為自体が報告書を作る行為と置き換えられないのかなと思いました。

野口 ありがとうございます。さっきの石井さんの話とかなりつながってくると思いますし、加えて今私思ったのは、全部入れるよりも、ある程度選択肢で選べるみたいになっていて、まず最初にこれを遺跡とか調査区のやつにそれを入れると、そこからまず一番手始めに抄録データができるとすごくいいですよね。時代とかそういうのを3Dデータに意味情報として与えたものが、そのままちゃんと調査区単位の3Dデータだったら、それが抄録情報にすぐなるみたいな形になっていくし、そこからさらに遺構とか単位のやつも作っていくと、何らかの間の、中間の何かをかまして、図面画もできるし基礎情報、観察表みたいなのもそこからできてくるみたいになるともうベストですね。

例えば、形情報ってことは軸を決めてやると東西何m南北何mみたいな数値はそこから拾えるわけなので、今までだと定規あてたり、CAD使っている人はCAD上でやったりとか、それをまたもう一度文章にするということでしたが、そういうのは自動でついてくるってなると、さきほどから話題になっている100基ピットがあったら100基ピットのデータを登録すると、100基分のピット一覧表みたいなのができたら、これは高田さんがさっきいったような省力化にはなるし、ピットが100基あるという情報もデータで入ってるので、抄録情報の主な遺構のところにピット100ってでれば、とても有効ではあるかなと思います。そんな感じの話としてそこから更に、平面図まだ作り続けるんだったら平面図とかもある程度、輪郭とか配置は作り出されて、あとは人間が手を加えて、ここはちょっと違うとかここに何か断面とりたいからここに断面線引くとか、そういうのをやってくようなとこまでいったら、多分すごいし、そこまでくれば3D撮る意義になるから、3Dに移行していくってことはあるかなと。

そのときにやっぱり何でも入力だと難しいので、例えば抄録だと今項目がある程度絞られていますよね。時代とかだったら、完全自由記述じゃなくて、時代っていうのがある程度、何時代何時代とかあって、北海道とか沖縄とかは別枠のものがあったりして、そういう感じで選択肢がある程度あったほうがやりやすいんですかね。このあたりどうなんでしょうか。

仲林 疑問を投げかけてるだけで恐縮ですが、要は、今報告書を作るときでも、昨日林さんに見せていただいたみたいな3Dから高さのZ値を持つ線画を起こすっていう作業を当然しますが、それが今だといろいろな媒介を通じてやっているわけで、それは今言ったみたいにこのCity GMLのLODという概念を応用すると、その作業自体がLODを作ってるっているわけで、当然現場での所見とかいうのももちろん、それがないと作れないことではあるんですけど、現場できちんと所見を残しとけば、報告書を作る作業がもうちょっとデジタルのメンタルの中で、しかもいろんな派生するソフトを使ったりだとか、いけるのを目指したりとかがいいのかなと思います。

委託契約に組み込む

高田 今、野口さんが出してもらっているみたいに、ビルを選ぶとビルの情報が出てくるっていうのは、例えばこの作業自体を業者発注の委託契約の中に入れ込むとか、そういう余地ってありますか?可能性として、堀木さん。

堀木 愛知埋文は、遺跡の発掘を業者に頼むことが多いですが、納品物の中で必ず遺構一覧、遺物一覧を出してもらっています。それを私がもらって、Webのほう遺構一覧、遺物一覧リンクするように全部Webで展開するんですけど、職員で使ってる人は誰もいません。使わずに報告書作って誤植だらけになったものもあります。これが瞬時にできるとすごく使ってもらえるのかなと。要は3D撮るときって、現場終わってきれいになったところで、撮るのであって、作業途中のものはたぶん撮っている暇がない。竪穴住居も掘りあがってきれいになって、初めて写真を撮るような形になってくるので、なかなか作業途中で3Dで記録してってちょっときついのかなと。空撮を実施する際に3D記録できて、整理整頓して、その3Dの画面を見ながら、システム上で、この遺跡ってこの遺構からこれだけの遺物が出土したとわかるようになれば、作っている価値がでてくるのかなと。今は数値だけが並ぶので、避けられているのかなと勝手に思います。3DからPC上やWebなどで属性にデータがリンクしていくというシステムはあるべきかなと思います。さらにそのまま公開までもっていけたら、いいですね。そのときに報告書に記述の間違いがあっても、見つけやすくなっていいかなと思います。

 遺構一覧・遺物一覧は委託に入れています。ただ、空撮図面というか、図面は業者によって中間生成物の3Dが作れるところと、作ってくれないところがあります。要は、絶対作っているはずだけど、くれないところと、あげるよってところがあり、個別の遺構図面になってくると写真測量をやらない業者と、やる業者と分かれてきています。なので、やれる業者のほうが絶対成果物も早いし、リアクションがいいので、空撮も早くやって、はい掘っていいですよって話になるので、こういう業者にセレクトしたいんですけど、今のところまだ様書に書けないので、どうしたものかなと思ってるところです。

野口 そのあたりは、ちょっと本体からはずれて、どうやって業務に組み込むかの話だけに着目しますが、今回のデジタル技術研究報告5に中村さんと金澤さんと岩橋千塚古墳群で飛ばしたLiDARの仕様書と解説を掲載という企画を行いました。そこで、奈文研の研究報告だから、文化庁の通知みたいにこれでやりなさいとはならないけれど、例えばやろうと思ったらこの仕様書でできますよみたいなものが出てくると他のみなさん的にはどうでしょう。奈文研の研究報告にこういうのが載っている、これに準じてやってみたいと思いますっていうのは、有効ですか?それともそんなのあっても、いやそんな奈文研が言っているだけでしょで終わっちゃう感じですかね?どっちでしょう?

(会場の反応をみる)

なるほど、有効というところもあるみたいですね。

案件仕様の重要性

宮本 行政で契約行為を行うときに必ず指名競争入札をかけるときには、担当課じゃなくて、結局財政課とか契約担当のほうが取り仕切るんですよね。そこが取り仕切る契約にかかる書類ってもう行政全般、ほんとに何の課も関係ない標準的な記述でいくのですが、もう1個特記仕様って形で、特別な内容を盛り込めるはずなので、そこはこういう方法で入札かけますって、担当者がそこを盛り込んでしまえば、いかようにもできるのかなと。それに対して財政は文句は多分言わないっていうか、言わせない。文句言うのだったら、何か理由があるのかという。そこは文化財担当者が強気に出てもいいのかなって思います。なんとなく僕も他の自治体の文化財担当者とお話をすると、文化財担当者が若干引け目を感じている、なんか行政的な手続きとか事務的なところで、なんとなくこれは言えない雰囲気があるとか、予算要求の時もそうですが、そこをもうちょっと我々はこれが必要だからというのを強気に出てもいいのかなって思います。何かやれない、やれないとなんとなく自己暗示をかけて我慢しているんだけど、よくよく考えればそれを規制する仕組みも行政の中にはないはずなので、担当がこうしたいっていう仕様案件、仕様を固めてしまえば、さっき出てきたようなLiDARの仕様なんかももう、何か実例があればそれを参考に担当者が書けばいいとは、僕は思ってます。

野口 私は行政職の経験はありませんが、大学の発掘調査をやったときは発注とかもやっていて、やっぱり特記事項みたいなことを書くと、もうぶっちゃけな話、ねじ込んでくる業者さんいるんですよね。この仕様ができる会社なんて限られているのだから、そこに便宜を図ろうとしてるんじゃないかって、おい野口ってやつ出せみたいなのが本当にあったので、皆さんもあるし、そういうの一回やられると怖いからやめよって気持ちになると思うんですけど、そのときに天下の奈文研さんがこういうレポート出してますよとか、あるいは愛知県さんがすでにやってますよみたいなのがあると理由付けができるかと思います。宮本さんくらいになると怖くないから、大丈夫なんだろうけども(笑い)。まだまだちょっとね、いろいろと心配な人たちの、うまく発注する際の助けにはなるかなというところはありますよね。そうすると、高田さんが道筋つけてくれたみたいに、実務でどういうふうにやれるのかってところを見ていくっていうところで、そこで、じゃあ石井さん、仲林さんときて、報告書とか抄録を作るときにそのままデータが使えるみたいなことっていうのが、かなり有効なのかなというふうに、私は今受け止めています。

桑山 ちょっと疑問だったのが、特記に書くときに、今言われていたような、できる人少ないじゃないかなどの意見が出るということでしたが、それって業者側も準備期間がないから、そのように突っ込んでくる人がいるのかなって思います。しかし、時代的にはこういう方向に進んでいくべきだっていうのが全体的な流れとしては建築ではもうあるので、文化財もこうなっていくべきだし、うちでやっているのが瓦の保存工事に入ったときに、調査の段階でフォトグラメトリして、数値化してナンバリングとのリンクもしています。このようなことって、文化財をよくしようという方向なので、その中で確かに瓦業界でやってるのって、ほぼうちだけみたいな状態なので、まあ確かにそういうような意見が出てくるのは必ずあると思うんですね。特記仕様の中にそういったものを入れていって、こういうふうにしていきましょうっていう努力のところで変えていくことはできないのかなというのがあるのですが、そのあたりってどうなんですかね。

野口 これはもう、実務いつもやってる人たちに意見を聞きましょう。宮本さんはいけるってご意見ですよね。じゃあ石井さん。

石井 実際に業者から事実上の随契じゃないのかと疑義が提示される案件というのは、機種指定ですね。機種指定をすると事実上の一社随契ではないかと指摘されます。たとえば公用車を調達する場合、ハイエースような車が必要だったとして、ハイエースなりの寸法を調べて、ボンゴのような類似車種の寸法も調べて、その幅の中でサイズを定義する。だから一般的に三次元データを作成するという一般性の高い仕様で、業者さんが何かをいってくるのは言いがかり以外のなにものでもないと私は思っています。実際そういうリスクは低いかなとは思いますけど。

野口 例えば、ライカジオシステムズのBLK360って書くと、これはアウトだけど、例えば点群ピッチが距離50mで何mmみたいなっていうことですよね。それ自体、測量業務発注する時とかってそうなりますもんね、必ず。その基準があってって。それは可能ということですね。今の話を聞いて、ちょっと若手の人とかに、それでもまだ不安とか、それならできそうみたいなのを率直に聞きたいです。

3Dの必要性の説明

岩佐 まず、高田さんが先ほどおっしゃったように、3Dとかやるってなると、僕らはそういうのが好きだし実際やってるので、イケイケどんどんでやっちゃうんですけど、たぶん今日話したことを持ち帰って職場でお話したら、何言ってんだって言われると思います。単純に、今うちの職場の環境として人手が全く足りていない状況で、他の業務で逼迫しているなかで、新しい3Dなどに触ったことがない人たちがたくさんいて、コストっていうところでいくと、教育するコストも絶対かかってくるわけなので、そこまで含めて、やはり考えないといけないのかなと思います。あとは、それを導入しようとしたときにやっぱり旨味がないと絶対やらないと思うので、先ほどおっしゃったような、その研究に使えますよとかいうことだとあんまり響かないと思うんですね。特に行政職の方や事務屋さんとかは。なんなら、文化財の専門の方でも、あまり響かないところあると思うので、もうちょっと進めていきたいとか、たぶん今の段階だとハードルが高すぎて、始まりもしないと思うので、めちゃくちゃハードルを下げてあげたほうがいいかなと思います。

 最初にあった意味情報っていうところが、そこまで必要なのかなと思ってまして、たぶんリンクを貼ればいいんじゃないかなって思っています。奈文研さんのほうで総覧GISなどを整備されているので、その報告書の抄録とリンクを貼ればいいのではないかと思います。

 加えて、このデジタルツインのCityGMLが、僕のイメージだと統合型GISの3D版みたいなイメージがあったので、それを切り替えられるといいかなと思っています。例えばハザードマップや開発計画の図面などを一緒に見ることができて、照会事項の手間を省けたりできるといいかと思います。もう一つの課題として、役所のパソコンってめちゃくちゃスペックが低いんですよね。メモリ8GBあればいいかな、この間まで4GBでした。だから3Dなんて動きっこないので、2Dでも見ることができるというふうにしていただけると、大変動きやすいかなと思います。そのあたりも含めて、もうちょっとハードルを下げて、モデル自体につけるデータにしても遺跡名と住所と緯度経度と時代ぐらいで、あとは細かいことは報告書のリンク先を読んでね、というので今の段階は十分ではないかと思います。のちのち、もっとみんなのスキルが高まったり、技術が高まったりしたら、もうちょっと充実させたらいいのではないかなと個人的には思いました。

中村 逆に2次元のGISだったら、大体どの文化財行政の自治体の方もほぼ、普段使いされてると思うのですが、どうでしょうか?

岩佐 GISは使ってらっしゃる方はいますが、それもあんまり、まだ使いこなせている状況ではないです。たぶん、普通の方でも、一般の地理院地図というGISのWeb版はご覧になっていると思うので、それと似たような感じにしていただければ、レイヤーで重ねたら、遺跡が載りましたみたいな感じにしていただければ、使えるのではないかなと。

奈文研のシステムからローカライズ

中村 役場で結構いろんなところと仕事していますが、最近統合GISが増えてきていると聞きますが、実際行ってみると水道は水道の部局で、建築確認は建築確認の部局で全く別のシステムを持っていて、これに水道マップを重ねてやるのですか?って聞くと、それはできませんって感じでよく言われるんです。やっぱり2次元で最近県でなんか1個、茨城県だと1個のシステム作って、それを各自治体と共有しましょうという話とかやっているみたいなんですけど、そういうのがあるのであれば、ほんとうに現場で使われてる2次元のシステムの上に、インターネットつながってるパソコンがあれば、そこで3Dも表示できるよねみたいな感じで、若くてそういうIT系に強い職員さんが入ってきたら、業務の流れからそちらに誘導するとか、なんかそういうふうにおっしゃるように、ハードルは下げといて、入って、業務で普段使いしているシステムからちょっと進んでいこうと思ったら、そういうパスがあるみたいな、そういう見せ方ができると、ちょっとずつ裾野があがるのではないかなと思いました。だから、行政的にはここらへんが今の標準だとか、ここら辺までだったら皆さん使えるみたいなところを教えていただきたいです。

あと、僕が思っているのは、結構やっぱり水道とか道路とかは役所の中でも金持っているんですよね。だから、彼らは特注というか自分たちの業務に合わせたシステムが発注できているので、統合GISとかいうと、なんでそんな面倒くさいものをやらなきゃいけないの、部署のシステムがあるからこれでやるよっていうところが多いような気がしています。逆に文化財の話とか聞くと、文化財GISを作ってくれた、この間も業者が関西でいなくなっちゃって、それを別の会社に引き継がないとこのシステムがとまっちゃうみたいな話を聞いたりししました。逆に行政の中でも文化財のほうが、独自に税金とるシステムがなくてっていう話なんだったら、文化財のシステム、今はそれこそ県ごとに作っていたりしますが、そこをなんか奈文研のシステムなどで、全国のものを作って、加えてルールを県単位とか市・区・町単位でローカライズすると、そこの統合GISにもパンっとつかながることができる、というような道筋とかサンプルが1件事例があればスムーズにいく。それこそデジタルで作成する報告書のような話をやってくれると、あの県でやって実際こんなに省力化になったみたいな話ができると、行政の方もじゃあ俺たちもこれでやってみたらどうかなみたいな話になるんじゃないかなと思っています。次に、ハードルを下げるとして、どこまで下げたら道が開けますか、みたいなところを教えていただきたいです。我々も最近分かってきて、3D作ってきても、役場に行くとうちにこれが動くパソコンが1個もありませんって言われてですね、いや3年ぐらい前のパソコンでちゃんと動くように作ってきてるんですけどと言っても、いやそれは全然ハイスペックすぎますみたいなことを言われていて、すごい今は反省していますが、逆にハード的にもスキル的にもどこら辺までが一番望めるレベル、普及を期待できるレベルなのかってのをちょっと教えていただきたいです。

国が共通フォーマットを作る

岩佐 たぶん10年前のパソコンぐらいがちょうどいいのだろうなと思います。あと、スキルとしては、役所に勤めている普通の人だとword・Excel・Power Pointが使えますぐらいな感じが普通だと思います。文化財の人だと、rawデータで撮った写真を多少、明るさ変えたりぐらいができたらいいかなぐらいだと思います。

今の段階でできることとしては、たぶんどこの県とか自治体にしても遺跡地図があると思います。それを公開しているかどうかは別として、その遺跡ごとに調査履歴や、時代の記載やデータがあると思うので、そのデータベースをきちんと作ってもらえば、まずはいいのではないかなと思います。

長崎県の場合であれば、遺跡地図はちゃんとGISで出していて、Webでも公開しています。その遺跡のポリゴンごとに時代とか遺物、遺構とか調査年度などが入っています。そのため、それを提供すればいいだけですが、ただこういったとこに投稿するにあたって、共通のフォーマットがあったほうがいいと思うので、国とかにはそういったものを作っていただけたらありがたいと思います。公開してるところに関してはですね。なので、公開してないところもほとんどなので、それをまあ強制的に回収していただくか、あとはたぶん自分たちで、編集できるような簡単な機能があればいいんですけど。結構遺跡の範囲が変わったりとか、新しく遺跡ができたりなくなったりというのがあるので、そういった編集機能までがついてれば、割と普及はするかもしれないと思います。場所によるとは思うんですけど、はい、その委託の形で。その平面上にしたものを立体的にしていくっていうんだったら、僕としてはありじゃないかなと思うんです。

遺跡地図の属性

金澤 少し話が戻りますが、記録保存調査では、文化庁が発掘調査のてびきで示すように、遺跡の記録は最終的には報告書という二次元の刊行物であるので、原因者負担で三次元データを必ず取得するといことは、コストや調査期間の短縮につながるような条件がないと、先方への説明が少し難しいかなと思います。現状、三次元データを作成している場合でも、二次元の報告書を作成するための中間成果物という取り扱いです。こういった背景もあり、報告書に載るような二次元データもシステムに簡易に載せられるとより良いと思います。

また、遺跡情報のうち何を公開するのかについては、行政では文化財保護法第93条・94条に係る照会が多いので、届出や通知の記載項目はわかりやすく表示頂ければと思います。

高田 94条に必要な情報ってなんですか?

金澤 種別、遺跡名、所在地、範囲です。

宮本 それ、多分遺跡地図の遺跡属性に連動していて、同じ項目かと思います。

金澤 はい、同じ項目で、埋蔵文化財の一覧表はそういう形で作られてるので、それに準拠していただけたら。

野口 福岡市の方に照会対応についてかなりの件数があるので、それを踏まえてこの2日の話をどうつなげたら有効そうなのかをコメントいただきたいと思います。

 福岡市の神です。93条を含む照会は年間大体1200~1300くらい対応しております。係員2人でそれを審査しており、対応に追われている状況です。

野口 93条の千数百件で、それ以外に事前相談みたいなのを受け付けていますか?窓口とともに、FAXやメールでの問い合わせには対応している?

 包蔵地かどうかの確認や周りの試掘状況など、FAXとメールで対応しています。窓口にも包蔵地の確認と周辺の試掘状況確認ということで来られます。

野口 それらは、概数でいうと何件くらい?

 包蔵地確認だと、年間8000~9000。

(一同驚き)

3次元による照会や調査迅速化の可能性

神 試掘の周辺の履歴については、記録は残していませんが、この半年で1000件以上は対応しました。1件あたり調べるのに大体5分~10分くらいかかって、業者に渡す対応もしています。現状では難しいかもしれませんが例えば試掘したトレンチの3次元データとかを、アップしておけば、「遺構面はここです。」みたいなのがわかれば、業者とある程度の共通認識は得られるのかなと思いました。さらに、試掘履歴を調べた時に、当時の現況GLから何cmに遺構面があるとかいうことにはなりますが、結局今のGLとは違うので、それも高さあわせの話とかありましたが、その高さがしっかり合っていれば、業者もそれを見て、そこから設計GLがどれくらいまで確保できるか、保護層の話もしやすくなると思うので、もしそういう情報が入っていれば、より話は進めやすいのかな、迅速になるのかなと思いました。あと、要調査案件だと、費用積算にあたって、遺構面の面数の把握と密度、土量の計算などもありますが、そういうのが3次元でわかると、遺構の深さの情報も入ってくると思うので、より精密な積算ができて、話しやすくなるのかなと思いました。私は、3次元のことを理解できていなかったので、そういったところを今後踏まえて、より迅速化できるようなところに持って行けるかと思いました。以上です。

野口 ありがとうございます。先週東京の23区内のところで、まだ若い年齢が30前の担当者と話をしたんですけど、今の福岡市さんのところまで拾うと、年間6000件対応するそうなんですよね。そこから実際の93条の対応まで行くと、1000は切っているそうなんですけど、そういうのは確かにあって、ちょっと今、議論が一回少し発散しちゃったのは、都道府県と市町村で事業規模とか相手にする事業者さんの性格が違うというのと、地方と都市部でも違うというところがあるので、それって最初にその仕分けをしなかったので、私の方でミスリードなところがありました。これから議論するときに、その実務的なとこにフィットさせるならそこも分けていく必要があると思います。例えば公共事業が調査の大半ですってところは、相手が国交省本体だったり、NEXCOだったりするので、そうするとさっき金澤さんがおっしゃったように、国交省がこうしているんですっていうのが有効なんですね。ところが、福岡市さんなんかで、民間の小規模な100平米とかちょっとぐらいのところに、国交省ではこういうふうにやるって言っているんですよって言っても、そんな中小のディベロッパーさんは、何ですかそれ、うち関係ないでしょってなっちゃいますよね。中村さん、そこはやっぱり、仕分けていかないといけないのかなと。ただ一方で、神さんが言っていただいたような部分の効率化というのは、そこはまさに中村さんとは話して目指したいところになります。何度か地下埋設物の話が出ていたのは、それを相対の地表面から何m下とかじゃなくてTPとして数値があれば、地形改変があったりしても、建設側も必ずその数字を持っているはずなんだから、お互いつき合わせられますよっていうところが一つ目のところだと思います。ここは中村さん、掘り下げていくところであり具体的にやっていくところだと思います。もう一つが岩佐さんのお話を聞いて少し気になったのが、現況人手が足りてないから新しいことができないので、とりあえずここまでやって、あとは将来にというお話だったんですけれども、現況で人が足りないのが、改善する見込みがあるのかなっていうのがものすごくあって、今できないことを将来に持って行くと、結局できないのではないかなというところがすごい気になるところですね。ただ一方で、変えるというのを説得するだけの根拠がないと、当然言えない。岩佐さんとしてはやったほうがいいと思っていても、今の体制ではできない。じゃあ、そこをどうアピールするかっていうとやはり、まずは学術とか普及事業よりも、内部的な部分でどれだけ有効なのかというのが見いだせるかどうかというところが、ちょっとあるのかなと思います。ただそれだけだと、公益性みたいなところが弱くなっちゃうので、平行して普及とかの部分っていうのも見ていく必要があるのかなと思ったのですが、高田さん、どうですか?

高田 調査そのものですね、橋口さんか水戸部さんにお聞きしたいんですけど、例えば山形埋文だともうだいぶフォトグラメトリを使って記録しているところですけども、今回例えば3D地図上に3D落とせることによって、調査が、分析や調査時点などで迅速化するようなことって、ありえますか?。

橋口 嘉島の橋口です。先ほどの話、そういったデータがある、今、町でやっているのはこうした報告書で出た図面なんかを、QGISなんかに貼り付けて、隣で開発計画が上がりましたよってなったときに、あらかた予想がつくようにしていて、ます。さらにそれがこういう線画だけだと地形の起伏とかがわかりにくいので、3次元のモデルがあると、この場所にこのところで遺構があるがこっちからは谷地形に入ってくるから、そこから先はたぶんあってもそんなにないし、とか判断できます。3次元的にな深さの情報があれば、あと一軒家がたつくらいの30cmの基礎くらいだと遺跡に影響を受け与えないような厚さがあって、バッファがあるので、慎重工事でも大丈夫でしょうと言えるような判断基準にはなってくるかなというふうに思います。なので、ただ現実的には当町でも先ほど神さんが先ほど言われたようにそれも予備調査結果を地図上に点で落としてはいるのですが、どこがあたった場所なのか深さの情報をなかなか表現できなくて、ていません。嘉島町は今はようやく1万超えたくらいの町で、熊本市に隣接しているのでだんだん都市化を始めるところですねして。今ある建てられているのは、低層住宅などで、基礎の深さとかそんなに気にしなくてもいいんですが、都市化が進むにつれてだんだん高層住宅が建ってくると基礎のが深くなってきてさが増えてきて、現時点では届出と予備調査の結果でに基づいて届出に対して慎重工事にしたところも、将来的には1m差があると遺構面にぶつかってしまうと。将来的なところで、遺跡地図に調査結果を載せていくにも後人の人たちが勘違いしないように、やはりその深さ情報は必要かなというふうに感じています。

高田 試掘とか予備調査のデータがあったら、本調査にも活用できる?

橋口 そうです。あの、業者さんと話をするときにも、この深さなのでだったら遺構に当たりますよっていうことにもつながるし、あとやはりどれだけ土を剥がないといけないのか、とか、調査結果を問われる時にも、そういった深さ情報とかいうのは必ず必要になると思っていて、活用できればというふうに思います。

水戸部 山形の水戸部です。3Dデータを試掘調査や分布調査に役に立てることができれば大変すばらしいことです。一方で、発掘調査を主な業務とする埋蔵文化財センターなどは、そのような業務を行わない場合が多いと思います。3Dデータを使うとしたら、普及啓発や教育の場面が想定できるかと思います。様々な立場のユーザーにとってメリットを享受できるようなシステムになればいいなと思います。

3Dから2次元図面を作成する

中村 ちょっと質問です。その3Dデータがいっぱいあり、さきほどの報告書は紙で作らなきゃいけないというときに、フローとして、米から餅を作るんじゃなくて、餅から米を作るみたいな、3Dから2次元図面を作るのはできるじゃないですか。しかし、2次元図面作というのは、何か情報を落として報告書に載せといて、これどこにあったかわからないみたいな感じになっちゃってるのが実情だと思うんですけど、せっかく3次元データがあるんだからこういうふうにやると、報告書に載せる2次元図面とかそういったものが作れるっていうのがあり得るのか、それとも狙っても3次元データとるのと、報告書載せる2次元図面を作るっていうのは、最初の段階から完全にクローズして分かれてしまっていて、3次元データを扱うのは2次元の報告書作成フローとは別の作業で、全体の作業の純増にならざるを得ない?

水戸部 3Dデータそのものを目的にしたことはなく、現場の調査期間を短縮するためや、現場作業の労力軽減のためにフォトグラメトリを使って図面を作成しています。よって、もっといい方法があれば三次元化はやめてしまうかも知れません。3Dデータを中間生成物として作っているので、我々としてはこれらのデータをもう少し活用できればいいなと思っています。今回、プラットフォームを与えてもらって感謝しています。

中村 さきほどの話で、業者さんに発注出したときに、納品物は2Dのものを出すという感じでやって、3Dのものは中間生成物で作成しているはずなので、作った3Dをくださいという感じだとお聞きしましたよね。そして、それをくれる業者とくれない業者があるって話がありましたが、そうすると現場の方としてはやっぱり3次元データ取って、それを2次元化するっていうのが、手順としてはもうそっちの流れの方が標準的になってるということですか?

野口 そっちになっているというか、それしかない、現状では、3Dを3Dのまま使うというのは例外でしかないです。

中村 逆に、入り口のところでは3D自体を取るということがもうデフォルト?

野口 いや、それは2Dがゴールなのに、水戸部さんがおっしゃったように2Dになるベストとして3Dから入るのを選択したら、そうなるというだけです。

中村 それを選択するかしないかっていうのは、誰が決めているんですかね?それとも最初から3Dから始めなくて、2Dを作ればいいって場合と、いや、最初から3D作った方が合理的だっていう、そこの判断は誰がどういうふうに?

野口 やる人ですね。山形県さんの場合は、外注じゃなくて内製でやっているので、水戸部さんたちが3Dの方が有利だから3Dを選んでいる。で、堀木さんのところの場合だと外注が結構多いので、受託した業者さんが3Dのほうがうちはお得だから3Dでやるとこと、3Dなんてできないとかやらないってところはやらない。でもゴールは2Dだから、別にそういう業者さんもOKってことなんです。

中村 なるほど。そうすると逆に、例えば出す側で、3Dの方が合理的だっていうふうに仕様で書いちゃうと2Dしかできない業者さんが文句言ってくるので、さきほどの宮本さんが言ってたようなことになるんですか。

野口 というよりも、行政職の皆さんは、それに準ずるところの皆さんは、元締めが3Dが必要ですと言ってくれないから、2Dをくださいとしか言えない。

高田 元締めの役割が重要ですね。次世代の未来を創れるか。

中村 2次元が目的だけど、それをやるのに一番有効な手段が3次元を最初に作ることであると現場が判断しましたって、そういう仕様書を書くのはだめなんですか?

野口 大丈夫です。それは実践されているところはされている。

最終出力が印刷物

金澤 2次元を生成したいというよりは、報告書が紙なので。

宮本 最終出力が印刷物。

金澤 文化庁の報告(埋蔵文化財保護行政におけるデジタル技術の導入について2(H29年9月))で報告書の低精度PDFが公開用と位置づけされているんですね。

野口 ということで、ゴール、紙の印刷物っていうのが正本っていうのが、要件定義の要になっているんですね。ということは、版下も作らないといけないので、3Dデータはそのまま出せないですよねっていうことで、しかも、更に細かいことを言うとCADデータもそのまま印刷に流し込めないので、印刷データに流し込める形態に変えなきゃいけないとなり、多くの場合、Illustratorとかそういったものが入ってくるという感じです。

中村 3次元データを取って、そこに流し込めば、こういうふうに2次元報告書の流れができますよっていうふうにすれば、みんなそれに乗っかってくる可能性はある?

野口 はい。ただそれは、仲林さんもちらっと触れていましたけど、そこに流し込んだらアウトラインとかを拾ってくれるツールがもし載ったら、絶対使いますよね。要は自分でなぞらなくても、ある程度、修正はしなきゃいけないにしても、概形がきゅっと出てきたら、ものすごい使いますよね、ということだと思います。

中村 僕たちがやっていることって、点群データを現場で取って入れています。同じようにデジカメとか街で撮ったものを入れるときに、今やることはAIを使って、木を一本一本認識してとか、道路の部分を認識してとか、3次元データはある意味ジオメトリのみになりますが、それにセマンティクスを与えるみたいな感じを人間がやっているときりがないので、人間がやったサンプルをある程度学習させると、人間の9割くらいの性能でAIが線を引けるようになるって話が出ています。残り1割はもちろん自分で直さなくちゃいけないんですけど、ただそれで9割のことは機械がやってくれるんだったら、すごい省力化にはなるよねって話をしています。デジタルツインも基本的に、ツインで現実でやることもジオメトリを載っけましたってだけだと役に立たなくて、そこにセマンティクスとか意味をどうつけていくかいうのをやっていくのかが、それらが僕らの研究そのものだったんですけど、そこで重要なのが今は、教師が質のいい教師データがいっぱいあり、精度が9割くらいまではできるんですね。それを精度を95%にしろとか、自動運転みたいに99.9999%にしろって言われると厳しいですが、7割8割だったら難しいことではないです。精度が9割までだったら頑張っていい教師データをたくさん集めたらできるって話があるので、例えば発掘したところの写真データを載っけてもらって、遺構部分に線を引いたデータなど、最初のサンプルをいくつかいただければ、これと同じようなことをやるAIのような機械を作るのは、たぶん原理的には可能だし、研究的としても、要はちゃんとした教師データがどれだけ集まるかだけなんで、一緒にやってくださる方がいればいろいろできるんじゃないかなと。

10年前から状況は変わった

野口 今の、中村さんのご提案に関しては、例えば10年前にこれを言ったら、その線引くのも実は全部調査員が、ここに来ているような人たちがやっているのかっていうとそんなことはなくて、パートの作業員さんにある程度トレースしてもらって、ここを直しましょうとか最後の仕上げをやるみたいなことだったんですね。10年前にこれを提案していたら、絶対ボコボコにたたかれて、お前はパートさんの仕事を全部奪うのかという話になっていました。実は今タイミング的に、作業員を確保することがどこも大変になってきている状況なので、それは刺さります、間違いなく。だから結構いけるのではないかなというのがあります。さきほど議論したCity GMLとかLODとかの話はわきに置いときつつ、そのあたりの機能があると、皆さん的にはよりいいんじゃないかっていうのが一つ方法ではあるのかなとあったと思いますね。あと、福岡市さんの話と関連して、中村さんのほうでも話が出ていた、国分寺市の恋ヶ窪遺跡ってところですが、ここは見ての通りもう宅地化しちゃっていて、2箇所空白があったと思いますが、これがもう実は今年度に両方とも開発が入って発掘しちゃって、空き地がほぼなくなっちゃったんですね。そこに、最後のところだけこういうデータが取れて、どこにどれくらいの深さでどういう遺構があるというデータがとれましたが、逆だったら使えたなっていう話ですね。福岡市さんが言っているのも同じ話だと思いますが、そこの縄文の住居跡までのどか掘りがどのくらいというのが、3Dだと出てくるので、宅地造成するときに盛土で、かつ盛土しても上水・下水とかは地下に入るんだから、調査しないといけないのか、それも盛土分で収まるのかとか、そういうことが事前にできるデータがこの地区であれば使える。逆に言うと周りの現在は家になっているところはある程度掘ってあるんですね、でも今年度掘った時にはそのような3Dのデータが使えなかったので、昔ながらの方法で試掘をして積算をしてというのをやって、かつ、実はこれだとよくわかりづらいんですけど、ここに東山道武蔵路も引っかかっているとんでもない地域であり、さらに実は試掘の溝よりも住居跡件数が多くてかなり厳しかったんですけど、ただ集落の真ん中なんで、試掘ででなくても、これくらい出るだろうって本当は見込みでわかったところになります。そこを経験や勘じゃなくて、数値で攻めていくっていうのが一番肝になっていて、その時に福岡市さんが言ったように、今まで平面図しかなかったから、深さが入るとかなり重要になってくるんじゃないかって、そこが2番目の攻め口なんじゃないですかね。あと、3番目には、そうはいっても普及とかの話もあるので、図面になるとかもこれじゃなきゃいけないのかって言ったときに、3DDBビューアと考古学デジタルツインで、作業して図面ができてそのままこれを登録しとくと、報告書が出たら公開に切り替えると、今度は一般の人もみんな見られるデータになるから、いちいちこれを載せ替えるとかしなくてもいいというような、ワンストップのそういう場所になるときっといいのかなと。例えば山形の水戸部さんとこは主に調査する機関なので、でもここまで載っけとくと、この先はセンターでも使うかもしれないし、県教委とか他のところでも自由に使えますってなると、センターの仕事としてプラスαになる可能性ありますよね。そこが多分ゴールかなというふうにまとめたいと思うんですけど、こういったことで中村さん、この方法でどうでしょう。

中村 それで、いろいろデータを載せていただいたりとか、一緒に、ワンストップ的なものとか使ってもらえるものがあるなら、やっていきたいなぁと。単純に3D載せるだけじゃなくて、それが皆さんのお仕事の効率化とか省力化とかにどういうふうに役に立つかなっていう観点があるんだなっていうのが、高田さんからのご指摘だったと思います。

3Dデータの意義は無限

桑山 さっきちょっと、発掘調査の時のフォトグラメトリの3Dデータがあるよっていうので、それをどうしたらいいのかわからないって言ったかと思うんですけど、あれって、たぶん皆さんは身近なので、みんな見ていて普通なものかもしれないんですけど、たぶん小学生とかって今ああいうようなものを見ようと思うと、ほとんどが写真など2次元のものしか教科書で見たりとかできてないと思います、僕らの時代はそうでした。ただ、今だとARで簡単に見せられるようにできるので、現地でここはこうなってたんだよとか、今だと発掘調査中しか見学できないけど、それが終わったあとにもここはこうなってたんだよって現地で見ることができるんですよね。そういった使い方などは検討とかされていますか?もしもされていないのでしたら、無料のサービスとかもあり僕がいつもいってるのはSTYLYという日本企業によるサービスがあって、そういったサービスを使って公開していったら、面白いんじゃないのかなって思っています。

野口 ありがとうございます。例えば、CC BYのような自由に利用できるライセンスで公開されていれば、誰でもダウンロードして、今桑山さんが言っていただいたようなことに使えるようなソフトでもサービスでも、載っけていくことはできるということで、可能性はいくらでもあるということでよろしいですかね。

桑山 3Dデータがあることの意義が少ないって言われていたんですけど、僕の中ではもっと無限にあるのかなって思っています。公開することの意義とか3Dにすることの意義ってのは、報告書だけじゃなく、教育をもっと豊かにしていけるのかなと思うので、だからどんどん公開していってほしいなというのと、そんなに手間がかからずできるので、ほんとにSTYLYについてはアップするの10分くらいで公開できてしまうようなサービスなので、もっと時間がかかっちゃうよねって思わずに、やってもらえたらなと思います。

高田 クロージングしていきたいと思いますが、1点漏れているのがありますね。許諾関係ですね、CC BY。昨日水戸部さんから問題提起していただいたんですけども、これについては奈文研としては答え出ています。CC BY4.0です。基本的には埋蔵文化財の場合は、現代アートとかは別ですけど、基本的には著作権処理的ななものには、すべて入れています。遺構のピットや出土遺物についても著作権には及ばない。さらに自分たちで記録しますし、3Dについては著作権的な権利は発生しませんので、これは発生しません。著作権的には全く権利を主張できない。更に文化財保護法の観点からしましても、国民の皆様に広く使ってもらうものであるというのがありますので、そういった意味で、奈文研としてはCC BYで出してます。ですので、ダウンロード可能できますし、商用利用可能ですし、そういうふうにしています。本来的にはパブリックドメインかもしれませんが、ただし、やっぱり立場的にですね、機関で仕事として出しているので、クレジットは出してほしいなっていうのはあります。クレジット、仮に表記されなくてもですね、別にそれを追いかけて訴えるとか、当然法的にも根拠はありませんので、あくまでお願いベースでクレジットを出していただくというのを、そういうふうにやってます。本来でしたら、例えば民有地のものをどうとか、ケースバイケースのものはどうしたのとか、次のステージかなというふうに思っています。ですので、原則のベースはCC BYかなと思っています。

最後のまとめなんですが、私の立場としては奈文研文化財情報研究室です。業務としては、文化財情報を未来に残していくためにどうしていけばいいのかってことが、ミッションかなと思っています。報告書のPDF化とかやっているんですけども、立て付けとして緊急発掘の遺跡の身代わりとして報告書を作っている。実際見てみると、報告書のその中身をばらしたときに、原位置に戻せるのかとか、それがほんとに身代わりになっているのか、とかいうのがある。もちろんなってるのもありますけども、ちょっとこれ土地になかなか戻せないなとかいうものも正直あります。これを数十年続けた場合、自分たちが大量の公費税金を投入して、いろんな人が一生懸命書いたものが、使えないものとして蓄積されていってるとしたら、それはそれで非常にまずいんじゃないかなと思っています。で、昭和でしたら、とにかく紙しかなかったので、そういうものだと思うんですけども、今いろんな技術があると思いますので、やはり自分たちの業界としてブラッシュアップしていかないと、業界としても沈没するんじゃないかなというふうに考えます。ここ考えたときに、2つの観点があって、内部的な観点と外部的な環境の観点があります。まず内部的には自分たちの専門化、みなさん専門職、専門家ですので、自分たちの業界は自分たちでよくしていくというのが当然の義務だと思っています。それをしないのは、思考停止しているのは専門家失格だと思っていますので、それは自分たちのためにやっていくというのが大事。そういった意味で、3Dは手段ですので、それが使えるなら使えばいいし、別にあれば別のものを使ったらいい。あと業界全体としても、うちの研究所もそうなんですけども、非常に財政状況が厳しいと。当然社会的にも日本政府の財政も良いとは言えないですし、人も減ってきている。人口が減っていく以上、学芸員の数も減っていく。ですので、外部的にどんどん悪化してますので、従来通りのことをやっていると必ず破綻しますし、社会的な理解も得られないと、そういう諸々をひっくるめて未来が作られていくと思いますので、ぜひいろいろやっていきたいと思っています。

やっぱり何かを変える時には、ファーストペンギンはたいへんです。昨日よかった表現として「砕氷船」という表現があって、氷があって駄目ならまたバックしてガンってぶつかるみたいな(笑い)。効果がある取り組みが拡がると文化財分野全体がよくなり、過半数超えたときに業界が変わります。PDFの時にも色んなご意見を頂戴しましたけど、状況は変わりましたし、徐々に変わっていくと思いますので、ぜひその点を皆さんと一緒にやっていきたいと思います。

ちょっと駆け足になりましたけども、終わりたいと思います。

※本稿は当日の発言をもとにテキスト化し、公開に際して適切な表現に改めるとともに意味が通じるよう加筆修正した。


NAID :
都道府県 :
時代 :
文化財種別 :
史跡・遺跡種別 :
遺物(材質分類) :
学問種別 : その他
キーワード : 3D 3次元 デジタルツイン モバイルスキャン CityGML 文化財行政 PLATEAU LOD 3Dデータ 3Dモデル
データ権利者 :
総覧登録日 : 2024-03-22
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