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デジタル技術による文化財情報の記録と利活用 > 6 号 > 遺跡位置情報に関する検討会

遺跡位置情報に関する検討会

沖 憲明 ( 広島県立埋蔵文化財センター ) 高田 祐一 ( 奈良文化財研究所 ) 国武 貞克 ( 奈良文化財研究所 ) 仲林 篤史 ( 城陽市教育委員会事務局 ) 楠 寛輝 ( 松山市役所 ) 野口 淳 ( 公立小松大学 ) 野口 舞 ( 東京都教育委員会 )

Review Meeting on Differences in Handling Geographic Data of Archaeological Sites

Oki Noriaki ( Hiroshima Prefecture Archaeological Research Center ) Takata Yuichi ( Nara National Research Institute for Cultural Properties ) Kunitake Sadakatsu ( Nara National Research Institute for Cultural Properties ) Nakabayashi Atsushi ( Joyo City Board of Education ) Kusu Hiroki ( Matsuyama City Government ) Noguchi Atsushi ( Komatsu University ) Noguchi Mai ( Tokyo Metropolitan Board of Education )
沖 憲明, 高田 祐一, 国武 貞克, 仲林 篤史, 楠 寛輝, 野口 淳, 野口 舞 2024 「遺跡位置情報に関する検討会」 『デジタル技術による文化財情報の記録と利活用』 遺跡地図・3D・GIS・モバイルスキャン・デジタルアーカイブ・文化財防災 https://sitereports.nabunken.go.jp/online-library/report/7
埋蔵文化財包蔵地の周知については、文化財保護法上の定義が曖昧で、各自治体で異なる運用が行われている。法的には93条で「周知されている」状態を指すが、95条「周知の徹底」が求められており、そのための具体的な方法は定められていない。インターネット公開に際しては個人情報の問題は少ないが、遺跡地図の精度などの課題もある。照会対応や実務的な面や今後の方向性などの議論を展開した。
目次

背景と開催目的

奈良文化財研究所では2021年に文化財総覧WebGISを公開した。遺跡情報を含む全国の文化財情報66万件をWebGISにて公開しており、今後は、全国の文化財位置情報の公開基盤として整備していく予定である。埋蔵文化財行政においては、文化財保護法95条にて、周知の埋蔵文化財包蔵地について、資料の整備と周知の徹底を図っていくことが求められている。デジタル時代にどのような情報公開をしていくことが適切か方向性を検討していくことが必要である。そこで、遺跡地図の運用について実務者にご参集いただき、デジタル時代の遺跡地図への対応について議論した。2023年12月19日、 奈良文化財研究所にて開催した。



遺跡位置情報に関する検討会風景(2023年12月19日、 奈良文化財研究所にて開催)

検討会開始前のフリートーク

 広島県では、文化財保護法第92~94・96・97条に基づく届出・通知の事務処理権限を23市町中12市町に移譲しているが、当該権限未移譲市町文化財担当部局が提出を受けた埋蔵文化財取扱いの事前協議については、回答案の内容を全て県教育委員会がチェックしています。法第93・94・96・97条の事務処理権限を有する自治体が包蔵地の有無、範囲の決定権を有する。という、平成10年文化庁次長通知の趣旨を踏まえてのことです。県教委が1年間にチェックする協議書の件数は近年増加傾向にあり 、300くらいですね。でも、多分、権限移譲済市町で処理している件数を含めた 県内の協議書取扱い 総数の数%ぐらいでしょう。

野口淳 今のは取引の開発が起こるという前提で、国税の採決で8割で止めるというのはもう既に出てるとき、もし今後、国税側が相続税を少しでも多くとりたい、包蔵地の範囲だから80%で、沖さんが調査の見積もりをしたら、それは試掘を行ってないから正確じゃないみたいな物言いを付けてくる可能性ってあり得るんじゃないかなって。

沖 ありえますよね。あれを誰が調査する前提で積算するのかというところなんですね。そういう問い合わせが不動産鑑定士の人から寄せられることが平成18年ぐらいから急に増えて、何があったのって逆質問したら、不動産鑑定の業界の取り決めで、地下のものをちゃんと事前に調べなきゃいけなくなったから、という返事でした 。で、問い合わせの場所に埋蔵文化財包蔵地が あった場合どうなるのって尋ねたら 、鑑定士の人も「さあ?」って言っていたんです。

 例の平成20年の国税の裁決の影響ですか?それとも何か別にあるんですか。

野口淳 その前によくあるのが、相続税の額が高いので賄えきれないから売却して払いますっていったときに、埋文で評価の8割でみたいなのが続いていて、そうすると当然腕利きの税理士だったら、これ経費だから減免になるでしょっていうのがあったりしましたね。

 裁決が20年に出ているから、それ以前に不動産業界内でルールを 先に決めちゃったんじゃないですかね。

野口淳 取引の阻害要因なんでね。

国武 妥当な感じはしますね。

野口淳 8割が妥当だとしても、次にその8割の元を誰が責任を持って出しているのかって。東京都内だったらどこが調査主体になるかで変わる。

 自分が対応するとし たら、平成9年文化庁次長 通知に基づいて、買い主が国とか県だったら、県の発掘調査組織が、買い手が市町村とか民間だったら、その市町村の文化財担当部局が発掘調査をするという前提で、発掘調査経費の 積算をするという案を出すと思います 。ただ、平成20年裁決では、実際発掘調査が発生しなかったら控除にならないとなっていましたし、発掘調査経費も年によって変動しますので、一体その8割の原点はどの時点で計算して、どこで清算されるのかよく分からないと思う。

野口舞 東京都にしても、包蔵地を全部調査するわけではない。

 できるだけ発掘調査で記録保存せずに、盛土か何かで現状保存するよう誘導するのが文化財保護部局の仕事なんだから、工事の具体的計画もないのに発掘調査する前提での金額の試算はできないと言って、不動産鑑定士の方からの要請を一旦お断りした事はありました 。

 そこ、みんな知りたがるんですよね。なんぼかかるのっていうのをね。MAXだったらって話でつかみの数字を大枠で言いますけど、それはあくまでつかみの数字であって、何でそうかというのを説明すると、向こうも大体分かってくれて、あくまで社内用の話なんでっていうレベルであればいいんですけど、それが外に出るとなると、また全然別の話なんですよね。平米2万、3万です、あるいは4万です、なんていう大ざっぱな数字、社内での検討材料としてぐらいだったらまだいいとして、こういうふうになってしまうとなかなか出せないです。

 実際判決まで行った事案とかと発掘まで行った事案が多分判例として残るんだろうね。

野口舞 そうですね。

沖 じゃあ別にその後発掘したとかはないんですかね。

 その後は知らないですが、これを読む限りは、発掘しようがしまいがっていうような書き方だと思うんです。平成20年のこの件に関しては、あくまでこの山林、宅地並み課税で、宅地として利用しようとすれば削るしかないので、その費用を引いた額で評価すべきということ。

 不動産鑑定士の事務所がインターネット上にQ&Aで出してるものがあるんです。そのなお書で最後に書いてあるのが、埋蔵文化財包蔵地に該当したら減価できるというのではなく、発掘調査の費用が発生する場合に限り減価できるということに注意が必要ですって書いてあるので。

仲林 不動産鑑定士なんで、その売買の話ですね、それは。今は不動産評価の話で説明が違うと思うんですけども。

国武 発生した時に限り有効って不思議ですよね。どういうことなんだろうな。

仲林 それは売主からしたら包蔵地やから安く叩かれたけど、結局だからうまく逃れて建物建てたら、やっぱり売買、もともとの話違うってなる。

野口淳 やっぱりだから土地の価格が高いところだともう死活問題じゃないですか。どれだけ評価されるかで決まって。

仲林 鑑定士の投資評価とか、法律系の第三者が客観的に評価する場合については、そこに書かれているように、何か鑑定士さんの考えによってどう評価するか。例えばここにこの土地に、こういう商業施設を建てることが最も効果的なんで、その場合、この土地の価格はいくらになるって鑑定するんですけど、実際商業施設を建てたとして、それで発掘したらいくらかかるか、そこまで考えて鑑定する鑑定士さんも聞いたことありますし、一律包蔵地だったら5%、価格から引くっていう鑑定をしていますっていう鑑定士さんもいます。それはもう、鑑定士さん次第というか、それは専門職の領域だと思うんですけど。

 平成25年案、よく見ると、発掘調査にかかる期間がすごく長くて、平均27年程度必要と書かれているんですね。最低で17年最長で37年を要し、平均すると27年程度必要となるって書かれいてる。

野口淳 ものすごい広いんでしょうね。面積が不定値になっているからわからない。

 要するに宅地の中に、ちょこんと単独で山林が残っていて、周辺の宅地と一緒に開発しようと思ったら、山一個削らなあかんと、そういう風に読めますよね、これだと。だからこそ、相続税の評価するときには調査費用を減らさなあかん、それを考慮してあげなきゃいけないでしょっていう、個別事例だなと思うんです。これについてはですね。当時、埋蔵文化財って、それぐらい邪魔者なんだと、ちょっとショックを受けましたけど。

 埋蔵文化財包蔵地の周知の徹底を国や地方自治体に求めた文化財保護法第95条 ができた時の文化庁の通達(昭和50年9月30日各都道府県教育委員会宛て文化庁次長通達「文化庁保護法の一部を改正する法律等の施行について」第五の四。なお、当時の条文番号は第57条の4。)を見ても、周知の方法ってのは、従来行われていた方法って書いてあって、どういう行為を周知というか、という定義めいたものは読み取れません 。当時の国会審議の議事録を見ると、個別の遺跡の保存問題のことが頻発していて、ことばの定義の議論よりも、件数も規模も拡大する開発事案に対して、今そこにある遺跡をどうやって守るか、ということに重きが置かれていたように読めました。

仲林 それってどこに?有識者会議?

野口淳 今調べたんですけど、周知の形態の様子と、包蔵地の登録の条件要件って、明確な明文化された基準ってどこかにある?

野口舞 95条では広く知らせてくださいと記載されているといえる。

仲林 昭和29年の文化財保護法に一部改正について。

野口淳 ああ、仲林さんが調べてきてくれた。

仲林 ああいう考えが根底にある。

野口淳 最初に整理しなきゃいけないなって思っていることは、今ここに座っている人は考古学的な遺跡っていう問題と、保護法上の周知の埋蔵文化財包蔵地を分けても考えられるし一体とも考えられて、共通点と違いを常に理解するけれども、どう切り分ける。

野口舞 ここで話するのであれば、遺跡ではなく包蔵地の話ですよね。

野口淳 それを前提にするということですね。

 この間、高田さんの原稿書く時に、周知の埋蔵文化財包蔵地ってなんて英訳しようかなと思って、文化庁のHP見たら、“land known to contain cultural properties”っていう、そのまんまの直訳だったんですが、他の研究論文とかになると”archeological site“とかって英訳しているものもあって、それは違うやろって思ったんですが、まさにこのことですよね。

遺跡地図座談会の趣旨説明

高田 遺跡地図に関わる検討会を開催します。まず、今日の流れです。自己紹介簡単にしていただきます。その後、私から進め方とか趣旨説明をします。システム的な説明ですとか、奈文研でやっている事業の説明をさせていただきます。その後、議論に入って最後にまとめ、整理をしたいと考えます。

 問題の所在ということで、絵にしてみました。皆さんに事前に書いていただいた内容を整理するのと、過去の判例を整理しております。

 まず、周知の埋蔵文化財包蔵地は不動産です。いちばん上に、不動産売買があります。売り主と買主と仲介業者ですね。この辺りの説明については、判例があります。下の部分が行政としての我々の範囲になります。周知の埋蔵文化財包蔵地については、当然登録があって、その時に範囲設定すると。その時に線を引く、また調整、バッファーゾーンとかいろんな考え方があります。最後に周知ですね、公開をどうするか。このあたりは、都道府県各地域によって違いが出てきているということです。遺跡地図に関してはデータ利用ですね。最近は電子公開もありますし、土地評価の部分についても使われる部分があるかなと思います。

 整理の観点につきましては、3段階あります。まず一番上位にあるのが法律ですね。施行令省令あと判例です。これは全国的に恐らく揃うはずです。次に行政の裁量、ここについては地域差が出てきているのかなと感じます。あと、一番下の層は、担当者のそれぞれの思いですとか、理解っていうのがありますが、今回は行政の裁量ですとか、法律の部分を中心にやっていきたいと思います。


検討会の問題の所在


 まず今日の配布資料について整理します。資料はリスト形式のものが2枚あります。私の方で短時間でざっとまとめたので粗いんですが、一応種別として、周知、遺跡登録、遺跡範囲といった種別を付けて、似たような内容を寄せています。横のA3のものが、遺跡地図にかかわる主要凡例ということで、幾つか載せております。ただやはり不動産売買に関するものが多いと思います。あとは不動産の評価についての80%にするとか、相続税あたりの事例もありあます。

 では今回の趣旨の一つなんですが、奈文研としてWebGISをやっておりますので、まずはそれについて情報を共有します。

皆さんご存じの全国遺跡報告総覧です。抄録ですとか、いろいろなデータがありますので、そういったものを切り出して、2021年に文化財総覧WebGISを作りました。遺跡地図を元にしているデータもありますので、これを元に開発の時の遺跡範囲に使われるとよろしくありませんので、必ず開発時とかの照会については、自治体担当者にご確認くださいというのを利用規約として記載しています。それに同意してようやく使ってもらえます。

 データとしては、遺跡のポイント、ポリゴンを含めて今66万件あります。これの課題ですが、包蔵地のポリゴンにつきましては、ものによりますが、およそ20年前の遺跡地図をトレースして載せているというのがあります。

これが課題の一つで最新化していく必要があります。全国から範囲データを最新化したいという要望がいくつか来ております。それに対応するために遺跡、包蔵地の範囲を修正できる機能を一応開発はしています。遺跡総覧のそれぞれのIDで入っていただくと、こういった形でポリゴン情報を編集する画面になります。ここには遺跡名とか種別とか、テキストの情報として入っている。あとは上の部分、地図の画面でポリゴンの修正を簡単で反映できると。遺跡の包蔵地の範囲を変更できるっていう機能は実装はしています。ただ、やはりこの部分についてはいろんなことがありますので、今は皆さんの実用面での展開はしていない。機能としては開発していますけども、展開はしていないという状況です。今回の議論を踏まえて課題整理をして、できればこれを全国的に運用していきたいという感じです。これを展開した時に、例えばこの遺跡範囲の妥当性ですとか、バッファーゾーンとして運用しているところがあります。各地域によって遺跡の範囲の考え方とか運用が違いますので、そういった基準が違うものを全国的に一つの箱に入れるときに、どういった不具合があるのかとか、どういった点に気をつけたらいいのかとか、もしくは問題がないのか。そういったところを洗い出したいと考えています。

 奈文研の情報研究室としましては、一つの柱として、こういう遺跡に関する文化財情報をネット公開した際の予想される懸念とかを、ひとつの議論の柱にしたいと思っていますが、当然それに関わるとこに行き着くまでにいろんな課題があると思いますので、そのあたりを議論していければなと思います。私からは以上です。

 ここから先、あまり進め方は考えていません。予定調和にはあまり考えていませんので、ここから自由議論にしたいと思います。

 まずは自己紹介ですね。じゃあ私から時計回りで。奈良文化財研究所情報研究室の高田です。よろしくお願いします。

自己紹介

沖 広島県立埋蔵文化財センターの沖と申します。平成4年に県の教育委員会に採用になりまして、その後財団の発掘調査機関とか県庁の文化財課で埋蔵文化財を長く担当してきたということで、今回お招きをいただいたものと承知しています。よろしくお願いいたします。

野口舞 東京都教育委員会の野口と申します。平成26年度から現職におります。

史跡の担当と埋蔵文化財全般、あと補助金事務などをやっています。多岐にわたってお話をしているような状況で、今回お呼ばれしたと思っております。よろしくお願い致します。

仲林 城陽市教育委員会の仲林と申します。3月までは大阪府の東大阪市で勤務していました。自分の経歴なんですけれども、大学で考古学を専攻しまして、その後一般職として東大阪市に入庁しました。入庁5年間は公務文書課というところで法律とか条例に関する部署にいました。それから9年間文化財課におりまして、残りあと3年間は用地買収の担当部署にいました。4月に転職して城陽市に専門職として入っています。どちらかというと、文化財のこともそうですし、法的な部分での興味っていうのも、主は包蔵地の土地としての評価に関することとか業務的に多少触れたことがあるということで、今回呼ばれたのかなと思っています。よろしくお願いします。

 愛媛県の松山市教育委員会文化財課で埋蔵文化財担当のリーダーをやっています楠と申します。私は高田さんと石垣というか石つながりで初め知り合ったんですけども、いろんな話をする中で、ぜひ埋文のほうの包蔵地の話を、一回、奈文研の研修で話してみないかと言われまして、今年の研修でさせてもらい、それを文字化して、この前お送りしたのが多分きっかけで、今回は呼ばれたのかなと思っております。20年以上埋蔵文化財行政にずっと関わってまいりまして、私は市町村ですので、実際に直接業者さんと調整を行う立場でずっと関わってきた中で、いろんな改善をやってきたというところです。そのあたりの経験を今回生かせたらなと思っています。よろしくお願いいたします。

野口淳 公立小松大学次世代考古学研究センターの野口と申します。私は埋蔵文化財の行政の担当という経験は全くありません。埋蔵文化財との関わりは、調査者として2003年から2016年まで大学の校地内調査で、業者の皆さんの御指導を仰ぎながら調査をすると、各種手続きを行うというのをやっていたというのが一つ。あと、データベースとかGISということで、遺跡情報の利用という観点から関わっているのが一つ。もう一つは、特定の行政組織に所属していない関係で、広く国内各地の自治体さんやあるいは調査組織ともいろいろとお仕事一緒にさせていただいているので、一定の地域や一定の立ち位置ではないところからの見地から少し議論に参加させていただければと思っています。よろしくお願いします。

国武 奈文研の国武です。行政の方では、平成23年から27年度の間、文化庁の埋蔵文化財部門にいました。その時はさまざまでしたけども、特に包蔵地の問題も関心を持って見ておりましたが、この28年度から奈文研に戻りまして、遺跡総覧がなかなか普及しない。文化庁の施策とも矛盾している状況がございましたので、高田さんと一緒にその普及といいますか、行政的な枠組みに入れ込むようなお手伝いをしています。今回、一昨年度のあたりから文化財WebGISでかなり成果のプラスを出していまして、今後包蔵地の範囲を入れていって、行政の役にも立つように、もう1つは研究水準全体的な革命的な底上げみたいなことも考えています。遺跡総覧の報告書PDFのときの問題もそうなんですけども、やっぱり一見文化庁の施策とちょっと短期的には相いれない部分もあるとは思うんですよね。ですので、今回かなりいろいろな立場の方から行政的なアドバイスを私たちいただいて、うまく落とし込んでいきたい。全国遺跡総覧もそうですけども、何か一つ突破するとですね。皆さんに行政にも学術にもみんなにすべての皆さんが喜んでいただけるようにね、そういうプラットフォームになる可能性があるかなと思っていますので、忌憚のない、例えばそんなの学術ボケしているよとか、こんなことも知らないんかとか、何でも結構ですので、ちょっと厳しく手厳しい意見も含めて忌憚のないご意見いただきたいなと思っております。よろしくお願いします。

遺跡と周知の埋蔵文化財包蔵地

野口淳 高田さんが整理していただいたとおりだと思うんですけれども、このことに関わるときに、ほとんどの方が埋蔵文化財行政の担当者としてと、それから考古学の学術的な専門家としての立場を両方ご自身の中にお持ちの方がほとんどで、その中で周知の埋蔵文化財包蔵地という文化財保護法の中にあらわれる用語というのが学術的には遺跡という言葉としばしば置き換わってしまう。そして、その実務現場の中で行き来している場合が少なからずある。例えば周知の埋蔵文化財包蔵地の認定とか内容の評価に当たっては考古学的な評価というのがつきものだというのが前提で話をしたりするということが多いんですけれども、本日は法律にかかわることということですので、一旦その学術の話は脇に置いておいて、ただし国武さんがおっしゃったようにその果実として、議論の果実として、学術的な利用等がどうできるのかというのは、最後に見通しを考えるというような進め方がよいのかなと思っておりますが、いかがでしょうか。

参加者一同 はい。

国武 遺跡というふうに仮に言ったとしても、それは周知の埋蔵文化財を指しているんですよということですね。

野口淳 そうですね。話し言葉としては、遺跡の方が短くて便利なので使ってしまうと思いますが、法律のことを話しているということです。了解事項としたらいいかなと思います。

野口淳 法律上の定義論的な大きな話を先に進めるのか、それとも実務の皆さんが直面している課題のところからスタートするか。

高田 順番としては法律がベースになるので、法律と判例がいいとは思います。ただ今回気づいたのは、意外と判例がないんですね。文化財の保存運動で訴訟はいくつかありますけど、いわゆる遺跡地図に関する部分の法律っていうのは、不動産売買の部分ぐらいでしか見つけられませんでした。ですので、実際不動産売買のところについては、基本的には重要事項説明に位置づけられていますし、売り主買い主仲介業者の責任も、説明義務のところは、ある程度判例で固まっているのかなと思います。ここは議論の余地があまりないかなと思うのですが、いかがでしょう。


重要事項説明-都市計画法、建築基準法以外の法令に基づく制限の一部


周知の埋蔵文化財包蔵地の周知とは?

野口淳 では、私から続けていきます。そうしますと、高田さんの方で整理していただいた図式のうち、埋蔵文化財保護行政が不動産売買につながる部分というのは、結局周知するところがスタートだと思うんですけれども、保護法の条文の中にも周知ということがうたわれていて、関連する通知等が文化庁からも出されているわけですけれども、そもそもこの周知の埋蔵文化財包蔵地を周知するということには、一体どのような形式や様態が定められているのかということを確認しておきたいなと思います。

高田 例えば、それぞれ各組織で「周知」ってどういう概念、考え方をされていますか。

 ここ20年ぐらいの埋蔵文化財の包蔵地の改訂というか、まさに現場にいたわけなんですけれども、やはり周知の部分というのは非常に悩みまして、「周知されている土地」というふうに定義されているんですけども、「周知されている」というのはどういう状態なのかというのがよくわからない。結局、相手方の理解の問題なので、行政側が把握しようがない。ただ、一応私どもとしては、相手方が知ろうとした場合に知れる状態にしておくということが最低限必要だろうと。昔から法律をやっている人間とかに聞くと、市役所の前の掲示板に掲示をしたら、それでもう周知なんだ、というような議論も一方ではあると思うんですけども、時代的な変化も含めて、それではいかんだろうと。やはりウェブ上で発信をするということが極めて重要だと考えて取り組んでいるところです。

また、具体的な取り組みについては、話すと長くなるので、先にお配りしている資料を参考にしてもらうとして、包蔵地改訂を受けた後の周知行為として、広報に載せるというのは、法的な意味でのひとつの基準として重要と思っているので、広報に載せて、その数カ月後に一応周知が終わったから、実際に適用するっていう運用を、今松山市では行っています。この周知期間を設けるというのは、多分非常に珍しいやり方だろうというのは自覚しているんですけれども、それがない状態で周知をしていると主張するのは、もし争われた場合には、私どもにはちょっとしんどいかなという思いがあります。もちろん、ホームページには広報への掲載に先んじて、県が決定したら早々に載せるんですけども、やはりポイントになるのは市の広報。それから3ヶ月、もしくは4ヶ月と期間を定めて周知期間とし、増やす場合はその時点から運用すると。減らす場合は、県が決定した時点ですぐ減らすんですけども、増やす方についてはそういうふうな判断をしている、というのが松山市のやり方です。

仲林 城陽市では、城陽市独自で周知ということは特段してなくて、窓口に来ていただければ、その遺跡地図等で包蔵地に入っているかどうかお知らせしています。それ以外で城陽市としては、WEBで公開したりとかということはしていません。ただ、京都府が市町村の遺跡地図、包蔵地の両方を公開しておりますので、事業者もそういったものを見て確認のために、窓口来ていただくという形でやっています。東大阪市にいた時の話になってしまうんですけれども、これは当時の法律の解釈として、まず文化財保護法93条には、第一項には「埋蔵文化財を包蔵する土地として周知されている土地」という、野口さんがおっしゃった周知されているという言葉が使われています。一方で、95条には「周知の埋蔵文化財の土地について周知に努めないといけない」という周知の徹底を図るために、周知に努めなければならないというふうに書かれているんですけど、93条の条文では、例えば95条に基づいて周知している土地とかっていうようなつながりは見られませんで、基本的には、周知されている、法的な意味での周知っていうのは既に周知されているでしょうと。要するにそこに行ったら土器が散らばっているとか言い伝えの遺跡があると、多分地域いろんな状況の遺跡があるんですけど、法律がフィクション的な意味では包蔵地は既に周知されているものですというようなところがある。一方で実務上の話として周知しなければならない、現実問題として、何らかの方法をもって周知するということが図られているという。そういう2つの枠組みがあるのかなというふうに理解しています。ですので、その周知に関して例えばここが包蔵地ですか?っていう問い合わせに対して書面を持って回答するということは一切していませんでした。それは法的な意味で、既に周知されているものなので、自治体がここは包蔵地ですっていうようなことは、文化財保護法上の理解としては成り立たないのかなというふうに窓口担当として考えてみました。ですので、当然来たものに対して、ここは包蔵地ですって答えることはしますが、書面を持って行政の公文書として返すということはしていなかったです。それは、最初に長々と申し上げた、おおよその理解がそういうふうになっていた、当時はそう理解してやっていたということです。だから、専門的な意味での周知と、実務上の周知というのは切り分けて考えていました。

高田 法律として周知の定義っていうのはない。ということですか?

仲林 そうですね。周知という言葉は93条と95条にしか基本的に出てきません。何をもって周知するとかっていうような、もしくは周知の埋蔵文化財として、そこを指定するとか決定するとか、そういった行政が発議で行うようなことでもない。そういう風に理解しています。

高田 保護法での使い方としては、周知というのは状態を示す言葉ですか?動詞ではなくて、皆が知っているっていう状態を示すのが周知?

仲林 そういう理解です。

 93条は周知されている状態を指していますよね。一方、95条は周知をしていくという行為を求めている状態、動詞なんですよね。こういう使い分けがあるということをおっしゃっていて、我々松山市は、冒頭でもちょっと申し上げたように、メールでも電話でも回答するんですけど、申請いただいたら、実は包蔵地に入っている、今後は届け出が要ります、要りません、ということまでお伝えをする公文書を発行しています。それは売買の段階であったとしても、高田さんがおっしゃったように不動産取引の際に重要事項にも載せるようになっていますので、業者としても、それが公文書だと安心だと。我々としても、その相手方の買主に対しても、それによって確実に周知ができる。そのような公文書を95条の主旨をもって発行しているという理解です。これも恐らく全国的には非常に少ないと実感しています。

野口淳 95条が法律としてはあり得るんでしょうけど、日本語として難しくて、「周知の埋蔵文化財包蔵地について周知の徹底を図るために必要な措置の実施に努めなければならない」となっていて、その最初の周知はまさに仲林さんおっしゃったとおり、93条の一項で、周知されている土地ということ。これに関してはまさしく行政が主体的に何かをすることではないという理解だということですね。今、議論していたのはどちらかというと、後ろの95条の周知の話なのかなというふうに思うんですけれど。

高田 東京都ではどうですか。

野口舞 まず95条の周知の徹底のお話からしますと、東京都ではインターネット遺跡地図というのを公開しておりまして、そちらで全国どこからでも見られるようになっています。紙の包蔵地の冊子は作っていないです。来歴を紐解いてみますと、以前は、紙の遺跡地図も作っていたのですが、そのあと並行してCD-ROM版を2001年に作り始めて、平成16年(2004年)からインターネットの遺跡地図をインターネットに載せるようになりました。紙ベースの上に載った地図をPDFで見られるような形で公開をしていて、平成27年には、国土地理院の地理院タイルをベースにポリゴンデータで遺跡の地図を載せるようにしました。

 区市町村ごとに違うところは、都市基盤整備図に載せ周知しているところもありますし、どこまで調査が終わっているのかというのを、自分のとこのデータベースで窓口で確認できるようになっている区市町村もあります。

 遺跡地図への登録までの手続きに関しては区市町村からの進達方式でお願いしています。基本的にはそれを担当者間で確認をして問題がなければ、決裁をとって随時更新していく形をとっています。公報等は出していません。

 広島県では、周知の方法は一つに限定してないというか、あまり体系化されてないというのが実際のところかもしれませんけれども、県が発行する遺跡地図は昭和の頃、5万分の1地形図をベースにしていたものを、平成一桁から10年代にかけて、2万5千分の1地形図(遺跡の密集する地域は5,000分の1都市計画図)をベースにしたものに改訂し、さらに 平成23年度に新発見の包蔵地を追加して、 紙での地図で出していたものを PDF形式に置き換えて ウェブに掲載するという改訂をして出しました。その2回改訂を経験しているんですけれども、改訂の時の基本の方針は、その改訂に伴って新たな遺跡を探すことはせず、それまでに県や市町村等が把握しているもの周知しているものをプロットするという考えでした。それは一つには、文化財保護法第93条第1項にいう「 埋蔵文化財を包蔵する土地として周知されている土地」、昭和50年文化庁次長通達にいう「従来行ってきた(中略)措置」によって既に周知されているものを地図上にプロットしていくんだという、文化財保護法第95条において求められた措置を忠実に実行する 意味合いだろうなと。それとももう一つは、市町村と都道府県の役割分担を定めた平成10年文化庁次長通知の中で、市町村の役割は埋蔵文化財包蔵地の把握で、都道府県は範囲決定っていうのがあったんで、把握した情報は市町村のほうから提供していただき、それを県点検でして範囲を決定し、その結果を遺跡地図に掲載するということを都道府県の役割としてやったということです。その後平成16年度以降、体制が整っている市町村に対し、文化財保護法第92条から94条、96条及び97条の事務処理権限を県内23市町のうちの12市町に移譲しているんですけれども、それに伴ってどの範囲を法93条・94条に基づく届出・通知を出させるかとかいうところの決定権も実質的に権限移譲先市町に移っているとしています。だから、当該権限移譲先市町も試掘調査・分布調査をして、新たに確認した埋蔵文化財包蔵地を市町が自ら作成する遺跡地図にプロットしたり、その場所における土木工事等に対して法 第93条・94条に基づく届出・通知を出させたりしています。その他、県教育委員会が行っている周知方法としては、開発事業に伴って事前協議をいただいた時に、分布調査・試掘調査をして、その結果として確認した埋蔵文化財包蔵地の有無を回答する。あるいは過去に周知されていた包蔵地でも多くは点(ドット)で記載されているので、範囲の境界線がどこかを決定して、協議相手に文書で回答するのも周知行為の一つだと位置付けています。あとは、試掘調査の報告書を試掘の翌年度には出すようにして、その報告書の中で試掘の結果、確定した包蔵地の範囲を図で示し、それも全国の教育委員会や公共の図書館等に配ったり、県庁のホームページにPDFデータを掲載するということも周知行為の一つとして行っています。

高田 権限委譲するときに、広島県と市町村として、周知っていう定義、考え方というのは基準として定めたりしているんですか。

 そこまでは決めてないですね。文化財保護法の現・第95条の条文が制定された昭和50年に、文化庁次長から出されている「文化財保護法の一部を改正する法律等の施行について」という通達を見ても、「埋蔵文化財包蔵地の周知の徹底のための措置は、文化庁及び各地方公共団体において分布調査の実施、遺跡台帳の作成、遺跡地図の作成・配布等を行ってきたが、本条にいう資料の整備その他の措置は従来行ってきたこれらの措置全体を示すものであ」ると書いてあるので、例として文化庁次長通達に示されている分布調査結果回答や遺跡地図刊行等がありますよ、ということで、特に県でも定義を定めるようなことはしませんでした。

デジタル時代の周知

高田 そうすると、周知については法律的に細かい定義はないということを確認したと思いますけど、これは法律に逆にがちがちに書き込みすぎると、将来身動きがとれなくなるので、そういった意味でふわっとしているっていうのはメリットというか、行政の裁量部分になるかなと思います。一方で、行政の裁量部分として、先ほど楠さんが、争いになったときに耐えられるかとおっしゃいましたけども、そうすると、行政として今の時代にどうあるべきかという基本的な考え方を整理、確認した方がいいと思います。今のデジタル時代においての周知ってどうするのがいいと思いますか。

野口舞 先に言った、遺跡地図を出している側からすると、公開しないデメリットはあまりないと思います。

 遺跡と埋蔵文化財包蔵地の差っていうか、埋蔵文化財包蔵地って区画になっているけれど、遺跡は、実はその外にも広がっていて、専門家からすると地形などで判断して、包蔵地外にも多分遺跡はあるのだけど、今まで線が引けてないだけの状態であることが頭の中には入っているわけですよね。それが一般には可視化されていないので、包蔵地外の線の引いてないところは届け出義務もないため、発掘調査はない、大丈夫だと買いたい人、開発したい人が判断して、それで遺跡が出てしまうっていうことはあるんですよね。

これは遺跡地図をどういう形で出してもおなじ状況となるので、窓口の市町村からするとできれば相談してほしいっていうのがあります。そのため、区市町村の中では包蔵地の何メートル以内の開発は窓口に来てくださいとホームページ上に注意書きをしたり、内規を作るなど、何かしら注意喚起しているところがあります。そこまでに見える状況にしておかないと、東京という土地柄、とても開発の件数が多いので、たぶん全部電話照会でやりとりしていたら、なかなか業務が回らないのではないかなと思うので、ある程度業者さんなりに判断してもらって窓口に行くことは、役所でも都民にもメリットがあります。

 私自身が東京都に入庁したのが平成26年なので、遺跡地図が紙で窓口に行かないと見られないっていう状況では仕事していないっていうのもあるかもしれないです。

包蔵地外への対応

国武 実際のところ、市の遺跡調査、窓口対応の実務で、今みなさんがおっしゃったように私たち心配するわけですけど、包蔵地の外だから届け出不要であるはずなので工事をしたら、遺跡発見まで行かなくても遺跡に引っかかりそうだったとか、そういった事例っていうか頻度はぐらいあるもんなんですか。

 私の経験上ですが、全くないっていうことはないですが、そんな話をしてきてくれることは本当に少ないです。私、20年やっていますけども、やっぱり相手がびっくりして、どうしようかって連絡くれるのは1年に1回あるかないぐらい。石室を直接ガバッと切って中から骨が出てきたとか、業者さんの方が、もう違う意味で怖くなってしまってとかで、何とかしてくれとかいう話ですね(笑)。あとは、松山市なので、松山城関係ですね。例えば、城の周辺の近代以降の開発が著しくて、包蔵地の規制がかけられてないところとかで、例えば、松山城近くの家老屋敷とかで、たまたま石垣の一部が地下に残っていて、掘ったらその石垣に直接ゴンって当たって、大きい石材がゴロゴロ出てきて、これはもう進められないからどうしていいか教えてみたいな。そんなふうに業者さんが本当に困ってしまえば相談があるんですが、例えば、工事中に焼き物の破片が出てきても、現代の攪乱の遺物と、我々の考古遺物っていっている古い時代のものとの区別っていうのが、現場の業者さんに判断できるかと言われたら、現実的にやっぱり出来ないのは間違いないと思いますし、工事では大きいバックホーで掘っていくのが普通ですので、普通の遺構とかも基本的に認識できないと思うんです。現実的には包蔵地外というのはそういうものであると、それでも規制をかけたいのであれば、私どもとしてはやっぱり包蔵地の線を引き直すしかない、と思っています。包蔵地の外だけど隣接しているからとか、バッファーゾーンだからとかで試掘への協力を依頼するって、法律のどこに書いてあるの、という認識です。松山市でも、これまで包蔵地外での工事や遺跡の把握について相当悩んできたんですけども、それを言うんやったら自分達で包蔵地の線を変えなきゃいけない、というのが、松山市の今たどり着いている結論です。

国武 仲林さん、どうでした?境界線の問題とか。

仲林 一件補足でいうと、城陽市は周知の埋蔵文化財包蔵地の紙地図は一応販売しているので、それは周知手段として行っています。主に前職の東大阪市の話なんですけど、東大阪市は市の統合型GISと、文化財独自の遺跡地図システムを開発していまして、窓口に来たら包蔵地に入っているかどうかが見られる。そのシステムのシェイプファイルは位置情報のポリゴンデータは統合型GISと連携してウェブでも公開しているというところです。これに関してのメリットデメリットに関して、デメリットというのは基本的にないんです。かといってどんなメリットがあるかと言われると、問い合わせが減るという効果も当初は期待されていたんですけれども、行政が土地の途中の情報を調べるっていうのは、やっぱり行政の作業者さんが回らないといけないので、結局は窓口に来る方が早いということです。あんまり業務の省力化、メリットっていうのは、私がいた時点はそんなになかったです。あと包蔵地外の話なんですけど、一つはそんなに明確に一回通り、すぱっと分かれてるようなところで、隣で開発したいという相談は割とよくあります。それは地図自体が5000分の1とか、ある程度の縮尺でしか見えないような設計にしていて、インターネット上で見れないということもあって、一応念のため確認に来るというようなこともあります。もしくは、そのほかの申請で回ってくる時に、例えば、開発するとかで各課の意見聞くときに、包蔵地に入っていないけど、隣接している土地にあるので、ここの下に埋蔵文化財がないとは誰も言い切れないので、もし心配でしたら、公費で試掘しますよというような形で拾っていたというところですね。一方で、包蔵地のラインがきれいに分かれたらいいんですけど、拡大するとどうも一つの区画の宅地を切るような形で線を引いているというのがあって、そういうのは、全て包蔵地の地図ができた時点で、当時担当の人がぐるっと線を引いたとか、そういうことに由来する問題なんですけれど、それも名目として遺構というか、法学的な言葉での遺跡の想定ラインもここで引いているというような説明にはなるんですね。ただ、そうしてしまうと、その事業者からすると、自分の土地のここは入ってて、こっち側に建物を建てないから届け出はいらないね。という考えを起こすもとになってしまうので、あまり運用上有力じゃないのかなというように感じています。そういう場合も包蔵地でその線、あくまでも線は想定のラインなので、届出を出すようにしてくださいというような形で指導はしておりました。

国武 じゃあ、意外にというか、インターネット公開、東京都さんも広く、京都府さんもされてますよね。広くネット公開しても、デメリットはそれほど心配したほど大きくないって感じですか。

仲林 苦情電話が来たってことはあります。

野口舞 知らない間に包蔵地になったっていう苦情もあるのです。現在だと、その時の土地の所有者さんには、発見届けを出してもらうことで、そこからスタートして、包蔵地搭載、遺跡地図の公開までするので、その人にとっては周知の状況になるんですけど、その後売買があったのか、相続が発生して、知らなかったというようなことはたまにあります。それ以前の登載で知らない間に線が引かれていたなんてことを言われることがありますが、公表しておかないことにはそれすらわからないと思います。

国武 所有者が変わるごとにお知らせすることはできないわけですからね。

野口舞 お知らせする義務はありません。ただ、手続きを踏んで遺跡地図に載せていますので、内部処理的に問題はないと思います。

 おそらく東京都の場合は96条97条が取扱い根拠、スタートになるケースが非常に多いっていうところも関係しているんだと思うんですよ。全国で96条97条をスタートにしている自治体ってそんなに多くないと思います。

野口舞 分布調査をほぼやっていない状況です。まず狭く、人口が多くて、常に何かしらの開発があることが多いので、誰か主体者がいて試掘なり、立会いなりという開発に関わる発掘調査がスタートになっていることが多いです。たぶん、それは分布調査スタートとはちょっと状況が違うというところだと思います。

遺跡地図の高精度化

 遺跡地図の精度をどこまで高めるのがいいのかっていうのは、都道府県の担当者会議とか、公立埋文センターのブロック会議などで繰り返し話題に出てきたんですね。私の聞く限りでは、都道府県はわりと高精度化に前向きなんですけれども、市町村の担当の方からは慎重な意見を多く耳にします。その理由を詳しく聞くと、あまり高精度の遺跡地図を作ってしまうと、埋蔵文化財包蔵地の境界線が明瞭に地図上に見えてしまって、そこから外の土地は包蔵地じゃないから、協議も何もなしで工事にかかっても問題ないでしょうと開発事業者等に判断されてしまって、事前協議をいただけなくなってしまって、工事中の不時発見に忙殺されたり、あるいは人知れずどんどん遺跡が破壊され消滅したりするのではないかという事を危惧する意見がよく聞かれるんですね。どちらかというと、市町村とすれば包蔵地の及ぶ範囲、境界線を明示せず ドットで表示しといて、ドットに近いから協議してくれという方が言いやすいといっているところもあるし、市町村が作っている遺跡地図の中で、その包蔵地のエリアと別に遺跡の有無を確認する必要があるエリアを地図上に示して、そこは事前協議してくださいねっていうのを積極的に持ちかける。ものすごい山奥の急傾斜の斜面とかで、埋蔵文化財ありそうじゃない、不時発見の可能性も考えにくいってところは事前協議はことさらに求めないけど、他の開発許認可事務との関係でどうしても埋蔵文化財の有無を明確に記したものを手に入れる必要がある開発事業者等は事前協議をしてくるし、環境アセス等で開発計画を把握できるから、そこで必要な対応ができるんですって言う市町村もあるんですよね。遺跡地図情報をウェブで出すことの問題点として私が思うのは、埋蔵文化財包蔵地として明示されている範囲内については、その後の対応は法的な扱いにのっかっていくので開発事業者と話し合いが進められるけれども、その外側の部分をどう扱うかっていうところが自治体によってばらばらになっているので、奈文研が考えている全国の一個のシステムの中にそういった対応の扱いをうまく表現できるかが難しいという気がします。

仲林 今の話って、担当者としてはよく理解できる話なんですけど、法律の専門の方、もしくは一般的な方が、線を引いたとして、包蔵地になってないところに埋蔵文化財が見つかる可能性があることを危惧する意味が多分わからないと言うか。

 そこは、遺跡が壊れると悲しいという、法令や規則などでは割り切れない担当者の気持ちとかにかかってくるんですよね。

仲林 単純にいうと、じゃあそこも包蔵地にしたらいい・そこも包蔵地じゃないの?っていうところなんですけど、その辺りの世間の受け止め方と担当者とのギャップというか。保護法という法律で見た時ももちろんそうですし。

遺跡地図は個人情報にあたらない

高田 範囲の話が入ってきたのですが、一旦周知の話を片付けたいと思います。周知について、リストにも書いてあるんですが、まだ基本的な確認として担当者の方にもよるんですけれど、例えば遺跡地図は個人情報だから公開しないとか、プライバシー侵害になるという意見を持ってる人もいると思うんですけど、これは当たらないと考えてよいでしょうかね。

野口舞 個人情報とはなにか、ということだと思うんですけど、遺跡地図は個人情報にはあたらないと思ってます。

 土地は特定するものかもしれないですけれども、個人を特定するものではない。だから全く当たらないっていうのが私の理解です。

高田 周知のところのまとめとして、95条で周知しないといけないとありますので、手段はともかくとして、みんながアクセスできるということにしないといけないのかなというのが、総論的なまとめとしてよろしいですか。

行政としての情報公開

国武 この問題で、さっきの個人情報であるのかそうじゃないのか、もう一つ、冒頭に出てきた発掘調査経費の8割控除という形で財産権というか、財産の評価を、明確に価値を下げるものですよね。なので、それについて行政が特に許可なく公開することについて、法律的な問題を心配していらっしゃる方がいると思うんですよね。ましてや、それを関係ない研究所が公開することに関しても含めてですね。その辺はどうなんでしょうね。皆さんどうお考えなのか、そこを知りたいですね。

野口淳 土地の評価に関わることで言えば、文化財だけが禁ずるというのはなにか、むしろ不思議な感じがします。ハザードマップとか各種特定情報などは、むしろ公開しないといけないものですので、不動産取引においては、埋蔵文化財が土地に付随する瑕疵としても明記されていて、地中障害とか土壌汚染と同じカテゴリーになっていますので、それらは公開されているのに文化財だけど公開しないというのは、論理的には成り立たないかなという感じはしますね。

国武 土地所有者の承諾なく自治体が公開をすると。その浸水域の公開と同じような観点で公開するということなんでしょうか。例えばどうなんでしょう。ダイオキシンで汚染されている範囲を、例えば東京都とか江東区とかで公開しているのはどうでしょう。住宅地も含めて。

野口舞 どこまでやっているんですかね。汚染土って調査しないと出てこない。なので、実際、建て替えがあるとか、そういう時に調査して初めて分かることが多いんだと思うんですよ。だから、例えば新たにこの土地を売り出しましょうみたいな形があって、そこを汚染土調査かけると、そこで何がどのぐらいあってっていうふうな情報が出れば、恐らくそれは、皆様に公開するか別にして売買する時の条件にのっけないとフェアじゃない。

国武 例えば全く架空の話ですが。東京のとある市でかつて大きな工場がありましたと。そこの工場が売却になって宅地開発を行いますと。その時はそういう話になると思うんですね。その時に環境の部局が土壌汚染の調査が入りましたと。東京都でもいいですけど。その時にこの工場ではこういった薬剤を使っていて、何年間ちょっと排水処理が十分ではなかった結果、工場敷地では何%の通常基準値の何百倍のナントカがありますと。この範囲は周辺の公園とか排水とか雨水とかを調べた結果、例えばこの周辺の住宅地も含めて、この範囲で汚染範囲がわかりましたっていう場合って、例えば東京都とかあるいはその市はそれを公開するものなのかな、どうなんでしょう。聞かれても分かんないかもしれませんけど。それと同じような感じがしませんか。土壌汚染なので。埋蔵文化財包蔵地わかりました。ここに縄文の集落ありますと。これは今回の売買するこの区画の範囲を広がって、地形から見ても文化財専門家の観点からいくつかの試掘データからこの範囲で縄文中期の集落がありますよと。そうなった時に、これを了解なくポンと公開する。それは、土壌汚染で何か事件問題が発生した時に調査したら、既存の宅地の範囲にこんなに広がっていますと。例えば、外環のトンネル工事で陥没しましたよね。あの時に陥没したのに、更なる陥没の範囲はこの範囲ですとか、あれはまさに不動産価格に大規模な影響を与えるじゃないですか。ああいうのは行政が公開してもよいか。

野口淳 行政も公開していますよね。

野口舞 外環道の線形は公開されていて、陥没する前から、注意喚起として出しているわけではないので、それとはちょっと話が違っていると思うんですけれども。

国武 土壌汚染の範囲が仮に調査でわかった時に、それを当該の市が許可なく、了解なく公開するものなのか、あるいはそういうデータを集めている筑波の環境研究所とかが、全国の土壌汚染マップみたいなものをGISで公開していいものなのか。その辺がちょっと心配ですね。我々が新規の埋蔵文化財包蔵地も含めて最新版をバンバンと一つの箱に入れ始めた時に、法律上なにか問題があるとしたら、その土壌汚染なのかなと。どうだろう。

野口淳 国武さんのご指摘ですごく気になるのは、誰にとっての利益不利益なのかって話した時に売り主のことしか語っていないので、取引においては買い主側にも当然利益不利益が発生するのと、それに伴う瑕疵担保をどちらが責任を負うのかということがありますので、そういう意味では公開するしないという判断をすることに、むしろ中立性が損なわれるような気がする。

国武 公開しないことによって。

野口淳 そうですね。

 おっしゃった点は、松山市が今から15年ぐらい前に本格的に包蔵地の改訂を始めようとしたときに、庁内のすごく大きな抵抗がありまして、地元説明会しろとかですね。だけど、文化保護法というものが指している周知の埋蔵文化財包蔵地って、狭義というか厳密に法律を読めば、文化財があるかないかだけを問題にしているんです。だから、そこに地元の人が説明会で合意したか、してないかは、全く法律では問われてないです。あくまで極めて事務的で、そこに遺跡があると判断できた場合、その時点で包蔵地ですし、ないと判断できれた場合は包蔵地ではない、そういう性質のものなんです。土壌汚染とかとはちょっと違うところあるのかもしれないんですけど、そういう性質のものであるということと、今おっしゃったように売り主が文句を言うかもしれないけど、買う主の権利はどうなるのかって話の中で、当時3~4年くらい、話が止まっていたんですけども、新任の教育長がそのあたりの説明を聞いてくれた時に、なるほどと納得してくれて、彼が専決してくれるようになったからスタートできました。ですから、埋蔵文化財包蔵地の改訂に当たっては、地元の意見を反映させるような性質のものではないということで、地元説明会は開催しない代わりに、やっぱり95条でいう周知の徹底を受けて、地元に限定せずに市民に広く周知を図ることこそ、松山市というか行政はやるべきなんだ、また、それこそがまさにおっしゃった中立である、と考えています。また、埋蔵文化財はある面では瑕疵のように捉えられているんでしょうが、国民の共有の財産でもありますので、そういう意味で「原因者負担」という言葉を使うべきではないと思うのですが、その意味でも、やはり積極的に周知しないといけない、というのが、松山市の今たどり着いている結論です。これをどう思われるのか、ぜひ皆さんの御意見をお聞きしたいところです。

野口淳 時間がないので、後でまた調べて共有したいと思います。今サクっと検索したところ、環境省の土壌汚染対策法ガイドラインというページを見ると、いろいろと細かなデータが出ていて、どういう調査をして、措置区域というのはどう判断するか、全部明示化されているものなんですね。結果が出たら、この範囲は措置区域になりますみたいな。それはサンプル採取した場所だけじゃなくて、それぞれによってこういう条件の時はこの範囲みたいな感じで指定されている。じゃあ、逆に出す出さないを担当者が判断するということではなくて、基準に達したら出すということなのかなと。

 土壌汚染とか自然災害のハザードマップと埋蔵文化財とで違うのは、その場所に住んでいる方の安全とか健康にどのくらいの影響が及ぶかっていうところが大きいと思うんですね。土壌汚染や自然災害の情報については、把握した情報を周知して生じる不動産価値下落等のデメリットよりも、 住んでいる人の生命や健康を守ることが優先される という観点があると思います。ただ実際の問題として勝手に知らぬ間に周知されると困るみたいな話も出てくるから、地元説明会みたいなのをやったりとか、何かのきっかけがないと積極的に周知できないということはあるかもしれません 。広島県でハザードマップがかなり広く周知されるきっかけになったのは、近年の土砂災害頻発だと思います。そういう、把握した情報を周知して生じる不動産価値下落等のデメリットよりも、住んでいる人の生命や健康が危険にさらされる デメリットが大きいと、積極的に周知すべきだという方が勝るのだろうと思われます。そこが埋蔵文化財の場合、法律上は壊しても罰則がないし、埋蔵文化財包蔵地が壊れること自体は住民の生命や財産に危険が及ばないっていう点でデメリットの説明が弱いと思うんです。ただ、発掘調査の費用負担が住民の範囲だとかいって判例ではかなり認められていて、実際行政指導なのに皆さん言うことを聞いていただいている。そういったところの何を重視して打ち出すのかというところが、その法律上の問題と運用上の問題とか、違ってくるような気がするんですよね。

奈文研による遺跡情報の公開

高田 さっきの国武さんの問いは2つある。1つ目の不具合情報を公開するっていうのは、紙の時代からと基本的に一緒だと思うので、考え方としては紙・デジタル関係なく従来の運用が踏襲されるのかなと。むしろ、2つ目の問いとして、奈文研として懸念するのは第三者による公開ですね。我々第三者がそういう情報を載せて、トラブルにならないのか?リスクがありますので、そこは法的に押さえた方がいいかなと思います。

国武 例えば、京都府の府市統合システムがありますでしょう。東京都も同じような仕組みがある。府中市はものすごい細かいデータを持っているけど、東京都の地図にはそこまで細かくないっていない。

野口舞 区市町村とは東京都の遺跡地図が正としています。それより細かいものは現場で運用というのが状況です。区市町村によっては、例えば街区全域を照合の範囲にしているってところもありますし、今の遺跡地図だと単純に包蔵地を知らしているだけなので、詳細に詰めて出しているところもあるという状況です。

国武 さっきの高田さんの心配なんですけど、城陽市は自分で持っていて同じものが府市統合システムにありますと。詳しい話は府中市と同じように窓口でやってあげないといけないわけですけど、これを例えば、もうその仕組みは変わらないわけですよね、当然。変わらないんだけど、同じ情報が府市統合システムが市と同じでしょ。それが仮に奈文研になった時に、例えば①何か行政法律上引っかかりそうな懸念点があるか、②行政実務上引っかかりそうな懸念点があるか、③特に気にならないのか、この3つで言うとどれだと思いますか?

仲林 まず前提として、公開するにあたって免責事項がありますよね。これは何かを証明するものではありませんと。そのうえで、まず何をしたら逆に市民に損害を与えるとか、何か市民に不利益かっていうのをまず考えるべきだと思うんですけど、それを正直思いつかないですね。法的な観点から、ちょっと深く下げることはできるかもしれないけどね。実務上あるとしたら、こっちが渡したデータと違う形で改訂されたりとか、そういうことになってしまうと、それは法的というよりかは単純なトラブルになるかなっていう、そういうところですかね。

高田 むしろ、今古いので、最新化しないとトラブルリスクが上がってきている。

国武 それは一番文化庁が心配しているとこだよね。

 愛媛県の場合は、基本的に各市町村が情報を公開しています。GISは松山市も当然持っていますけど、最近見直した包蔵地は大丈夫なんですけど、古い包蔵地は紙の台帳しかなくて、GISの能力に対応しきれないということで、松山市はPDFで公開しています。その場合でも、松山市しか情報を公開していないので、松山市内でなにかすると松山市に聞かなあかん、というふうに市民の方は思っているわけです。それが2つ3つ4つっていうふうに公開先が増えると、情報が全部多分ずれるんですよね。タイムラグが発生する。どこかの県で実際にそのことでトラブルになったという話を聞いたことがありますし、実務上かなり起こると思うんです。また、2ヶ所で公開するとその2ヶ所のデータが、3ヶ所で公開すると3ヶ所のデータが、同期しているかどうかをチェックをしなきゃいけなくなりますよね。そして、違っていた場合は、どれが正しいんだって話になって。だから私は公開するなら1ヶ所がいいと基本的に思っていて、愛媛県はだから逆に公開しないのかも、と前向きに捉えているんですけど、そういう考え方もひとつありなのかなと。だから、本当にいずれはですけど、奈文研で公開されるんやったら、もう全部集約して奈文研だけで公開するくらいが理想なんじゃないか、と個人的には思っています。

野口淳 完全に法律の話からはずれていると思うんですけど、テクニカルな問題として今デジタルでの、オンラインの公開の話をしている前提でお話ししていますけども、デジタルデータというのは基本的に複製をするだけなら全く同等のものになります。ずれるということがないわけだもんね。あとは版の管理というか、いつの時点の情報をどのように公開しているのかということを明示すれば、例えば奈文研で公開しているものは1年前のデータですからということで、この件については解決できることであって、そこは法的な瑕疵の問題ではなくて、仲林さんもおっしゃったように、免責事項として奈文研のデータというのはいつのものでありますとか、精度はこういうレベルのものでありますということなのかなとは思うんですよね。例えば東京都もそうですし、静岡県のほうもなんですけど、県のWEB公開の地図データって、実はズームレベルが制限されているんですよね。東京都は16まで、静岡はもっと厳しくて13か14までしか見られなくてね。ただ、静岡は不思議なのはシェイプファイルをダウンロードできるので、自分で見たらもっと細かく見られちゃうんですけど。それはまぁ置いときまして、そこを明示していくということで、回避はできる。我が社ではここまでの精度、ここまでの縮尺でしか出しませんと。もっと知りたい人は、松山市、城陽市に問い合わせくださいと。

 そういうかわし方もあるということですね。

野口淳 そうですね。

野口舞 100%勝手な想像なんですけど、奈文研さんに問い合わせが増えちゃうかもしれない(笑い)。

高田 来ても答えられないので、そのまま所管にご案内します。

仲林 免責事項があるので、各市町村に届けて聞いてくださいって。

情報公開による窓口照会件数の減少

野口淳 追加情報で東京都の方でメリットの方が大きいという話があったと思うんですよね。窓口の照会件数が減ると。実は福岡市さんも同じことを言っていて、福岡市も圧倒的にその窓口に来る量のフィルターになっていて、それがなければ業務回らない。恐らくどこかでデータを取ると、年間の照会件数何件以上だと効果が出るとか、それ以下だとマニュアルな手続でも対応できるみたいな、基準みたいなのが出てくると。そうすると画一的にやるのではなくて、こういうレベルのところはできるだけ公開すると。公開にあたってどういう問題があるかを整理して対応するっていうのがひとつ目だと思います。もうひとつは、どこまで出すかなんですけども、今度の奈文研の研究報告にも原稿書いていただいているんですけど、埼玉県ふじみ野市さんが全国で一番細かく出されていて、試掘・立ち会い、それから調査なし判断まで全部出している。範囲外のとこにも色塗りがしてあって、それは何かというと、その調査しないという判断をしました、この区画は。それをもう10年以上公開運用していて、この前お伺いしたらクレーム0で、メリットはやはり窓口に至るまでのプロセスが非常に効率化されるということと、担当者間での情報の引き継ぎ。30年選手から新人に伝えるときにもこれを見るというので、効果があるということはおっしゃっていた。

 私も全く同感です。

情報の一本化

国武 都道府県の立場、権限がやはり委譲されているにしても、いわゆる包蔵地決定からこの全ての根源がここじゃないですか、包蔵地の運用じゃないですか。これが奈文研で集めさせてもらった時に、私のイメージは京都府みたいな同じのが重箱的にあって、さほど行政的に重要視されないというイメージが一番現実的かなと思ったんですけど、楠さんのお話をお伺いすると、それはちょっといろいろあるんで、一本のほうが合理的で確かに一番合理的です。その時に楠さんのような方向性が仮にあった時に、権限を持っている都県のご担当としてどうですか?そういうことは受け入れていただけるものなんですか。つまり、物理的なプラットフォームだけ奈文研を利用していただいて、もちろん行政上の権限、法上の権限は県の文化財のご担当にあるわけですけども、そういうその辺の分離というのか公開と権限が分かれるわけですけれども、私達は別に権限を持とうなんて全く思っていなくて、どう合理化すればいいっていうレベルの発想なんですよね。それは受け入れていただけるものなんでしょうか、どうでしょうか。

沖 都道府県は埋蔵文化財包蔵地の範囲の決定権は持っているけれども、周知の権限を独占しているわけではない。文化財保護法第 95条では、国と地方公共団体、つまり都道府県も市町村も等しく周知の徹底に努めなければならないとされているので、県は県としての役割を果たす。市町村は市町村としての役割を果たすことになると思うんですね。そういう点で住民の方に一番近い市町村が周知の役割を一手に担うという役割を担うのは正しい考えだろうと思うんですね。やっぱり私が思うのが、奈文研が出しているものと都道府県が出しているものと市町村が出しているものとで、改訂のタイムラグができて埋蔵文化財包蔵地の範囲が違うよってなった時にどれが正しいのかっていうところが混乱するのが心配です。免責事項にいろいろ書いてあったとしても、見ない人も多いし、ウェブは紙媒体に比べて更新の頻度を上げることも容易なので、作成機関の間の情報更新タイムラグをどうやって埋めていくかでしょう。そうなったときに一つの解決法として奈文研で全部集約してやっていくっていう方法もあるし、市町村のほうに集約して、例えば奈文研ではどこそこ市はどのホームページにジャンプしたら、一番詳しい最新の情報を見られるかの照会に徹する役割もひとつだと思うんですね。あと、遺跡の位置や範囲等の情報をどれくらい詳しく出せるかでも、やっぱりこれまでも各自治体にあったような積み重ねだと思って、細かくやっているところは出せる。多分理想形だと思います。けれども、全部の自治体がそれをいきなりできるかというとできないんで、そこのばらつきをどこで調整して1個にするかなんですよね。県で出しているのは、ばらつきの底上げのためって、どんどんできる人はどうぞやってください。だけど、担当者が誰もいなくて、誰も周知しない、周知の実務を担う担当者がいない市町村もあるので、むしろ体制不備の市町村のために県は一定の精度で地図を出しているんですよっていう感想です。

仲林 現実問題として、市区町村が埋蔵文化財包蔵地の地図をインターネットで公開する目的って、もろもろの行政手続きの情報はワンストップになる面が大きい。要は、東大阪市もそうですけど、統合型GISをインターネットで公開しますと。その時に提供できるデータはないですかっていう。それは文化財として、じゃあ出します出しませんという判断になることがあって、仮にどこか一つのところに包蔵地のデータが統合されて、そういう取り組みにしてしまうと、極端な話例えば市の行政に必要な位置情報は、すべてここのシステムに埋蔵文化財以外ここで見られるっていうような状況になってしまうと、それはそれで多分難しいことじゃないかなと。

 広島県庁は埋蔵文化財の位置情報が入った統合型GISがないんですよ。平成10年代に県の中で統合型GIS を導入して、その中に埋蔵文化財包蔵地の情報も入れるかという議論もあったんですけども、システムの導入自体が実現しませんでした。市町村合併や権限移譲が進んで市町村が能力をかなり備えるようになってくると、住民サービスに資する情報提供のシステムも市町村で整備されるはずなので、県が機能の重複するシステムを別に持つ必要は乏しいんじゃかっていう意見が出たりして、県の統合型GIS導入がなくなったんですね。その後、市町村への権限移譲で埋蔵文化財包蔵地の範囲決定権も一部市町に移りましたから、県が遺跡地図情報を一元管理する理屈の整理が 難しい感じになっています。

仲林 都道府県単位でいうと、GISというか、市町単位の方が事業者側からすると使いやすいし、実際どうなんですか。統合型GISをやってない市とかって。

野口舞 市町村のほうが進めてますよね。

データとプラットフォームの話は違う

野口淳 いわゆるガバクラっていうのを政府が本気で推進する方向にある以上は、統合型GISを今運用してなくてもすることになるだろうというのはひとつあると思う。あと、今のお話を聞いてちょっと気になったのは、データの話とプラットフォームの話がごっちゃになっている気がしています。いわゆるガバメントクラウドのコンセプトの中で文化財担当部局がやることは、どのようなフォーマット、どのようなプラットフォームで遺跡地図を公開するかではなくて遺跡地図のデータを整備してしかるべき、どのプラットフォームでも表示できるように準備しておくことっていうところに多分シフトするんだろうなと。今かなり法律の話からずれているけど、そうなってくると今の議論が出て、それを市町村が責任を持ってやるのか、市町村はさらに基礎データを整備した上で、地理空間情報として整備するのは都道府県でやるのかというあたりが次の論点なのかなという気はしています。

 どこかがやらなきゃいけないことは間違いないですし、その点については皆さんも合意されているということですよね。周知しなくてといいという話にはならない。頭の中がとても整理されました。ありがとうございます。

野口淳 今は、平成10年通知もあるので文化庁は都道府県がそういうの所管すると、そうなっていますけれども、仮にその広域の空間情報を一定の精度で整備するということが都道府県でも難しい。研究所のような機能を持っているところでないと難しいというような判断が生じた場合には、今の奈文研のシステムっていうのは基盤になりうるという気がします。各市町村や都道府県であるレベルのデータを整理したら、それをきれいにして、そして同じ水準に整えて公開するのが奈文研の機能というような未来はあるかもしれないなとは思います。

国武 位置づけとしては、今全然アイデアがないところからの話だったんですけども、今の沖さんの話やお三方の話に、もしこちらで何かそういう全体を示すものがあるとしたら、やっぱり市の普及、周知化の強化につながるような。おそらくラインとしてはこっちですね。奈文研はGISもおそらくその周知化の強化支援というところでしょうかね。もし我々が位置づけられとしたらね。

野口淳 地図の整備とかデータの整備そのものにはコミットしない形ですね。

国武 みんな使っていただく、使わなくてもいいよ、たぶんバラバラだろうけど。

野口舞 都道府県ごとに遺跡地図をインターネットで載せてところ同士でも見せ方が違うので、ある程度共通のプラットフォームを奈文研さんに作ってもらうっていうのは一つの考え方なのかなと思います。また、東京都の遺跡地図があって、市町で独自に出している都市基盤整備地図みたいなものがあって、さらに奈文研さんのWebGISで3つできてしまう。免責事項がどんどん増えてくるような状況になるのをどうクリアしていくのかなというとこですね。

国武 我々の方でちょっとかなりはっきり意識しなきゃいけないね。そのやはり本来的には開発対応で再照会があるものなので、そのように使うために作っている。それは非常にものすごく厳密なものだから、それを受けて松山市さん、城陽市さんお願いしますって言えばいいっていう問題ではない。こっちに連絡してこないで、勝手に納得しちゃう業者さんもいるかもしれないね。僕らが何のために、これをやるかだよね。

 全国の地方自治体がもつデータを一元的にどこかで管理するっていうのは、地方分権のあり方から考えても難しいように思うんです。まあ、役所でできないので、奈文研がやるっていう考えはアリだと思うんですけども、なかなか難しいと思う。国の施策の中で考えるとしたら、やっぱり優良事例の紹介ってことになるから、それで文化庁が以前刊行した『埋蔵文化財保護行政におけるデジタル技術の導入について』の報告書などでも事例紹介がざっとついていたと思うんですね。我々が、どういうものを作ろうかってなったときに、やっぱり優良事例として奈文研がやっている事例。それをお手本に作っていくことになると思うんで、こういうのを作ると便利がいいよっていうものを1個のデータベースみたいのなのに入れておいて、それを市町村からも都道府県からも奈文研からも全部どこからでもアクセスして、ずっと改良していく議論もあるかなと言う気がするんですけども。

包蔵地の登録に事前承認は必要か?

高田 では次、範囲の話でいうとまず2つ。登録と範囲ですね。包蔵地の範囲を登録する際に、地権者に事前承認が要るのか要らないのか。その後、市町村でまとめて県で決定という流れだと思います。ですので、公に出てくる時には県で決定した後の情報がくるかなと思います。その辺のプロセスの確認と、あとは線の引き方、どう対応するかどうかとかいうのを確認しておきたいです。一つのプラットフォームに入ると、その辺の差が紙の時代より鮮明化してしまうというのがあるので、基本的な考え方、裁量の違いかもしれないんですが、それを議論してみたいなと思います。まず1つ目はその地権者の事前承認がいるかどうか、その辺りどうでしょうか。

 松山市の考え方は先ほどお伝えしたとおりです。そういう整理をしています。

野口舞 地権者には一応確認しています。文書を交わすことはありませんが、96条、97条の発見届を提出してもらうことで、包蔵地化につながっていますということをご説明しています。

 松山市では不時発見なんかは1年に1回出てくるかどうかって話で、基本的には包蔵地内しか試掘はしてなくて、包蔵地外で試掘をするのは公共事業だけです。それも、あくまでし庁内の関係課にお願いをして協力してもらって実施しています。

野口舞  東京都では、江戸遺跡の範囲があり、届出義務はないですが、窓口相談を依頼していることがあります。不時発見があると、業者さんも工事が止まってしまうよりは先に相談して、工事のスケジュール確定したいため、有効です。あとは区の方で内規があるため、開発者も慣れているから成り立っているんだろうなと思います。

仲林 協力ですよね、ほんとに。何もないですもんね、現物は。

 松山市でも、庁内の公共事業で、例えば道路とかには同じようなことをお願いしています。公共事業は、工事中に埋文が見つかって、万が一にも工事が途中で止まったら、民間以上に大変でしょ。それに、仮に試掘で埋文が確認されても、それはそれでちゃんと計算が立つし、最悪、繰り越しの理1由にもなるから、試掘に協力お願いしますって。

野口淳 公共事業の場合はですよね。江戸遺跡っていうのも漠然とではなくて、一応範囲を定めて、この範囲は江戸遺跡の範囲ですので、土木工事等を行う場合は頂戴する日にちを相談してください。だからその前半で話題になったようなバッファーゾーンのようなものとは違って、一応江戸遺跡という範囲は周知の埋蔵文化財包蔵地と別のカテゴリーとして明示はされている?

野口舞 明示はしています。『御府内沿革図書』等を中心に検討した『江戸復元図』をもとに朱引線の中と決めていて、その中はご相談範囲としています。もう一つは江戸時代なので、書籍を調べれば、この辺ってお屋敷跡なんだとかお寺があったんだというのが、わりと可視化された情報として出てくるので、ご協力を得やすいっていうのはあるのかもしれません。全く情報がない弥生時代の遺跡とかより、縄文時代の遺跡よりは納得してもらいやすいというのはあると思います。

 それを包蔵地にするってことはないんですか。

野口舞 そのあとの土地改変が大きいのとその履歴追い切れないというのもあるので、包蔵地には全部はしてないです。この範囲を包蔵地にしますっていう協議となった時に初めて包蔵地になります。江戸遺跡と包蔵地の二重になっているところもあります。

仲林 仮に江戸遺跡の範囲を何らかの方法で包蔵地にするってなった時に、そこに実際住んでいる人とか、住民の方向けに何か説明をするんですか。

野口舞 住民説明会はしません。開発者には、96条、97条出してもらっており、土地の所有者の承諾書もいただいているので、出した時点で試掘等々には協力してもらっている状況です。

仲林 それは多分どこも一緒だと思うんですけど、ただ違うのは、そういう相談範囲みたいなものは、定めている市町村っていうはおそらくない。単純化した質問なんですけど、その包蔵地としては扱ってない、また相談が必要な範囲を何らかの事情で埋蔵文化財包蔵地とするってなった時に、不時発見があったりそういうことは別にして、利害関係者に対して何らかその説明が必要になってくるものなのかなという素朴な疑問です。

野口舞 包蔵地にするときには説明はしていると思います。

仲林 それは、なぜ説明しているんですかっていう質問もありましたけど、それはあくまで行政責任としてやりますと総合的な判断。

野口舞 今、江戸遺跡の範囲っていうのは、朱引き線の中であるということで定めてますが、江戸時代が250年あって、明治時代以降も150年間あるので、どこでどう改変があって遺跡が残ってるのか残ってないのか、はっきりはわからない状況です。ですので、包蔵地化はせず、一歩引いた状態になって、注意喚起の話になっている。

仲林 注意喚起するエリアっていうのは、何か都の条例とか、区の条例とか文化財保護条例の中で?

野口舞 条例には載っていません。都要綱の範囲で江戸遺跡の範囲はここまでと定めています。平成10年通知の中で、調査する時代は概ね中世までとなっているんですけど、そうすると江戸の町全部が対象ではなくなるので、調査する時代設定の中で、まずは江戸時代と町の範囲を認めますというのがまず一つの段階。

 もう一つ包蔵地っていう考え方をした時に、長い時間の中で土地が改変されていって、遺構が残っているのか、把握しきれないものを全部包蔵地にするのは、住民の側からしても、行政側からしても負担が大きいため、ちょっと引いたものにしているところが一つあります。あとは、区市町村でも内規だったり、多分条例までもっていっているところないと思うんですけれども、注意喚起で、ここは出やすいところだから、まず区に相談してくださいって話をしていて、お願いベースの話で進めるって感じです。

高田 それは事前?事後ですか?

野口舞 遺跡の登録は、事後です。発掘して、江戸遺跡のまま終わるってパターンが多いんですけれど。96条97条が出て遺跡が残っていますっていうところが分かったところから、包蔵地にしているってことが多いです。

仲林 包蔵地っていうのは家1区画ごとってことですか?

野口舞 これまでの包蔵地は様々ですが、新規登録は、1区画ごとの方が多いです。隣の地権者のとこまで線が引ききれないと思います。今の考え方だと、遺跡があるかないか分からず、包蔵地にしきれない。

包蔵地の見直し

 そこなんですよね。私もすごく気になっています。包蔵地っていうものは、法律上は埋蔵文化財が地下に包蔵されていると知られている土地なんですけど、地下のことである以上、試掘履歴のない土地については、実際に埋蔵文化財があるかないかは、当然ながら掘ってみないと厳密には分からないんですよね。だから窓口で説明する時は埋蔵文化財が存在する可能性が高いっていう説明しかできないんですよね。実際、極端な例ですが、私どもが見直した包蔵地では、100回ほど試掘しても、流れ込みの遺物くらいで、一度も「埋文あり」と認定できなかった包蔵地もありました。そういう包蔵地って、試掘をしていても苦しい。なので、データが集まった段階で、そういう包蔵地を早くなくしたいというのも、包蔵地の見直しを始める大きな理由の1つでした。その包蔵地については、試掘履歴の少ない範囲があったりして、結局、面積を十分の一くらいに減らすところまでしかできなかったんですけど。一方で、道路とかで、包蔵地外で試掘をしたときに新たに埋文が確認されたような場合、例えば1ヶ所の試掘で埋文が確認されたけど、それを根拠にどこまでを包蔵地とするかって話も、周辺は掘ってないからやっぱり分からないんですよね。我々が全く想定しなかったけど試掘してみたら埋文が確認されたとか、当然あるわけですよね。そういうのを受けて、包蔵地を広げる範囲、狭くする範囲を考えるときに、松山市では、調査地点だけではなくて、高低差や水路等の地形をベースに、道路等に囲まれたワンブロックというのを1つの単位として考えています。なお、包蔵地内で試掘して埋文が確認されなかったところは、愛媛県内の運用は、「埋文なし」の試掘結果を添付して1回だけ93条の届出を行ってしまえば、実質的には包蔵地外なんです。その後は、包蔵地内であったとしても、届出を行う必要はないんです。次回も、最初の「埋文なし」の試掘結果を付けて県に届出を行う以上、県からの指示は前回と同じ「慎重工事」になりますので、届出の意味がないということで、県と相談して、その土地についてはもう届出を取らないということになったんです。だから、包蔵地の中でも、実際に埋文が確認されていない範囲や仮に試掘しても埋文が確認されないであろう範囲というのが、かなり含まれているんですね。最近見直した包蔵地ですら、その面積の何割かは試掘しても多分埋文は確認されないと思います。

野口舞 そこはもう地権者さんと納得いくまで話ししないとですけど、知らないうちに包蔵地になっているというのは責任の負える範囲ではない。基本的に、掘削を伴って、遺構、遺物が出たとこでないと包蔵地にしないっていう判断をとっている状況です。それは分布調査がないってこととおそらくリンクしている。

包蔵地以外の文化財情報がある文化財WebGIS

高田 奈文研のGISの場合、研究所なので研究的なデータが入っている。要は包蔵地じゃない遺跡とか文化財の情報がいっぱい入っている。ただ、包蔵地の範囲利用になってないっていうのがあるので許容できる。

野口舞 包蔵地じゃないのをどう載せるんでしょう?

高田 一般市民が見たときに、実は自分の近所にいっぱい遺跡としてある。色んなものが出ているけど、行政の方の地図見ると包蔵地になってないとか、逆のパターンもあると思います。

野口淳 そこは気をつけないと遺跡っていうのはまず何を示すか。今だから埋蔵文化財包蔵地の話が。

高田 学術的なものですね。

野口淳 埋蔵文化財包蔵地の中に内包される遺跡ですか、それとも文化財保護法でいうとこの埋蔵文化財に該当しない遺跡を指していますか。つまり文化財総覧Web GISなので、埋蔵以外の文化財が載っていても全く問題ないと。例えば今の話でいうと、近世の遺跡について行政は埋蔵文化財として認知しないけれども、そこに何かが埋まっているということはあり得ます。それから近現代はさらにありますよね。そういったものを指している理解でよろしいんですかね。これは私より皆さんがどうぞ。

国武 その場合、自分の家の周りにあって、自分の家にはない。

 ピンと来ないけれども、そこは印の色を変えるとか。

野口舞 近代遺跡のあるところは、やっぱり埋め立てが進むと、遺跡があるかわからない。けれど、開発があると遺構が出てくるっていうのがあって、包蔵地には載ってないから処理が難しい。例えば、奈文研では、そこにデータを落としておくと、ひとつ注意喚起にはなるのかなぁとは思います。行政で組成した遺跡の埋蔵文化財包蔵地とは別の、マークみたいなものにはなるのかなと思います。

国武 そういうのを集めようとしている。入っている?

高田 入っている。研究ベースでも。

国武 研究ベースでも入っているんだ。

野口淳 研究ベースもあるし、建造物として、例えば東京都内だと被服廠なんかは建造物としては登録されているけれども、埋蔵物の対象ではないというのはある。

高田 たとえば在野の方が先行的に山城を研究して、縄張り調査をしたりする。行政よりも城の認知が早かったりする。

国武 中にそういうことから中世以前でも研究者レベルの方が論文とかで分布図公開していて、行政がそれを包蔵地として拾っていない場合がある。それは別に近現代に限らないね。山城でもいいし、古墳でもいいよね。古墳がわかりやすいんじゃない?

野口淳 中世以前で多々あるのは隠滅している遺跡の扱いの可能性はある。

国武 行政側としては、それはあり得るよね。行政側が遺跡地図で拾い切れてないけど、古墳を見つけてない。

周知の埋蔵文化財包蔵地の範囲とは

仲林 文化財保護法の条文をそのまま読むと、包蔵地の地図に載ってようが、載っていまいが、そこに何か遺跡があるということで知られているのであれば周知されている解釈されそう。その辺はなかなか難しいよね。

野口淳 そこでは以前にも仲林さんとちょっと議論したことがあるんですけど、93条の方の周知されているが、自然に存在しているものなのか、というのが仲林さんはその学説を見つけて来ていただいて、でもよくよく考えてみると、その周知される主語は遺跡だけれども、周知する人がいないと周知されないよねと言うのは私、ちょっと非常に疑問に思って、そこは適用だから、試掘なり詳細なりあるいは文献調査なりっていう働きかけがあって初めて周知されるだろうと。果たしてこの93条の条文はどっちで読んだらいいのかがわからない。それは、今の高田さんのお話にもかかわってくると思う。というのは、私の解釈によるのであれば行政だろうが、民間の大学の研究者だろうが、何らかの働きかけを起こして文化財がそこに埋まっている、あるいは埋まっている蓋然性が高いというのを明示した時点で周知されている包蔵地になりますよね。あとは行政手続き上遺跡地図に載っているか載ってないかということですよね。

高田 結局周知になるんですね。素直に法律家がこの条文を読んだ時に素直な理解として、「周知」についてちょっと聞いてみたいです。

 93条の「周知の埋蔵文化財包蔵地」には、そこでの土木工事等に届出の義務を課しているんですよね。届出義務を課している以上、範囲を明示しないのはあり得ないと思うんですよ、やっぱり。確かに、日本語としての「周知の埋蔵文化財包蔵地」なら範囲があいまいでもいいかもしれないですけど、法律用語としての「周知の埋蔵文化財包蔵地」というのは、やっぱり範囲が絶対セットじゃないといけないと思うんです。ですから、包蔵地の外の遺跡のことを、僕もそうですし、考古学の研究者とかは心配するんだけど、それについては法律には書かれてないんですよね。そもそも届出が義務付けられている包蔵地の中ですら、届出漏れは一定数発生していると思うんです。実際、届出を忘れたところで罰則もないし、届出に対する県の指示だって行政指導だから、あくまで協力ですよね。届出者から文化財保護法第4条の協力の義務の範囲はここまでですって言われたら、それ以上の協力を求めることもできない。逆に言えば、極論ですが、包蔵地というものはその程度の規制なのだから、なったところで大きな影響ないはずっていう理屈も成り立つかもしれない。突き詰めていくと、やっぱり埋蔵文化財があるかどうかだけなんだな、色々な枝葉を落としていくと、そこしか残らんなっていうのが、何年間も私の中で考え、松山市の中でも議論してきた今のところの結論です。そこに住んでいる人だけじゃなくて、そこを将来買う人に対しても、それどころか市民全員に対して、とにかくそこは包蔵地なんだよ、貴重な埋蔵文化財が埋まっているだよってことを、しつこくしつこく周知して続けるということを、多分、この法律は求めているだろうっていうのが、私どもの結論なんです。それが本当に正しい解釈なのかどうかは、私どもにも分からないんですが、例えば研究者が遺跡があると言ったら、その時点で「周知されている」っていうのとかは、それは法律的にはちょっと成立しないと思うんですね。

仲林 例えば、僕が包蔵地と違うところに家を、土地を買って家を建てようと考えました。現地に行ったら土器が落ちていました。そこは周知の包蔵地ではないではないけど、周知というか落ちているので、もうこれはわかっていると。もしくは郷土史家の方がそういう論文を書いていて調べたら、行政地図には載ってないけど、包蔵地になっていると。これは届け出さなあかんと思って役所に紙出してきましたとなると、それは・・・。

 それだと、多分現地を確認して、今後の参考として記録だけでよいのか、不時発見の手続を進めた方が良いのか、判断すると思います。だからこそ、そういうことが起こらないように、行政は積極的に包蔵地の線をより確からしいものに修正していかないといけないと。それができていないと、逆に行政の瑕疵というか、不作為ということになるんじゃないかっていうのが今の私どもの感覚です。だから逆に、包蔵地の外まで何かを求めるようなことをしてはいけないっていう抑制的な感覚も持っています。

包蔵地の外の考え方

野口淳 前半の話に戻りますけど、バッファーゾーンを持っているくらいなら、範囲を広げる。それはそういう考え。つまりその線というのは、この範囲の中で絶対遺跡が出るということではなくて、逆にこの線の外はもうないものと考えてもいいですよと。

 包蔵地の線は、やっぱりそういう覚悟で引かなあかん、という思いはありますね。

野口淳 規制行為に対しては常にホワイトリスト方式なのかブラックリスト方式なのかっていうのがあるわけじゃないですか。掘ってみないと分からない以上は、ブラックリストは難しいわけですよね。ここを掘ったら出ますよって断言はできない。そうすると、ある程度その線を引いた外側は大丈夫ですっていう風に持っていきたい。不安があるんだったらグレーにするよりは白いところまで広げなさいと、それが楠さんの考え方ですね。

楠 その場合だったら、そこで届け出が出ていたらもう全部試掘して、そこで埋文が確認されなかったらもう埋文が確認されなかったってことで、包蔵地から落としていくと。地図上の包蔵地の線は残りますけど、実際としては届出不要として扱っていくわけなんです。だから東京都の話ですと、虫食い状に包蔵地が設定されると思うんですが、松山市の場合は、包蔵地は一定の区域なんですけど、実はその中に「埋文あり」「埋文なし」っていう色分けがあって、実態としては虫食い状に規制をかけていると。どっちがいいかっていうより、結局は同じことをやっているんですよね。

 関連して、試掘調査での「埋文あり」「埋文なし」という認定もすごく難しいですよね。松山市の「埋文あり」という認定は、その後、原因者負担をしてもらってでも記録を取るべきものが残っているかどうかっていうところまで考えるので、包蔵地の範囲の認定もそうですが、他よりもハードルが高いかもしれないです。

データの定量化と可視化による遺跡の予見

野口淳 ちょっと横向きに逸れますけど、頭の体操で、奈文研がその自治体行政区分の範囲を超えてこういうデータを収集することの意義として考えられるとすると、今は線を引いて、つまりこう白か黒か、あるかなしかということの議論をしているわけですけども、遺跡地図として登録されているデータ、それから奈文研では既に発掘が行われた発掘調査報告書のデータもあって、地点ごとに何が出ているかっていう情報も今収集しているとする。そうすると、そう遠くない将来に、その300回掘っているけど出なかったというようなことがデータとして可視化される。つまり、今線はここで内と外に分かれているけれども、内側に報告書がいっぱいあるところ、つまり本調査になって報告書まで出て、こんなものが出ているところと、それからその割合がかなり低いところみたいなものも、もう定量化できる可能性はある。そうすると、その線の意味もちょっと変わってきて、より等高線とか、あるいは天気図の気圧みたいな、ここは今までもこれだけ本調査に至っているけどみたいな、そういう方向性も目指すそのデータ基盤っていうことに考えられないかなと思う。それが実際の担当者としては、そんな天気予報みたいなものじゃ無理みたいなものがあるかもしれないんですが。

 今言った包蔵地の改訂っていうのは、まさにその作業しているんですよね。だからその包蔵地の中で100回なり、150回なり試掘をしたデータを全部地図上に落として、1件1件全部中身を確認していって、密度の高いところを包蔵地として括っていく、見直していくんです。その上で、最終的に有識者の会議にかけて、県に上げるという手続きを、松山市の場合は踏んでいます。結構な労力なんで、最近は人も減って、年間4件とか5件とかしかできていないんですが、それはまさに、そのことを実際アナログにやっている感じです。そのデータが等高線みたいな形で包蔵地が多い少ないとか可視化されるっていうのは非常に面白いデータなると思いますよね。将来的に包蔵地の見直していくことにもつながるでしょうし、それどころか、包蔵地が全然ないとこって、遺跡がほんとになかったのとか、あるいは、調査してないだけなんじゃないのとか、そういうことを知らしめる効果もある。市域や県域を越えてそういうものを可視化できるっていうのは奈文研ならではですよね。規制の周知とかっていう話とはちょっと離れるかもしれないですけども、それはそれでいいかもしれないですね。

高田 定量的に存在予測は技術的可能ですね。今の機能でも昔の地図データと重ねたりできます。

野口淳 単に遺跡の位置内容だけではなくて、地理情報とかとも重ねて検討できるのが奈文研の強みということ。

高田 これは、神戸ですね。昔の居留地の地図と重ねるとか。あとは調査した結果、遺構のオルソとか作ると思うんですけど、オルソにして載せられる。仮にこういったものがあれば、開発の時にご理解いただきやすいし、遺跡の分布を想定しやすい。2次元的な白黒画像だけではなくて、よりイメージしやすいので、理解を得られやすいかなって思うんです。そういう効果あります。

 広島県内のある市町村では、遺跡地図情報をウェブ上では公開していないけれども、窓口に来た開発事業者に、窓口のGISデータ端末を直接操作してもらって、過去の事前協議の履歴とか試掘調査のトレンチの位置とかトレンチで何が出ているかとかのデータを確認してもらっていると聞いたことがあります。開発事業者は自分で端末を操作して情報を確認するので非常に納得されやすいという話は聞いたことがあります。

仲林 実際、窓口に来られる方に対して、報告書に見せて、ここでこういうのが出ていますとか、説明するっていうのはよくあることですので、そういうのがより分かりやすく、非常に意義があると思います。

 この本見せて、あの本見せて、こっちのファイル見せてっていうのが一個の画面上でぱっぱっと見えるのは便利です。

 松山市はちょうど、その間です。私どももGISに1回取り組んだんですけど、なかなかうまくいかなくて、5年ぐらい努力して結局諦めました。そのかわり、その時にGISにリンクさせようとして作ったPDFデータとかが全部サーバーに入って、瞬間的に検索ができるようになったので、それをどんどんどんどんお客さんにお見せしています。結果的に、照会地点や周辺の試掘結果や包蔵地情報を紙で渡したり、画面で見せたりとか、次から次へとデータ出しながら協議できるようになったんです。平成30年の255号ではこんな遺跡が見つかってましてって資料を見せながら説明すると、そこはやっぱりおっしゃるようにすごく納得感がありますし、隣でこの深さで遺跡が見つかっているから、うちもこのくらいの深さまでなら大丈夫かなとか、私が資料でずっと書いていた「予見可能性を高める」という意味で、非常に重要だと感じています。

野口淳 東京都のこの公開している地図データは範囲のみだけれども、これは東京都が区市町村からデータを集約して正しいものとして出している。奈文研側は、あくまでそれは遺跡範囲は参照情報として東京都のデータを載せているだけ。その代わり、奈文研がこれをやる意義はそこをクリックすると総覧の報告書に飛べるし、それから周辺の東京都以外も見られる。例えばもう都道府県境ってあるわけですよね。開発業者としては東京都でここまで遺跡あるのはわかったけど、隣町にあるかというときに奈文研のを使うと、こういう使い道ってあり得ますし、逆に言えば東京都が今からシステムを改修して報告書を全部自分のところでリンクを貼ると。だったらもうあるのを使った方がいい。そういう整理はあると思いますね。

 その時のデータを誰がいつ、というところが実情は一番の悩ましいところでしょうね。

野口淳 情報はデジタルなので、オンライン上で定期的に、こういうことがありましたとか、ここが間違っているっていうような、そういうプラットフォームを総覧の裏側に作る。皆さん、総覧のアカウントを持っている、そこから共有できるミニSNS的なものとかあったらと。それだったら安心できるというか。それに対して奈文研側からレスポンスがちゃんと返ってくるっていうのがわかればいけるんじゃないかなという気がする。事務局をつくって協議会とかやると多分、もう今でさえたくさんのそういう会議があるので、もうこれ以上は無理になるかな。

遺跡情報の統合

高田 一つのプランとしては、奈文研がやっている事業で、皆さんにお願いしているのは抄録通知ですね。年に1回、文化庁経由で、抄録の入力を皆さんにお願いしています。例えば次の流れとして、ここに遺跡の範囲情報とかいうのを付加していく。もちろん、今まで議論出たように同じ作業を2回も3回もやると手間ですし、情報がばらばらになってくるので、基本的に考え方としては、とにかく一回デジタル情報を入力する。それは自分の統合型の全庁型GISのデータでもいいですし、それに一回入れればそのデータをエクスポートしてコピーすればいけますし、そういうのがないところについては、奈文研のシステムに直接入力すると。入力すればダウンロードも使えますので、再利用することもできる。なので、ルートとしてはいくつかあるかもしれないんですけども、抄録通知に付加するっていうのがソフトに進める上で、一つのプランかなと思うんですけど、いかがでしょう。そうした場合、まず市町村からデータ登録が原則、都道府県としても一括でGIS、京都府さんとかみたいにやっている場合については、京都府全域で一括してするとかいくつかのパターンはあると思うんですが、基本は市区町村メインでID発行していますので、それが一つあるかなと思っているんですけど。その辺り聞いてどんな感じですか。

 市町村からバラバラのデータ形式や、書類で奈文研に直送される仕組にすると、奈文研の仕事量が増えて大変じゃないですか。

国武 区市町村が直接入力できる?抄録と一緒?それは直感でポリゴンを新規作成できるんですか?

高田 直感的にWeb入力できる。抄録の登録と一緒の流れなので、奈文研の仕事量が増えることはない。

野口舞 今いくつか理想のプランがあるわけで、それをだからどういう順番でやっていくか。東京都からすると、遺跡地図の情報は外に出せる情報としては形ができているけど、そのいくつかある付加の情報がどこまで出していくか整理する必要があります。インターネット遺跡地図で出しているところでも、データ形式違うとこあるのかなと思っていて、そうするとどういう形で出していくのか。北海道とか点が多いとか特徴があると思います。

国武 点で出しているところは点でやってもらうしかないですよね。

野口舞 今の話を総合すると、まずは権限というか責任者が都道府県になってくるので、遺跡地図の責任者は都道府県で、それをトレースしたものを奈文研さんで掲載してもらうっていう形になるのかなと思うんですね。法令上の権限はこちらにあるので、包蔵地っていうものであれば、全く同じものを出してもらわないとトラブルの原因になると思います。

国武 都道府県だから、ちょっと高田さんが想定したのとは違って、今の話は都道府県が権限を持っているんだから、都道府県がデータを提供すべきであるってことですね。

野口舞 文化財情報を追加していくのは、奈文研さんの心次第だと思うんですけど、ベースの情報は都道府県の提供が必要かと思います。奈文研で見たら遺跡の包蔵地外なのに、東京都でみたら包蔵地に入っているから、これはどっちなのって話にはなります。

国武 さっきの話、包蔵地を決定するのは都道府県でしょう?その既に決定された包蔵地の範囲を周知するというその支援ツールとしてのシステムなので、例えば東京都において、都と、東京都が全部来たら一番楽なんだけど、今現実には区市町村と都の間で決定した包蔵地を周知する一つの周知の利用する掲示板の一つとして、こっちで区市町村が送るという仕組みはどうなんですか。例えばあり得るんですか?

野口舞 東京都の場合は、遺跡地図を作っているのはこちらなので、データはすべてあります。

国武 なるほど、なるほどデータを全部都が持っているってことなんですね。それぞれだね。

野口舞 たぶん広島県さんだと、さっきの話聞いていると、一部は区市町村から出て、一部は広島県さんから出るだろうし、政令市持っているとこだとおなじ構造になるのではないでしょうか。

国武 例えば、京都府さんだとどうなると思います。城陽市さん。例えばIDを持っていらっしゃると思うんですけど。

仲林 僕は情報をあまり持ってないんですけれども、一つ思ったのは、例えば東大阪市でしたら、文化財課が独自の遺跡地図システムで、そこからポリゴンデータをエクスポートして、統合型GISを見ている形になるんですけども、そういうのであれば次はエクスポートできる機能がある、もしくは保守契約の中でできるのであれば、そんなに負担はないのかなという気はするんですけど、逆にその統合型GISの中で、情報管理系の部署が管理していますので、そことの契約の内容とかによるのかなという気がするんです。一般的には装備できるのが大型GISの標準機能なんですかね。

高田 個人的にはあるのが当たり前だと思うんですけど、無いとちょっと仕様として・・・。

仲林 そういった他のシステムに逃げるということを前提に、考えてない契約っていうのは可能性はあるんでしょうか。

高田 可能性はあるでしょうけど、データ出力はGISとしての基本機能だとは思います。

仲林 それがなければ今おっしゃったように、周知する業務の一環として当然そういうことをすることも。

高田 それは、市町村単位の方がいいのか、都道府県単位の方がいいのか。おそらく地域によって状況が違う。

仲林 大阪の場合は多分市町村単位のほうがいいでしょうね。都は区単位ですね。

野口淳 都道府県によって違うんですよね。大阪は聞いたところだと市町村のデータをそのまま載せているだけ。

仲林 私がいた時は、紙の地図PDFで渡していました。

行政データとしての埋蔵文化財包蔵地

野口淳 そこはやっぱり違うので、東京都とか静岡県は都道府県で集約して、一本のデータで調整しているので、今の話で法律的なとこに1個引っ張ってくると、そもそも埋蔵文化財包蔵地の範囲、今文化財の部局の中の話だけしていますけど、行政データじゃないんですか、というのがひとつあると思うんですね。行政データであれば、他の部局も含めて相互の融通するのは当然のことであって、持ち合う、提供する正となる元となるデータはどこかという定義がしっかりしていればいいのではないかということはあるとは思う。それがまず1点目。もう一つはそれとは別にデジタルになってくると、沖さんも書かれていましたけど、精度をどこに持っていくのか。つまり紙の場合だと印刷によって線の太さとか印刷の縮尺によって包蔵地に入っているのか入ってないのか、これちょっとわからないのでみたいなテクニックが使えたわけですけど、デジタルになると、元データは必ずピンポイントの情報を持っている、幅を持った情報ではないので、それをどの精度で持ち合うのかということで、その時に都道府県あるいは区市町村と奈文研という関係だけじゃなくて、他の行政系の空間情報データとどういう関係になるのかっていう整理が必要になってくるであろう。例えば道路とか建築とかそれぞれも法律で規定されている場合があります。地図の縮尺で出ている場合もあるし、測量法に準拠してこのレベルでデータを持つと。文化財というのはその中に載ってこなくても大丈夫なのか、あるいは今後、そこに載せなさいと言われることがあるのか。特に統合型GISの話が出てくると、今は絵面の上で合ってればいいといわれているけれども、本格に統合型GISを運用しだしたら、その精度の問題が生じてくるわけですよね。極端な話、ここに道路、ここに下水道をこうしますっていった時に、遺跡範囲かかるかどうかっていうのを外部の事業者ではなくて庁内で調整をする時に、庁内で共有しているデータを見た時にあってないじゃんという話にもなってくるのかな。この2点目はその行政データなんだから、こういう公開協議して当たり前なんだけど、もし伴った場合にはその制度管理はどうするだろう。

沖 GISの設定で、どれぐらいまでしか拡大できないとかいう制約がつけられると聞いたことがあります。

野口淳 だけど、ビューワ側の問題であって、そこに載っかるデータは必ず厳密な数値情報を持っているはずであって、先程庁内ってあえて言ったのは、外部の事業者に対してはそれができるわけですよね。見せ方として、ここまでの縮尺しか表示できません。それ以上は対応できません。庁内で建設とかと協議になった時に、庁内ではそのデータにアクセスできるわけです。その時どうなるのかという話。

情報公開請求による遺跡地図の入手

高田 遺跡地図、包蔵地の情報は、情報公開請求対象になりますよね。

楠 普通の自治体なら公開してますからね。そもそも情報公開請求以前に。

高田 仮に、情報公開請求で得た情報っていうのは利用目的・用途は問わないので、例えば一般の方がそれで自分で遺跡地図みたいなものを作って公開したとしても制止できないかも。

野口舞 データを作るときの内規で、庁内で使う場合はという縛りがかかるってことがあると思います。それを外部に提供する時は何らかの協議の必要がある話かと思います。

仲林 情報公開以外の枠組みでできるってこと。

野口舞 誰かが使う場合、個人の利用ではなくて法的に公開するものになるで、そこで取り決めが必要になるかもしれないなと。特に、統合型で作っていたりすると、発注は、別の所管かやっているんで、ちょっと違う仕様の仕方をしている可能性はあり、その場合、文化財の考え方だけで素直に外部利用できるかっていうとちょっと微妙かなという気はします。

高田 個人情報とかは削がないといけない。落とす必要ありますけど。

野口舞 個人情報は遺跡地図上には多分載ってないと考えます。

野口淳 情報公開請求の手続きを踏まれた場合は、その個人情報を白塗りにするとかっていうのは公開までのプロセスで行うことであって、相手に渡らないもので、そこから先、これをクリアして渡したものは、もう相手が利用できるから、それに対して制限はいれられないと。もし制限のないフィルタリングをかけるなら、請求に対してこことここはやっぱり個人情報に該当するとか、何等かに該当するから出しませんという行政側の決定に基づかないといけないし、それは内規等があっても、たぶん公開してしまったらもう通用しないのかな。

楠 利用に制限が加わるようなものは、そもそも公開しないですよね、個人情報含めて。だからこそ公開できるものだけを公開するということになるかと思います。その時にどのくらいの精度で出すかって話はまた別だと思うんですけどね。そこは多分決まってないので、うちはここまでしか持ってないですってことで出すことになると思います。それと奈文研へ提供する場合、うちも恥ずかしい話ですけどの台帳は紙なので、スキャニングしたPDFのデータはありますけど、それらを提供することになると思います。

野口淳 大阪府下ですと、もしかしたら仲林さん聞いたことあるかもしれないですけど、自治体とそれから大阪ガスとかの事業者の中で、埋設管路もデータ管理がバラバラで、非効率だし、いろいろ問題も生じるということで、それを共有しよう。そういう取り組みがすでに進んでいるんですよね、高田さん。大阪府内で。協議会とか作ってやっていて、それは今はまだ図面ベースだけど、今後は座標ベースにしていかないといけないだろうというところになっている。そうすると、そこに埋蔵文化財というのは入ってくるのか来ないのか。入った場合にはどうです。ここで求められる同じレベルの精度っていうのは要求されるのかな。

国武 現実には座標持たないんでしょう。

野口淳 今持ってないから今後も持ってないと言い続けられるかどうか。

遺跡地図の高精度化のモデルケース

 そこは文化庁が目指している、遺跡地図情報の高精度化が、開発事業との円滑な調整のためだという背景を踏まえて、どのくらいの精度にするかを考えればよいと思います 。開発事業で利用されているGISの地図の精度、公共工事との調整に使える精度のものを目指すっていうことになると思うんですよ。だから、現状としては多分ばらばらだけれども、目指す精度がどの程度なのかっていうのを見据えて、それに向けて動いていくと。その時に1個のシステムで見て、これが目標かって認識できると、具体的なこのぐらいの精度でやっていかなきゃいけないというのが見えるから、それに向けて努力できるっていうのはあるかなと思うんですよね。

野口淳 その時に奈文研がいきなり全国を網羅するのではないんだけれども、特定の地域についてテストベッドになって、こういう形で今後行くんですみたいのが提示されると。

 いいですね。その情報の提供依頼は、奈文研と文化庁と一緒になってやるのがいいと思うんですよね。出したがらないところが出てくると思うんで、そこは文化庁の力を使ったほうがいいと思います。それは絶対だと思いますね。奈文研というところが実質主体になるけれども、そういう形で高度化、高度化の一つのパイロットケース、モデルケースとして奈文研でやるから、そこに対してこの数値のデータくださいっていうことを、文化庁文化財第2課長名とかで公文書で依頼文を出すとかっていうのが、とてもいいかなと思います。

 やっぱり新しいことってみんな動き出しにくいので、その点、文書で要請すると動きやすいし、優良事例のモデルケースが1個示されると、目指すべき姿が明確になって動き出しやすくなると思う。

 最初の仕様を決めるのは結構大変ですよね。

高田 そこは逆にテクニカルで合理的に決めれば。

 根っこは統合型GIS。おそらく各自治体は共通のフォーマットみたいなのがあって作っているから、それに合わせていくってところが1個目指すべき目標点。

Webでの情報公開

高田 ウェブの詳細な情報公開に消極的な意見があると。懸念事項として不確実情報により地権者に不利益が発生すると、法的に問題が生じる可能性があるかないか。なければもうすっきりないですってことですし、あるならこういうことに気をつけた方がいいということになるんですけど。

国武 これもう少し具体的に。これ赤字のところ、具体例を含めて何か架空の例でもいいからちょっと分かりやすく、これはこういう場合ですって。

 先ほどから話に出てきているドットで示すとか、あとはそのエリアもモヤっとした精度の低いエリアで括った時の境界線の話とか、あるいは奈文研が出している範囲と都道府県がこれまで出している範囲とが食い違った時の部分が違っているじゃないかっていう時に、それの食い違いによってその取り扱いに相違が発生してきた場合の何か法的な問題点があるか。奈文研のウェブ情報では埋蔵文化財包蔵地も枠から外れていて、でも、実際ここから外れているからといって、事前協議とか届け出なしで工事にかかって、そのあとで入っているから届け出が必要だったはずだって言って法令に違反していますっていう指摘を、地元の自治体がした時に、それは不当な指摘だっていって、何か法的問題があるかどうかというところですね。気になったのは。

国武 過去に類似事例なかったっけ?行政側に瑕疵が認められている。包蔵地の範囲が不確実だった。多分、後者の奈文研がその範囲間違えて損害与えた場合は、おそらくシンプルに私たち瑕疵があることになると思うんですけど。多分一番の真髄は包蔵地そのものが確実にわかるものじゃない線引きですと。まあ努力して引いているわけですけどね、いろいろ。でも、それによってその限界を超えてしまったと。ようするに本当に損害与えしまったとかですね。そういうことで行政側の瑕疵が法的に追及されることになりますかってことですよね。

高田 奈文研側としては免責事項で、利用規則で、そういうリスクがありますよっていうのを承知していただいた上で、利用していただく。奈文研側は利用規則でいけると思うんですけど、自治体側はどうでしょう。

 これ問題を2つ含んでいるね。奈文研が出すときの問題点と、あと遺跡地図をウェブ上で出すことそのものに関する問題点。包蔵地の周知っていうのが曖昧なものを本来含んでいる中で、曖昧な情報をウェブっていう座標が与えられるようなものの情報で出してしまうことによって、何か不都合が生じないかしらというところです。

国武 損害が与えた時に追及されるのか、あるいは包蔵地というのはそういうものだから勘弁してよと言えるのか。

野口淳 ひとつは、高田さんが何度も言っているけど、免責事項というのが有効かどうかということですね、法律的に。これがあるから大丈夫だと。

 どういう免責事項を付ければ確実なのかというところだと思います。

野口淳 それは奈文研に限らずということですね。

 そうですね。免責事項って文言を考えはじめた時に結構悩むと思うので、よい文例が具体的に示されると、すごく安心だと思うんです。

野口淳 ウェブだからということは、これは法律の問題になるんですかね。公開普及の度合いが変わるからということで。

高田 紙での情報発信とウェブでの情報発信、やっぱり一つステージが変わるので、そこ特有の問題っていうのは起こり得る。

野口淳 これは遺跡地図に限らず、報告書でも同等かなと思うんです。それは何かというと、お墓とか人骨の出土について、自治体名を特定しませんけど、運用の要領の中であまりオープンには、報告書は出すけれども、積極的にオープンにするということによって、その居住者の人に対して不利益を与えるかもしれないということを、書かれている自治体もある。実際問題として。それが300部とかしか刷られない報告書で図書館に行かなきゃ見られないものと、ウェブ上で誰でも見られるものっていうものの間に差があるのかどうかということについて。

野口舞 奈文研で遺跡地図をインターネット上で公開すると基本的には、紙の照会でやっているところは、一時的にはみんなそちらを確認してから窓口にいくって流れに変わっていくと思うんですよね。だから、そこのところを、窓口の区市町村に納得してもらわないとなかなか進みにくい。

 窓口相談に来てくれなくて、何かが起こった時の方が、対応がややこしくなるという不安が一番大きくて、そこを払拭しないとなかなか難しいかなと思います。

高田 逆にWebGISを活用することで、より来てもらいやすくなる。

野口舞 そうですね。そういうものが必要だと思います。

公開する地図の縮尺

 公開する地図の縮尺って、結構大きいと思うんですね。松山市の統合型GISも市のホームページにバナー置いてウェブで公開してるんですけど、そこには包蔵地は載せてないんですよね。詳細すぎて家一軒まで出るようなシステムなので。最近見直した包蔵地は、家一軒一軒まで考慮して線を引いて、それがわかるくらいの地図も作成して公開もしているんで、載せてもいいんですが、昔からのそこまでの精度ではない包蔵地も含めて全部載せてしまうと、それを見て、ああ外れているなって分かった気になられてしまうるのも、どうかとなって思って。なので、文化財課ホームページの包蔵地のところに市域を大枠で分割した25,000分の1のPDFの包蔵地の粗い地図を載せて、迷ったら相談してくださいねってやっているんです。ただし、最近見直した精度の高い包蔵地については、包蔵地地図と合わせて載せている包蔵地リストの中に、個別に何年何月修正って載せてて、そこをクリックすると家一軒一軒まで分かるようなPDFの包蔵地ごとの詳細な地図を載せているんで、それを見てわかるんやったらそれでいいですよってやってます。ちょっとアナログなんですけど、2段階でホームページを作っているというか、こちらの包蔵地の修正の進展にバランスするように、市民に判断してもらえる部分と、照会してもらいたい部分とのバランスを取りながら、少しずつ進めています。そこを紙しかやってないところは、なおさらそれはすごく不安だと思います。うまくやれば、これをきっかけに来てくれる可能性は高くなると思うんですけど、ベースの包蔵地の地図がそこまでの精度ではなくても、それが公開されてしまえば、見た方が自己判断するケースは確実に増加するでしょうから、危惧された区市町村の方は、あぁやっぱりってなってしまうと思います。

野口淳 そのあたりがシステム的に、できるだけ荒い方にって全部足並みを揃えてしまうと、せっかくのデータの価値も下がってしまうので、都道府県レベル、あるいはもうちょっと小さい自治体レベルでそれぞれの情報の精度とか表示が切り替えられるみたいなことっていうのはあり得ますか。

高田 トータルでは考えてないですね。

野口淳 縮尺のコントロールだと都道府県を境にしなきゃいけないのでとても難しいと思って、あるスケールのところに行くと、通常はポリゴンなので、どんなに拡大しても線の幅は変わらないはずですけれども、例えばズームレベル16までにしてほしいというっていうところは17、18になると線が太くなったりとか。

 奈文研が公開する地図データのうち、周知の埋蔵文化財包蔵地にあたるレイヤーだけはある程度になったら消えてしまう、見えなくなってしまうとかですかね。

野口淳 ああ、そうですね。全てのではなくて自治体が指示できるみたいな。

高田 結局、情報公開請求を受けたら全部公開対象になるので、縮尺のコントロールはどうか。

楠 紙ベースだと、たぶん家一軒単位にまでに当たるような精度のものを、そもそも持ってないと思いますよ。

野口舞 都は1万分の1としています。

野口淳 今の話でいうと、まずどう見せるかの前にどういうデータが影響可能なのか操作をした方がいいかな。その上で実情を見て、どのレベルで一括で揃えるのかとか、あるいは格差が大きすぎたら。

高田 多分、ばらばらになりますね。

野口舞 バラバラですよ。今、データを出せる人達が集まっている状態です。

高田 そうするとともかく、出しても問題ないものだけ出してもらう。出してまずいものは、そもそも公開されてはいけないし、扱えない。

野口淳 個人的には、調査は全部網羅しなくても、何か一回現時点でどういう情報か見てみたいです。

仲林 データ提供のしやすさっていうのは、うちにデータがあることもそうですけど、同じ条件で載せられるかっていうのも影響しそうですね。まだそういう意味ではその後、網羅的に集めるというよりかは、モデル地区というか、そういうところから始めてみるとか、そっちの方が現実的っぽいね。

 データをぱっと出せるところばっかりサンプルにやったって、そうじゃない方がいっぱいあるわけです。そうでないところをどうやったらそこに載せられるのか、というところの方が大事だと思うので、紙しかないところのサンプルがより重要になると思います。紙もないところもあるかもしれないですけど。

GISの仕様づくり

 デジタルデータも紙媒体もないところは、いよいよモデルケースの GISデータ を奈文研が公開していくと、どんなものを作ればよいかが可視化されるので、その仕様書を奈文研から示していただいて、それをもとに都道府県なり、市町村で同じ仕様で作っていく。できた成果物を自らの遺跡地図として公開活用するとともに奈文研とも 共有して、奈文研地図情報の一層の充実につなげるというやり方かなと思うんですね。

高田 仕様の参考例っていうのも、作らないといけないですね。

 経験のない機関が仕様書をいきなり作るのは大変だから、先行して作っている機関の仕様書をいただけると、普及が早いでしょう。全国の作成事例を把握するためのアンケート調査みたいなのをすると良いかもしれないですね。

高田 フルデジタルで遺跡地図運用をやっていて、デジタル的な仕様を決めたらいいだけのところと、紙しかないところを2ケースぐらいで一回やってみる。

野口舞 行政と奈文研さんの立ち位置を決めておかないといけなくて、今聞いている話だと、遺跡地図の法的な根拠と責任はこちらにあって、奈文研の方はそれを広く普及するために作っているとすれば、それは、遺跡総覧と同じですよね。

野口淳 総覧ができても、報告書は別に奈文研作らないですよってそういうことですね。

野口舞 それを言っておかないといけないと思います。

 各地方自治体が作成した遺跡地図情報 を周知するためのツールとして、奈文研のシステムにデータを送るのです、ということですね 。

野口舞 そう、フィルターかかっていますっていうのと、責任の所在はこちらなんですって、線を引いとかないとかなと思う。

野口淳 率直に言って東京都は今、独自システムの文化財地図出しているけれども、いつ統合にしろと上から降りてくるかって言ったら、たぶんかなり短いスパンで来るでしょう。

野口舞 わかりません。

野口淳 ちょっと相談受けてお手伝いしているところと、もう本当に全部の仕様が決まった後に、だから、建築とかは最初の仕様策定の時から参加しているんだけれども、文化財はいちばん最後、あと4ヶ月で締め切るので何かあったらくださいみたいので来るパターンが多いですよね。まさにそのパターンで、そこに文化財どうやって載せるのって、作られてしまってから説明会に来てみたいな。

参加者一同 ありがとうございました。


※本稿は当日の発言をもとにテキスト化し、公開に際して適切な表現に改めるとともに意味が通じるよう加筆修正した。本稿はあくまで個別事例等による参考情報であり、本稿による何らかの判断においてはかならず読者自身の責任と判断によることとされたい。


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総覧登録日 : 2024-03-22
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