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デジタル技術による文化財情報の記録と利活用 > 6 号 > 2023年度数字で見る全国遺跡報告総覧

2023年度数字で見る全国遺跡報告総覧

高田 祐一 ( 奈良文化財研究所 )

Takata Yuichi
高田 祐一 2024 「2023年度数字で見る全国遺跡報告総覧」 『デジタル技術による文化財情報の記録と利活用』 遺跡地図・3D・GIS・モバイルスキャン・デジタルアーカイブ・文化財防災 https://sitereports.nabunken.go.jp/online-library/report/46
2023年度の全国遺跡報告総覧等の実績報告。

全国遺跡報告総覧の経過やデータ件数などを報告する。

1.現在のデータ件数とデータの流れ

全国遺跡報告総覧に登録されているデータ件数は以下の通り(2024年3月27日時点)。推移は表1。データ連携は図1。

PDFがある書誌登録数:37429

 総ページ数 : 4,636,235

 総文字数 : 3,134,178,739

書誌登録数:131761

書誌の発行機関数:1905

遺跡抄録件数:145622

文化財動画件数:1185

文化財イベント件数:1046



表1 全国遺跡報告総覧に登録されているデータ件数の推移



表3 都道府県別抄録公開件数


図1 全国遺跡報告総覧とのデータ連携


2.全国遺跡報告総覧のこれまでの経過

2008年から2014年までは遺跡資料リポジトリである。

2008(平成20)年度

・中国地方5県域(大学)で遺跡資料リポジトリの運用開始(各大学が個別にサーバ管理)

・メタデータの収集

・作成開始(奈文研とも連携)

・報告書の電子化開始(NIIのCSI事業費)

2009(平成21)年度

・12府県域(大学)へ拡大(各大学が個別にサーバ管理)

・横断検索・全文検索に対応するためのシステム改修

・報告書の電子化(CSI事業費/科研費)

2010(平成22)年度

・20府県域(大学)へ拡大

・NII共同サーバ上にシステム構築(新規参加大学向け)

・オープンカンファレンス開催(2010.12@大阪)

・報告書の電子化(CSI事業費/科研費)

2011(平成23)年度

・自治体セルフ・アーカイブ移行のためのシステム改修

・全国の自治体にアンケート調査を実施

・プロジェクトが推進する電子化仕様を公開

・ワークショップ開催(2010.11@東京/同.12@福岡)

・報告書の電子化(CSI事業費)

2012(平成24)年度

・CSI委託事業最終年度

・22府県域(21大学)へ拡大

・報告書の電子化(CSI事業費/科研費)

・奈文研と広域モデル実証実験開始(報告書発行機関による直接参加が可能に)

・シンポジウム開催(2012.11@福岡)

2013(平成25)年度

・報告書の電子化(科研費)

・奈文研とシステム移行に向けた協議開始

2014(平成26)年度

・島根大学附属図書館全国遺跡資料リポジトリ推進会議事務局が国立大学図書館協会賞を受賞(2014.6)

・連携大学実務者会議でシステムの統合・移管が決定(2014.11)

・旧システムの凍結及びシステム移行作業(2014.12~)

2015(平成27)年度

・連携大学による新システムの検証(負荷テスト等)

・全国遺跡報告総覧の公開(公開時点の報告書14,374冊)(2015.6)

・データ登録再開(2015.8)

・ディスカバリーサービス(Summon)との連携開始(2015.9)

・報告書本文データの登録件数が15,000件に(2015.10)

・シンポジウム開催(2016.2@奈良)

・CiNii Booksとの連携開始(2016.3)

2016(平成28)年度

・英語自動検索機能公開のお知らせ(2016.8)

・イベント情報(文化財イベントナビ)の登録・公開機能を追加(2016.9)

・シンポジウム開催(2016.11@奈良)開催

・Worldcat(ディスカバリーサービス含む)との連携開始(2017.2)

2017(平成29)年度

・ディスカバリーサービス(EDS)との連携開始(2017.4)

・報告書の頻出用語を可視化したワードマップを公開(2017.4)

・報告書本文データの登録件数が20,000件に(2017.7)

・文化財報告書にDOIの付与会誌(2017.7)

・考古学関係用語辞書拡充(2017.8)

・「データ登録に関する今後の方針」を公開(2017.10)

・報告書発行機関向けの説明会を開催(5会場:奈良/仙台/岡山/福岡/東京)

2018(平成30)年度

・モバイル端末向けPDFの公開(2018.8)

・遺跡(抄録)検索機能の公開(2018.12)

・ディスカバリーサービス(Primo)との連携開始(2018.12)

・全埋協抄録データベースの統合完了(2019.1)

・奈文研での関連研修内容をまとめた刊行物を遺跡総覧で公開(2019.3)

・報告書発行機関向けの説明会を開催(5会場:京都/福島/石川/埼玉/大分)

・引用表記の自動表示(2019.2)

・都道府県別の発掘調査報告書総目録 高知県・島根県編の公開(2019.3)

2019(令和元)年度

・欧州考古学情報基盤ARIADNE Plusへの奈良文化財研究所の参画(2019.4)

・都道府県別の発掘調査報告書総目録 新潟県編の公開(2019.4)

・全国の遺跡や文化財に関するイベント情報検索機能公開(2019.6)

・都道府県別の発掘調査報告書総目録 大阪府編の公開(2019.6)

・奈文研抄録データベースの全国遺跡報告総覧への統合完了(2019.6)

・発掘調査報告書総目録 新潟県編の書誌情報を全国遺跡報告総覧に登録(2019.11)

・書誌ページQRコード表示機能とシリーズ番号順並び替え機能公開(2019.11)

・報告書発行機関向けの説明会を開催(5会場:佐賀/新潟/広島/愛知/東京)

・発掘調査報告書総目録 大阪府・兵庫県・島根県・高知県編の書誌情報を全国遺跡報告総覧に登録(2020.1)

・類義語およびOCR誤認識用語検索機能の公開(2020.2)

2020(令和2)年度

・文化財動画ライブラリー公開のお知らせ(2020.8)

・全国の発掘調査報告書の書誌情報13583件を一括登録(2020.10)

・遺跡位置の世界測地系10進法への簡易変換表示機能の公開(2020.11)

・全国の文化財地図・遺跡地図、発掘調査報告書等の書誌情報1814件を一括登録 (2020.12)

・文化財動画ライブラリーがJAPAN SEARCH上で検索可能に。データ連携開始(2020.12)

・青森県・福島県・岡山県の発掘調査報告書等の書誌情報1257件を一括登録(2021.2)

・文化財論文ナビの公開(2021.3)

2021(令和3)年度

・遺跡位置表示機能およびWikipedia記事に全国遺跡報告総覧登録コンテンツを引用する際の表記を自動表示する機能の公開(2021.4)

・文化財論文情報の13164件を一括登録(2021.5)

・文化財論文ナビの機能およびメタデータの追加(2021.6)

・Internet Archeologyにて考古学デジタルアーカイブ特集号が発表(2021.6)

・文化財論文ナビにて類似論文の自動表示と共起ネットワーク図の追加(2021.6)

・北海道・埼玉県・岐阜県・福井県の発掘調査報告書等の書誌情報2822件を一括登録(2021.7)

・文化財総覧WebGISの公開(2021.7)

・岩手県・茨城県・石川県・和歌山県の発掘調査報告書等の書誌情報2367件を一括登録(2021.7)

・山形県・秋田県・徳島県・山口県・佐賀県・長崎県・熊本県の発掘調査報告書等の書誌情報2449件を一括登録(2021.8)

・群馬県・香川県・愛媛県・大分県の発掘調査報告書等の書誌情報1895件を一括登録(2021.9)

・文化財論文情報の2158件を一括登録(2021.9)

・宮城県・栃木県・神奈川県・静岡県の発掘調査報告書等の書誌情報4012件を一括登録(2021.10)

・千葉県・京都府・広島県・沖縄県の発掘調査報告書等の書誌情報4480件を一括登録(2021.11)

・愛知県・三重県・滋賀県・鹿児島県の発掘調査報告書等の書誌情報4248件を一括登録(2021.11)

・文化財論文情報の3628件を一括登録。遺跡報告内論考データベースのデータ移行完了(2021.11)

・文化財総覧WebGISにて表示中の状態を再現できる機能等の公開(2021.12)

・文化財論文情報の1718件を一括登録(2022.1)

2022(令和4)年度

・昭和30年代に奈良文化財研究所が撮影した空中写真の範囲を拡張し公開(2022.4)

・文化財論文情報の37391件を一括登録(2022.4)

・発掘調査報告の掲載有無を追加(2022.6)

・書誌情報6125件を一括登録(2022.7)

・OCR済みのPDFに一括差し替え(2022.7)

・文化財論文情報55410件を一括登録。考古関連雑誌論文情報補完データベースのデータ移行完了(2022.7)

・三重県四日市市の遺跡情報を登録(2022.9)

・重複書誌を整理。報告書総目録掲載対象項目を表示(2022.10)

・自然災害伝承碑の詳細表示と3D地形表示の機能公開(2022.10)

・全国文化財情報デジタルツインプラットフォームの構築(2022.10)

・文化財総覧WebGIS:静岡県・岐阜県のCS立体図追加および自然災害伝承碑のポップアップ表示(2022.10)

・全国遺跡報告総覧:遺跡抄録の遺跡種別に「水中」を追加(2022.11)

・全国遺跡報告総覧:ツイート時に管理機関名とTwitterアカウントを表示する機能を追加(2022.11)

・文化財総覧WebGISがデジタルアーカイブ学会学会賞 学術賞(基盤・システム)を受賞しました(2022.12)

・全国遺跡報告総覧:NCIDとJP番号の一括登録(2023.1)

・全国遺跡報告総覧:書誌の巻次およびシリーズ番号にて一括置換(2023.2)

・全国文化財情報デジタルツインプラットフォームに新たに文化財の3Dモデルを追加(2023.3)

・文化財総覧WebGIS:法務省登記所備付地図データを追加(2023.3)

2023(令和5)年度

・全国文化財情報デジタルツインプラットフォームに新たに文化財の3Dモデルを追加(2023.5)

・全国文化財情報デジタルツインプラットフォームに新たに文化財の3Dモデルを追加(2023.7)

・全国遺跡報告総覧:報告書種別を細分化しました(2023.8)

・文化財総覧WebGIS:地すべり地形分布図日本全国版を追加(2023.8)

・文化財総覧WebGIS:広島県・岡山県・愛媛県・高知県・福島県・熊本県・大分県のCS立体図を追加(2023.9)

・文化財総覧WebGIS:栃木県・兵庫県(50cmメッシュ)・高知県のCS立体図を追加(2023.10)

・全国文化財イベントナビおよび文化財動画ライブラリーに各種募集・人材募集の種別を追加しました(2023.10)

・文化財総覧WebGIS:長野県のCS立体図を追加(2023.11)

・全国遺跡報告総覧:全国文化財目録の公開(2023.12)

・文化財データリポジトリの公開(2024.1)

・全国遺跡報告総覧:建造物関係報告書書誌情報5745件を一括登録(2024.1)

・文化財オンラインライブラリーの公開(2024.3)

3.利用統計

2022年度の1年間のPDFダウンロード数は2348202件であった(図2)。アクセス数は889万件、ページ閲覧数は1億1783万件だった(表2)。


図2 報告書登録数とダウンロード数の推移


表2 全国遺跡報告総覧のアクセス数とページ閲覧数

4.全国文化財目録の概要

1. 概要

(1)システムの概要と背景

 日本には、遺跡、建造物や有形文化財など膨大な文化財がある。それらの文化財に対し、同じ文化財であっても国・都道府県・区市町村・大学や博物館などそれぞれの機関から文化財に関するデータが作成される。また、同じ文化財(主に遺跡)であっても、複数回の調査が実施されることがある。

 結果、同一の文化財に複数の情報や記録が生成されたが、バラバラにあるため、一元的に確認することは難しい状況であった。そこで、文化財単位に各情報を名寄せし、集約した。

全国文化財目録(2023年12月7日公開)

URL: https://sitereports.nabunken.go.jp/ja/search-cultural-heritage

2. データと機能

(1)データ

下記のデータをもとに、名寄せ処理した。

遺跡抄録データ 約14万件 https://sitereports.nabunken.go.jp/ja/search-site

遺跡データベース(更新停止)約48万件

国土交通省:都道府県指定文化財データ

文化庁:国指定文化財等データベース

各地方公共団体の文化財オープンデータ

(2)文化財ごとに名寄せ・洗い替え処理

 文化財情報の構成として、Monument-Event-Archiveという階層がある。Monumentは、文化財そのもの、Eventは調査自体の記録、Archiveは具体的な成果物となる(図3)。現在、日本では統一的なMonument情報がありません。そこで、文化財の物件ごとに自動名寄せ※処理を実施した。結果、文化財の物件単位として約51万件となった(図4)。ただし、文化財名称が多様であり、自動名寄せが適切に実施できていないケースもある。今後、改善を図る予定である。

 また、名寄せ処理のために、文化財情報のうち、市町村コードについて洗い替え処理※を実施した。

※名寄せ:複数のデータ源から重複している同一のデータを統合すること

※洗い替え:廃止となった市町村コードを新たなコードに更新した


図3 文化財情報の構造


図4 文化財情報の名寄せ処理

3. 期待される効果

(1)アクセス性の向上:名寄せによって文化財情報を統合的に確認する

 これまでは様々な機関が作成したデータを個別に捜索し、確認する必要があった。当該文化財の情報を集約することで、当該文化財に関する情報を一覧で閲覧することができる(図5,6)。


図5 文化財ごとに表示


図6 調査情報を集約して表示


(2)機械可読性の向上:文化財のID化による多様な展開への基盤

 文化財ごとにIDを付与した。文化財そのものを対象に、上位データのIDとして、一意となる日本全国文化財番号 (JC番号:JCNo)を付与した。各個別の下位データにも一意となるIDを付与した。IDを付与することで、今後のコンピュータ処理の際に、様々な展開や応用が可能となった。今回はその基盤化のための一歩となる。


引用-システム内 :
引用-システム外 :
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テーマ : 事業報告
キーワード : 全国遺跡報告総覧 年間報告 利用統計
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総覧登録日 : 2024-03-27
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