The vegetal temper of Jomon pottery in Aomori prefecture
青森県出土縄文土器の植物混和材
NISHIDA Yasutami
( 西田 泰民 )
SATO Tomoo
( 佐藤 智生 )
縄文土器の胎土に植物が混ぜられたものがあることがいつから認識されていたのか、明確ではない。
円筒土器は菅江真澄がスケッチに残しているように、近代考古学以前より知られていて、下層式の断面から胎土が特徴的であるのは気づかれていても不思議ではないのだが、長谷部言人がオセドウ貝塚の調査成果を報告する中でも、胎土については全く記載がない(長谷部1927)。初めての体系的な研究論文は、山内清男の「関東北に於ける繊維土器」(山内1929)であり、繊維土器の呼称が一般化するきっかけとなるのだが、山内自身が最初に気づいたわけではないらしく、その中で論文発表以前の大正15年(1926)に是川中居貝塚の土器を整理中に八幡一郎が萬田貝殻塚下層(現平塚市)の土器と土質が近似することを指摘したこと、また杉山寿栄男の『原始工藝』(杉山1928)において繊維土器の記載があることを注に記している。杉山寿栄男は是川の円筒土器中に繊維束を芯にして作る技法があるとしていた。なお、さらにそれよりも前の大正13 年(1924)刊の『諏訪史』の中で、鳥居龍蔵が厚手派土器の中に草の類を入れて焼いたものがあると記し、自身が聞き取りを行った北千島の植物を混和させる土器作りの事例を紹介している(鳥居1924)。これらからすると大正末期には研究者の間で植物混和の土器の認識が広まっていたと考えられる。一方、その原材料については、現在の八戸市一王寺(1)遺跡から出土した土器片を対象とした草野の報告(草野1930)を始めとして、関心がもたれながらも現在に至るまで特定ができていない現状がある。
以前、西田らは三内丸山遺跡出土の円筒下層a,b 式の土器について、繊維がどのように混和されているかX 線CT を用いて、可視化した(西田ほか2005)。その際は土器全体をスキャンすることを優先したため、解像度を低くせざるを得ず、混和材の詳細な形状を解析するのに足る精細な画像をえることはおこなわなかった。改めて、現在使用しているソフトウェア(Molcer Plus, Whiterabbit 社)で空隙率を計算してみると、空隙=混和材と仮定するならば、円筒下層a式とb式では後者の方が混和量が多いことが示された。
今回は、青森県内の縄文時代早期土器を中心に、X 線CT による観察をする機会を得たので報告する。
早期を中心としたのは、東北地方における植物混和材の使用は日計式に認められるものの、その後中断があり、早期後半から再び顕著となる現象がみられるためである。関東地方でも早期前半の平坂式・天矢場式に植物混和土器があることが判明していることからも注意がひかれる。なお、この研究は科研費研究「土器製作技術と植物性混和材」(課題番号20H05812、代表者 阿部昭典)の一環である。
本稿の執筆・分担は、1章、3章を西田、2章を佐藤がおもに担当した。
円筒土器は菅江真澄がスケッチに残しているように、近代考古学以前より知られていて、下層式の断面から胎土が特徴的であるのは気づかれていても不思議ではないのだが、長谷部言人がオセドウ貝塚の調査成果を報告する中でも、胎土については全く記載がない(長谷部1927)。初めての体系的な研究論文は、山内清男の「関東北に於ける繊維土器」(山内1929)であり、繊維土器の呼称が一般化するきっかけとなるのだが、山内自身が最初に気づいたわけではないらしく、その中で論文発表以前の大正15年(1926)に是川中居貝塚の土器を整理中に八幡一郎が萬田貝殻塚下層(現平塚市)の土器と土質が近似することを指摘したこと、また杉山寿栄男の『原始工藝』(杉山1928)において繊維土器の記載があることを注に記している。杉山寿栄男は是川の円筒土器中に繊維束を芯にして作る技法があるとしていた。なお、さらにそれよりも前の大正13 年(1924)刊の『諏訪史』の中で、鳥居龍蔵が厚手派土器の中に草の類を入れて焼いたものがあると記し、自身が聞き取りを行った北千島の植物を混和させる土器作りの事例を紹介している(鳥居1924)。これらからすると大正末期には研究者の間で植物混和の土器の認識が広まっていたと考えられる。一方、その原材料については、現在の八戸市一王寺(1)遺跡から出土した土器片を対象とした草野の報告(草野1930)を始めとして、関心がもたれながらも現在に至るまで特定ができていない現状がある。
以前、西田らは三内丸山遺跡出土の円筒下層a,b 式の土器について、繊維がどのように混和されているかX 線CT を用いて、可視化した(西田ほか2005)。その際は土器全体をスキャンすることを優先したため、解像度を低くせざるを得ず、混和材の詳細な形状を解析するのに足る精細な画像をえることはおこなわなかった。改めて、現在使用しているソフトウェア(Molcer Plus, Whiterabbit 社)で空隙率を計算してみると、空隙=混和材と仮定するならば、円筒下層a式とb式では後者の方が混和量が多いことが示された。
今回は、青森県内の縄文時代早期土器を中心に、X 線CT による観察をする機会を得たので報告する。
早期を中心としたのは、東北地方における植物混和材の使用は日計式に認められるものの、その後中断があり、早期後半から再び顕著となる現象がみられるためである。関東地方でも早期前半の平坂式・天矢場式に植物混和土器があることが判明していることからも注意がひかれる。なお、この研究は科研費研究「土器製作技術と植物性混和材」(課題番号20H05812、代表者 阿部昭典)の一環である。
本稿の執筆・分担は、1章、3章を西田、2章を佐藤がおもに担当した。
西田泰民,佐藤智生 2025「青森県出土縄文土器の植物混和材」 『研究紀要』
https://sitereports.nabunken.go.jp/en/article/127666
NAID :
Prefecture :
Aomori Prefecture
Age
縄文
文化財種別
考古資料
史跡・遺跡種別
学問種別
考古学
テーマ
素材分析
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Created Date :
2025-08-25
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