古代の烽ネットワークと鞠智城
大高 広和
本稿では、熊本県域においてトビ地名を始めとする古代の烽に関わる可能性のある地名を集成・吟味して、烽ネットワークの復元の可否を検討し、その中での鞠智城の位置づけを考えた。その結果、「延喜式駅路」ルートおよび「車路」ルートにトビ・ヒノヤマ系地名による烽候補地を見出し、熊本県北部から中部にかけての烽ネットワークを想定した。また、有明海・島原湾の沿岸部を通る玉名郡のルートにも烽が伴いそうである。肥後国全体で見れば、熊本平野から下益城郡の沿岸部までは烽が置かれていた蓋然性が高く、宇土半島・天草諸島にも烽ネットワークが伸びていた可能性を想定した。