栃木県宇都宮市刈沼遺跡出土土器付着物の炭素14年代・同位体比測定
Analysis of Charred Materials on Potsherds by Means of Table Isotope Analysis and Radiocarbon Dating of Karinuma-Site in Utsunomiya City, Tochigi Prefecuture.
小林 謙一
( KOBAYASHI Ken'ichi )
米田 穣
( YONEDA Minoru )
尾嵜 大真
( OZAKI Hiromasa )
大森 貴之
( OMORI Takayuki )
江原 英
( EHARA Ei )
宇都宮市刈沼遺跡について、栃木県埋蔵文化財センターより刊行された調査報告書において、出土縄紋後晩期土器付着炭化物の炭素14年代測定結果を報告した。その際に、炭素量不足から保留していた試料について、再度採取試料の前処理から試みたところ、新たに測定することができたので報告する。既報告分の年代値について、較正年代がIntCal20に改訂されたこともあり、合わせて較正年代を算出し直して年代的位置づけについて再検討した。
今回測定分の年代値を比定される土器型式順に整理してみた場合、型式論的な判断と測定値とはおおむね整合的である。なお、当該時期は、IntCal13とIntCal20では結果的に較正年代値が大きく異なることはないことも確認できた。
測定結果の較正年代値は、最も古い年代のものは曽谷式期に対比される年代、安行2式期に対比される試料は、後期安行期の推定年代と概ね合致する年代、晩期初頭大洞B式に比定された土器付着物は晩期B式の新しい時期に比定され得る年代となるなど、概ね土器型式の順番と合致する。一方で、姥山Ⅱ式に比定される試料や、もっとも新しい大洞A式に対比される試料は、それぞれ想定される推定年代よりも数十年古い年代であった。以上のように、一部の土器においては土器型式から想定されるよりもやや古い年代と思われる事例が散見された。
年代値と別に、安定同位体比および炭素・窒素比を検討したところ、同位体比を見ると、δ13Cは-24.9~-30.3‰の値であり、陸性の起源物質に由来する可能性が考えられた。前述のように、いくつか比定される土器型式よりも数十年程度古い年代を示す例の存在を検討すると、窒素同位体がやや高い内面付着物を中心にやや古い年代を示す例があることは、魚など海産物を一定量混和させた内容物を調理したお焦げである可能性が考えられ、今後の検討が必要である。
内陸部に位置する集落遺跡において、後期後葉から晩期の年代測定例を蓄積できた。土器型式毎の推定年代を高精度化するため、土器型式比定の確実な試料の測定を進めるとともに、付着物の由来についても検討を重ねていく必要がある。
今回測定分の年代値を比定される土器型式順に整理してみた場合、型式論的な判断と測定値とはおおむね整合的である。なお、当該時期は、IntCal13とIntCal20では結果的に較正年代値が大きく異なることはないことも確認できた。
測定結果の較正年代値は、最も古い年代のものは曽谷式期に対比される年代、安行2式期に対比される試料は、後期安行期の推定年代と概ね合致する年代、晩期初頭大洞B式に比定された土器付着物は晩期B式の新しい時期に比定され得る年代となるなど、概ね土器型式の順番と合致する。一方で、姥山Ⅱ式に比定される試料や、もっとも新しい大洞A式に対比される試料は、それぞれ想定される推定年代よりも数十年古い年代であった。以上のように、一部の土器においては土器型式から想定されるよりもやや古い年代と思われる事例が散見された。
年代値と別に、安定同位体比および炭素・窒素比を検討したところ、同位体比を見ると、δ13Cは-24.9~-30.3‰の値であり、陸性の起源物質に由来する可能性が考えられた。前述のように、いくつか比定される土器型式よりも数十年程度古い年代を示す例の存在を検討すると、窒素同位体がやや高い内面付着物を中心にやや古い年代を示す例があることは、魚など海産物を一定量混和させた内容物を調理したお焦げである可能性が考えられ、今後の検討が必要である。
内陸部に位置する集落遺跡において、後期後葉から晩期の年代測定例を蓄積できた。土器型式毎の推定年代を高精度化するため、土器型式比定の確実な試料の測定を進めるとともに、付着物の由来についても検討を重ねていく必要がある。