大学における3Dと考古学-新しい研究・教育に向けて
平川 ひろみ
( Hirakawa Hiromi )
前回のワークショップで、考古学・文化財における3D計測の本質的な目的やその意義を明確にするために、学生・教員等として大学に所属し考古学に関わる「大学チーム」4名が、バリューグラフとイネーブラー・フレームワークの手法で意見を出し合った。〈研究〉〈教育〉〈普及〉〈記録〉の4カテゴリーが抽出され、研究と教育は不可分であって「考古学の発展のためには、研究の質を向上させる必要があり、そのための重要な方策が3Dだ」という結論を得た。考古学の教育面で3D計測は、カリキュラムへの導入がほぼ皆無で取り組みは非公式であること、〈考古学の発展〉の達成には大学での教育・人材育成が欠かせないことを確認した。一方、研究者や学生は記録の受け取り手でもあり、3Dデータに先端的研究までの品質を要望する権利があり、3Dデータは自前の資料の多寡による大学間格差を縮めるためにも必要である。3Dデータによって、資料へのアクセスに関する国内外の専門家間・学生間の差を縮め、他分野の研究者や一般への利用機会を格段に増やせそうである。