地域の埋蔵文化財を活用した学習指導の在り方 ~小・中学校と連携した現地説明会と出前授業の実践を通して~
平井 祥蔵
( Hirai Syouzo )
伊東 浩二
( Ito Koji )
本センターでは、発掘調査期間中に現地説明会を行い、周辺地域へのアウトリーチ活動を行っている。本年度の発掘調査においても現地説明会を実施し、出土した遺物や遺構の解説等を通して、地域の埋蔵文化財について理解を深める活動を行った。また、発掘調査時に地域の方等が見学されている際には、積極的に声をかけて遺跡の説明を行うなど、地域との関りを意識しながら発掘調査を行っている。現地説明会の参加者や見学者の感想の多くは、自分の住む地域に遺跡があることへの驚きがほとんどである。また、実際に発掘現場を見学し、遺物などに直接触れることで、埋蔵文化財に対する理解が深まり、地域の歴史を知るよい機会となっている。これら発掘調査における地域との交流は、埋蔵文化財の普及活動はもとより、地域に住む児童・生徒の「学習の場」として捉えることもできる。新学習指導要領(平成29 年3 月告示)では、地域の人的・物的資源の活用や、社会教育との連携の必要性が説かれ、さらに小学校学習指導要領「指導計画の作成と内容の取扱い」のなかでは、身近な地域の遺跡や文化財の調査活動など、その内容に関わる専門家や関係の諸機関との連携の必要性が明記されている。このような新学習指導要領の示す「関係機関との連携」において、本センターのもつ役割は重要である。また、本センターは、埋蔵文化財に関する専門的な知識や技能を学んだ小・中学校の教員が多く在籍しているため、児童・生徒の発達段階や、各教科の指導内容に即した授業を展開することができると考える。そこで、本年度発掘調査を行った2つの遺跡において、当該地域の学校を対象とした現地説明会や、出前授業の実践をもとに、埋蔵文化財の活用法とその教育的役割を検証し、本センターと学校の連携の在り方について考察していきたい。