石器石材の肉眼鑑定と蛍光X線分析の連携―黒曜石製石器の分類における課題について―
赤崎 広志
( Akazaki Hiroshi )
上平遺跡は、令和元年から令和2 年にかけて、宮崎県都城市山之口町で発掘調査を実施した複合遺跡である。筆者は、この遺跡の整理作業にかかる石材の分類に協力した。この遺跡は、古墳時代の地下式横穴墓から人骨や鉄剣なども出土した複合遺跡であるが、出土層位の主体は縄文時代後期と早期であった。特に縄文時代早期には100 基を超える集石遺構、炉穴、住居跡などが検出されており、大規模な生活痕跡が残っていた。発掘調査では、多数の縄文土器に加えて、石鏃を主体とする石器類が出土しており、鹿児島方面との関係性が伺える興味深い遺跡である。この遺跡の報告書は令和4 年度刊行予定であり、縄文土器や石鏃の詳細な形態分類は報告書に記載される。本稿では多数出土した石鏃の石材鑑定と蛍光X線分析を実施した結果、分類にあたって判断に迷った事例や黒曜石以外の石材の分析結果などを中心に報告する。