植出北Ⅱ遺跡・植出遺跡出土ガラス関連資料の科学的調査
村串 まどか
植出北Ⅱ遺跡から出土した勾玉鋳型は、東日本では初めての発見例である。この勾玉鋳型の型に合致したガラス勾玉が近くの植出遺跡より出土しており、ガラス玉類の流通と製作について注目される。本研究では、沼津市文化財センターおよび静岡県埋蔵文化財センターに可搬型分析装置を持ち込み、鋳型とガラス玉類(勾玉・小玉)を対象とした科学的な調査を実施した。分析の結果、勾玉鋳型については、ガラス残滓は確認できず、部位によって鉛Pb の検出強度に差がみられたが由来は不明である。ガラス勾玉と小玉については、すべてカリガラスであることがわかった。ガラス勾玉は外見から2種類のガラスを再熔融して作られたもので、分析データを比較したところ両遺跡内で出土したガラス小玉と化学組成的に近いことがわかり、遺跡にもたらされたガラス小玉が勾玉製作に用いられた可能性が考えられた。