縄文時代後期注口土器の残存状況に基づく分析 豊田市今朝平遺跡出土資料より
川添 和暁
縄文時代後期の注口土器について、使用・廃棄の痕跡から、その活動行為の復元を論じたものである。今回、部位と残存状況について特に注目して、分析を行った。注口土器自体の分析はもちろんのこと、加えて、注口土器とは歴史的脈略が全くなく、かつ形態的に類似する、中世陶器古瀬戸類の水注との比較・検討を行った。その結果、両者には、残存部位および欠損状況において大きな相違が認められ、注口土器では、注口部を意図的に根元から切断する行為がしばしば行なわれたものと推定した。遺跡から出土する注口土器は、注口部、注口部が除去された胴部、注口部のついたママの完品、胴部片の4群の状態に分けることができ、特に他の破片とは接合しない注口部の存在など、祭祀行為や遺跡間関係を考える上で重要になることを指摘した。