縄文後晩期の岩偶岩版類について 東海地域の事例を中心に
川添 和暁
本稿では、東海地域の資料を中心に、関西地域の資料をも含めて、確認できた岩偶岩版類について集成・分析を行った。岩偶岩版類を、断面形状から板状のものと非板状のものに分け、板状を13 類型に、非板状を4 類型に分類できるとした。これらは縄文時代後期中葉から晩期末までに認められるが、後期中葉から晩期初頭中心の伊勢湾西岸域と後期末から晩期末までの伊勢湾東岸域との様相の差を指摘し、後期岩版類や分銅形土偶、および南九州域の影響を受けた伊勢湾西岸域の様相から、やや東海地域の独自色を出した伊勢湾東岸域の様相へと変遷して行くと考えた。また、岩偶岩版類と線刻礫、および石錘と言われているものの一部にも有機的関係を示すと考えられるものが存在する可能性を指摘した。