猿投窯型瓦塔の展開(2) 猿投窯型以前
永井 邦仁
東海地域において猿投窯型瓦塔が量産化される以前、およそ8 世紀前半の瓦塔を検討する。尾張・三河・遠江国域で数点ずつ確認できた瓦塔では、軸部上端に庇状・簾状粘土帯を付加することによって組物を表現する技法が採用されていた。この技法は猿投窯型瓦塔の空中粘土帯技法に通ずるもので、当該期の瓦塔がその原型になっていたと結論づけた。そして庇状・簾状粘土帯技法は、関東地域の8世紀前葉〜中葉の瓦塔にもみられ、両地域の瓦塔をつなぐ手がかりになるものと見通した。