銅鐸に伴う「舌」について
服部 信博
弥生時代を代表する遺物は何といっても銅鐸であろう。銅鐸はその形状からみて青銅製のベルであり、金属音を発する祭器としての性格を持つ。しかし銅鐸本体のみでは音を発することはできず、当然内面突帯と触れ合う舌が必要になる。銅鐸と舌はセット関係にあった。しかし、現在までに、銅鐸本体は全国で500例近くの出土が報告されているのに対し、舌に関しては、出土例が極めて少なく、その実体はほとんど不明であった。今回、全国から出土した舌及び舌状石製品を集成し検討してみた。現状で確認できる舌には、青銅製のものと石製のものが存在し、青銅製舌に関しては、初期の銅鐸に伴い、銅鐸鋳造時に併せて舌も鋳造されていた可能性を、石製舌については使用痕の有無によって弥生中期と後期で大きく変化することを指摘することができた。また、舌の出土状況についても若干の検討を加えてみた。