関東地方北東部における縄文時代中期前葉大木式系土器の縄文−栃木県北部を中心として−
塚本 師也
( TSUKAMOTO Moroya )
縄文時代中期前葉に関東地方北東部では、阿玉台式土器と大木式系土器が共伴する。大木式系土器は、原則として縄文を施文し、2段LRの縄の縦回転施文が主流と言われている。筆者は茨城県北部の大木式系土器に直前段反撚りの縄があることに気づいた。阿玉台式土器は、前半期は原則として縄文を用いないが、Ⅲ式新段階に縄文を施文するようなる。阿玉台式の縄文受容の背景を考える際、共存する関東地方北東部の大木式系土器の縄文と比較する必要がある。そこで本稿では、栃木県北部の3遺跡の中期前葉大木式系土器を観察し、縄文の種類や施文方向の傾向を把握することにした。2段LRの縄が主体を占め、1段Lの縄、2段LRとRLの縄(交互施文)、2段RLの縄が少量存在する。また僅かに、前々段反撚りや3段RLRの縄もある。ほとんどが縦回転施文であり、わずかに口辺部のみ横回転施文したものがあった。茨城県北部に見られた直前段反撚りの縄は、槻沢遺跡で1~2例確認されたにすぎなかった。三輪仲町遺跡や山苗代A遺跡では、2段LRの縄が約8割を占めた。槻沢遺跡では2段LRとRLで大きな差が無かった。