丁字形利器とその系譜
鈴木 一有
( SUZUKI Kazunao )
東平1 号墳は静岡県富士市に築かれた直径13 mの円墳であり、無袖横穴式石室の床面から鉄刀、鉄鏃、刀子、馬具、須恵器とともに、丁字形利器が出土した。丁字形利器は、その特異な形状から古くから注目を集めていたが、類例が極めて少ないことから、現時点に至るまで明確な位置づけがなされているとはいいがたい。本稿では、この特異な利器の系譜を東北アジア地域に求め、その出現過程について考究するとともに、関連が想定できる資料を取り上げて、その分布と性格にかかわる展望を示したい。