中近世遺跡の上下変動についての推察 -広島県沿岸部を中心に地殻変動値、潮位観測値、海水準変動曲線をもとに-
重森 正樹
( Shigemori Masaki )
広島県沿岸の中近世の遺跡の低化現象について検討を行った。まず、約 100 年にわたり観測された地殻の上下変動値によると主には南海地震による沈下の影響が見られた。次に海水準の変動について観測値の概観を行った。それらを踏まえて代表的な遺跡の立地をフェアブリッジの海水準変動曲線を使用して検討を行った。その結果、改めて沿岸に位置する遺跡の過去の立地状況が判明し、遺跡の低化現象の原因を一部ではあるが、推察することができた。また、本稿執筆途中で入手した気象庁による観測データが歴史学の分野で従来言われていた海水準と気候の直接的な相関関係を否定する結果であるということが判明した。