藤枝市寺家前遺跡から出土した柄付き鉄製鎌について
中川 律子
静岡県中部の藤枝市、志太平野の北東部に所在する寺家前遺跡では弥生時代後期の集落跡と水田跡が見つかっている。山裾には竪穴住居があり、更に南側の低地部には水田跡が広がっている。水田は地形を上手く利用しながら、杭列・矢板を伴う大畔で区画され、更にその中には小さく区画された畔の跡が見つかっている。その杭列を伴う畔のひとつSK-6の南側から、柄に装着された鉄製の鎌が出土した。共伴する周辺の土器などから鎌は弥生時代後期のものである可能性が高まった。柄と刃が一体になって出土した弥生時代の鎌はこれまでに類例がなかった。新たな資料の発見により、鎌刃の装着方法や角度、鎌柄の構造などが徐々に解明されてくるであろう。