静岡県における有茎尖頭器の利用
柴田 亮平
三好 元樹
中村 雄紀
有茎尖頭器は縄文時代草創期前半の特徴的な石器であるが、県内では近年の大規模工事に伴う発掘調査の結果、資料数が大幅に増加している。そのため、本論では静岡県内から出土した有茎尖頭器の集成をおこなった。集成の結果、511点の有茎尖頭器が出土しており、その大半が東部地域に集中すること、旧石器時代遺跡の密集地域であった磐田原台地では出土例に乏しいことがわかった。また、石器群として出土する例に乏しく、大半が散在的な出土の様相を見せることを再確認した。東部地域ではホルンフェルス(頁岩)と安山岩が利用石材の約8割を占め、近傍の石材に依存していることが分かった。その一方で、残りの2割には青森県深浦八森山産の黒曜石など遠隔地の石材が少数含まれていることが明らかとなり、縄文時代草創期の地域・社会関係を明らかにする上での課題が浮かんできた。