兵庫鎖立聞素環環状鏡板付轡の特質
大谷 宏治
環状鏡板付轡(円環轡)のうち兵庫鎖を立聞とする素環環状鏡板付轡(兵庫鎖立聞素環円環轡)について轡の連結方法から大きく4種類に区分し、Ⅰ段階は鏡板介在型が主体で、Ⅱ段階以降鏡板介在型から遊環介在型・銜介在型と瓢形円環轡が派生・展開したと想定した。また、兵庫鎖立聞素環円環轡の初期の属性は韓半島でも確認できるが、兵庫鎖を使用するものは日本列島で主体的に採用されることから、倭王権が鉄製轡の独自色を示すため、内湾楕円形鏡板付轡等への兵庫鎖の採用と関連させ、兵庫鎖立聞素環円環轡は兵庫鎖付小型矩形立聞円環轡とともに日本列島で創出されたと想定した。Ⅱ・Ⅲ段階の変化もほかの轡と連動して変化することから轡生産の相対的な変化に連動した工人集団の再編と関連すると想定した。