下懸遺跡出土の木簡
池本 正明
福岡 猛志
下懸遺跡は、愛知県安城市桜井町に所在する弥生時代終末期から古墳時代前期を中心とする集落遺跡である。調査では、弥生時代終末期から古墳時代前期の居住域と、その外縁部に展開する谷地形が確認されている。本稿で資料紹介する木簡は、谷地形の上層から1点単独で出土したものである。釈文は一面が「春春春秋秋尚尚書書律」、その裏面が「令令文文□□是(カ)是人」となる。四書五経の題目などを墨書したいわゆる習書木簡である。習書木簡ではあるが、記載された内容が律令官人と関わりが窺える興味深い資料といえる。本稿では、木簡の資料紹介を主題とする。周辺の状況、伴出資料の検討から、木簡の帰属時期を推定し、記載内容についての検討を加える。