新郭遺跡出土の鍛冶関連遺物の金属学的調査
大澤 正己
5世紀中葉の新郭遺跡のSI-34出土鍛冶関連遺物を調査した。(1)鍛冶原料に鉱石系鉄素材を用いて鉄器製作の鍛錬鍛冶が行なわれている。(2)5世紀としては高温操業で、鉄滓・羽口両脇下滓・羽口溶融物・粒状滓にヴスタイトと共にヘーシナイトを晶出する。(3)鍛冶原料の可能性を持つ鉄製品の1つは、非金属介在物に非晶質珪酸塩系ガラス質と、酸化鉄とファイヤライトの共晶夾雑物を含むので、直接製鋼法・低温還元法にもとづく塊煉鋼が想定され、大陸産の可能性がある。(4)鍛造剥片は鍛打前段階から仕上げ段階まであり、鍛錬鍛冶の幅広い作業内容が想定された。粒所滓と称する遺物は球状化スラグや羽口先端溶解物の可能性がある。(5)耐火度は専用羽口が1500℃、高杯転用羽口が1410℃で、鍛冶工人が粘土の本質を熟知していたと予想される。