朝日遺跡における弥生時代初期の植物圧痕分析
中山 誠二
原田 幹
永井 宏幸
東海地方における弥生時代初期の生業や穀物利用の実態を解明することを目的に、本地域でもっとも代表的な弥生集落である朝日遺跡における植物圧痕の調査を行った。対象とした資料は、1995 年度と1996 年度の発掘調査によって検出された弥生時代前期から中期初頭の土器である。同定分析の結果、弥生時代前期を主体としてイネ、アワなどの穀物が検出された。本地域の五貫森式から馬見塚式段階の遺跡ではアワ・キビなどの小粒穀物が多いのに対し、朝日遺跡の前期段階ではイネの検出率が高い点は、既存の畠作に加え、水稲農耕の拡大と安定的な経営を予測させる。