一宮市馬見塚遺跡における立地と遺跡形成についての覚書
川添 和暁
鬼頭 剛
一宮市馬見塚遺跡は、尾張低地帯に立地する遺跡として、学史的にも知られた著名な遺跡である。当地域の縄文時代後晩期の遺跡が散発的な状況を示す中、馬見塚遺跡では、遺構・遺物の出土など遺物包含層の様相が群を抜いて濃密であり、この遺跡の様相の解明および評価は、当地域の縄文時代後晩期を語る上で必須である。筆者らはこれまで公表されている調査・研究成果をまとめる作業から開始した。本稿では遺構・遺物出土の様相を把握する一方で、地質学的立場からの表層地形解析結果を重ね合わせた。その結果、縄文時代後期後葉から弥生時代に至るまで、一貫して遺跡内のくぼ地際に遺跡が形成されていることが判明し、晩期中葉以降は同時に2ヶ所で形成が行なわれている様子を明らかにすることができた。