金萩遺跡刻書土器小考
池本 正明
本稿では金萩遺跡出土の刻書土器に『』が多い事に注目する。『』は大陸起源の信仰に登場する九字の略号であることが指摘されているが、名古屋市昭和区に所在する八事小堂跡の存在などを評価すると、密教との関わりを想定できる。金萩遺跡資料はいわゆる純密以前の古密教と呼ばれる段階に属する。古密教はその特徴となる現世利益的呪術性を発揮して、猿投窯の製品流通にも宗教的支援を実施していたものと推察でき、金萩遺跡の刻書土器はこうした修法に関連しているものと考えられる。
これは、猿投窯の生産と流通が律令制と関わり深い一面を有していた必然とも言えるであろう。
これは、猿投窯の生産と流通が律令制と関わり深い一面を有していた必然とも言えるであろう。