山茶碗の用途をめぐって 摩滅痕の分析から
武部 真木
東海地域に特有の中世食膳具とされてきた無釉の陶器「山茶碗」は、中世前期の膨大な消費量に対して中世後期には一転して全く流通しない地域が生じるなど地域単位でその様相は大きく変化している。ここでは山茶碗に認められる摩滅の痕跡を「使用痕」と考え、型式ごとの変化を分析することによって使用形態という視点から中世前期と後期の山茶碗の違いを抽出した。そして山茶碗は単なる「食膳具」ではなく、使用方法と山茶碗の形態変化が相互に関連してきたことを想定した。