近接する遺跡間における同一年代の縄文土器の比較 栃木県益子町御霊前遺跡と茂木町桧の木遺跡の中期縄文土器を対象として
塚本 師也
( TSUKAMOTO Moroya )
縄文時代において、近接する遺跡で、全く同じ土器を製作・使用していたのか、遺跡毎に変異があったのかを確かめるために、2つの遺跡の同一年代の土器の比較を試みた。栃木県東部の八溝山地鶏足山塊西麓にあり、約12km離れた益子町御霊前遺跡と茂木町桧の木遺跡の中期中葉の阿玉台Ⅳ式期の土器を分析した。この時期、この地域では、土器の形態・装飾が複雑で、異系統の土器が複数存在するため、土器の差異を把握しやすいと考えたからである。両遺跡の出土土器を分類し、相互に比較したところ、阿玉台Ⅳ式の口縁部形態を持ち、体部を大木式的な沈線文で表現する土器と阿玉台式とは口縁部断面形態が異なる直線的に開く全面縄文施文の土器が、御霊前遺跡には一定量存在するのに対し、桧の木遺跡ではほとんど存在しないことが明らかになった。