桧の木遺跡出土阿玉台式土器の胎土分析
河西 学
( KASAI Manabu )
松本 建速
( MATSUMOTO Takehaya )
市川 慎太郎
( ICHIKAWA Shintaro )
中村 利広
( NAKAMURA Toshihiro )
小林 謙一
( KOBAYASHI Ken‘ichi )
塚本 師也
( TSUKAMOTO Moroya )
桧の木遺跡出土の阿玉台式土器および同時期あるいはそれ以降の土器の胎土分析をおこなった。蛍光X線分析では、どの土器も安山岩~デイサイト質のSiの値を示し、地元地質との類似性が推定され、またFe、Tiが比較的高濃度であることから、土器に利用された泥質堆積物が狭義の花崗岩由来の可能性が低いことが推定された。これは、地元原料を用いた土器作りを支持する結果である。薄片による岩石鉱物分析では、全ての阿玉台式土器では黒雲母が検出されるが、黒雲母が多く含まれる土器では含砂率と重鉱物の割合が高く岩石では花崗岩類が多い傾向がある。一方、黒雲母が少ない阿玉台式では、含砂率と重鉱物の割合が低く、変質火山岩類や堆積岩が多く含まれる傾向が認められ、考古学的に在地土器が多いとされる大木系土器、加曽利EⅠ式、火炎系もしくは浄法寺類型などの胎土と共通性が認められた。さらにこれら変質火山岩類と堆積岩を伴う黒雲母が少ない阿玉台式土器は、岩石鉱物組成ばかりでなく元素組成のK/Si値の検討などからも地元地質と類似性が認められることから、地元原料と雲母や花崗岩類の混和材を混和しで製作された阿玉台式土器である可能性が推定された。
この結果を受け今後は、地質条件の異なる他の地点において同様の分析を実施することで阿玉台式土器の混和が地元原料を用いて各地域でおこなわれていたことの普遍性を評価・検討する必要があると考える。阿玉台式土器の混和材である雲母や花崗岩類の由来についても花崗岩類岩体周辺の堆積物との比較により今後さらに検討していきたい。
この結果を受け今後は、地質条件の異なる他の地点において同様の分析を実施することで阿玉台式土器の混和が地元原料を用いて各地域でおこなわれていたことの普遍性を評価・検討する必要があると考える。阿玉台式土器の混和材である雲母や花崗岩類の由来についても花崗岩類岩体周辺の堆積物との比較により今後さらに検討していきたい。