吉田初三郎の神戸市鳥瞰図について
The Pictorial Map of Kobe in 1930 drawn by Yoshida Hatsusaburo.
三好 唯義
( Miyoshi Tadayoshi )
吉田初三郎(1884~1955年)の描く鳥瞰図は、デフォルメされた地形と、美しく詳細な描写が特徴で人気が高い。確かにその通りなのだが、しかし、そこに描かれた事物の確かさを問う研究は、これまでになかった。本論では、神戸市図の中に描かれた事物を古写真や絵葉書類と比較したが、初三郎は実に丁寧な調査をし、地図中に記録保存していたことが判明した。結論としては、昭和5年夏の神戸市内にあった人工構造物を含めて、都市景観を広範囲にそして正確に記録しているきわめて貴重な資料といえる。また、不正確な地形描写に詳細な情報を含むといえば、江戸時代の刊行地図の特色だが、初三郎図を刊行地図の発達史上で位置づけることも可能だろう。
三好唯義 2008「吉田初三郎の神戸市鳥瞰図について」 『神戸市立博物館研究紀要』
https://sitereports.nabunken.go.jp/ja/article/19924