鳩谷天愚孔平伝 ー司馬江漢周辺の-奇人ー
The Life of Tengu Kōhei, an eccentric person of the same period with Shiba Kōkan
塚原 晃
( Tsukahara Akira )
江戸時代後期を代表する洋風画家・司馬江漢(1747-1818)は、その晩年期において、年齢詐称や偽死などの奇行をおこなったことでも知られている。その一因として、一端の知識人でありながら大衆に向かって胡散臭いパフォーマンスを行い、江戸市中、特に蘭学者の間でも目立つ存在であった鳩谷天愚孔平の存在に注目したい。江漢の『春波楼筆記』にも見られるように、江漢にとって鳩谷の存在は確かに心地好いものではなかった。だがそれは自分には理解できない存在としてではなく、ある面で己れの境遇によく似た、鏡のような存在として嫌悪感を抱いたのではなかろうか。 ほぼ同時期の江戸に於いて江漢と鳩谷が年齢詐称を行っていたらしい。この件における両者の影響関係を立証づけることは困難だが、二人の間に何らかの因縁を感じさせる。そして江漢による文化十年の偽死というのも、鳩谷に与えられた評語「虚談有候得共、よのがひになる事はいはず」という言葉がふさわしい行為であった。
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2021-11-11
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