考古学研究会第69回総会・研究集会報告（下）　古墳時代須恵器の分布過程と型式変化の連動性

The formation process of Sue ware distribution spheres and interconnection seen in typological change during the Kofun period

本稿は，古墳時代における須恵器を特徴づける広域分布，型式の斉一性，形態や器種組成の連動性について，陶邑窯と地方窯の器種組成の比較と消長，消費遺跡である集落と古墳における組成の変化に着目し，検討を行った。初期地方窯の消長および集落・古墳双方の使用器種組成からは，地方窯では生産の低調な蓋坏の使用増加が契機となり，初期地方窯須恵器から陶邑窯須恵器へ転換することを指摘した。また，朝鮮三国時代の墳墓資料との比較をとおして，蓋坏と高坏という基本的組み合わせを列島的な葬送器種と位置づけ，古墳での使用と集落での蓋坏の需要の高まりが，須恵器の広域分布と型式の連動の背景となったと考えた。