十日町市野首遺跡における縄文時代中・後期の黒曜石利用

The use of obsidian at the Nokubi site,Tokamachi city in the Middle and Late Jomon Period

　新潟県十日町市に所在する野首遺跡は、縄文時代中・後期の集落跡である。1996 年 ( 平成 8) に発掘調査が行われ、計 790 点の黒曜石製石器が出土した。この内の 660 点について産地推定分析が行われ、95％が信州産との結果が出ている。これらの石器には、石鏃、釣針形石器、石核、剥片・砕片類、原石などがあり、遺跡内に黒曜石原石が持ち込まれ、主に石鏃が製作されていたことがわかった。また、中・後期の信濃川上・中流域では、星ヶ塔や星ヶ台、霧ヶ峰などの諏訪系と、和田峠や小深沢、和田鷹山など和田峠系の信州産黒曜石が多用されていることが既に指摘されていたが、本遺跡においても同様の傾向であった。そして、これらの原石は前期以降に中部地方の黒曜石原産地を中心に形成されたと考えられている広域の黒曜石流通システムの中で、千曲川・信濃川ルートを通して本遺跡に搬入されたと推定した。