鞠智城と菊池川中流域の地域社会との関係解明を目的とした考古学的研究
柴田 亮
鞠智城と菊池川中流域に所在する遺跡を考古学的手法によって分析することで、9世紀後半から10世紀の地域社会と鞠智城との関係性について論じた。菊池川中流域の古代集落の動態は、鞠智城の倉庫群の変遷と有機的に結びつく。これは鞠智城の倉庫群が菊池川中流域の古代集落と律令制度を通じて強く連関したことが要因である。古代集落の動態は、律令制度の変化の過程で、菊池川中流域の集落構造や支配体制に転換が生じたことを示しており、律令制度の崩壊とともに鞠智城の倉庫群の存在意義は消失した。