古墳時代から平安時代の遺構・遺物と集落の性格
藤村 翔
( FUJIMURA Sho )
宇東川遺跡F地区の本発掘調査では、竪穴建物84棟、掘立柱建物2棟、溝1条、土坑20基、ピット144基を調査し、縄文時代から平安時代、中近世の遺物が出土した。竪穴建物はすべて古墳時代中期後半から平安時代のものであり、5世紀後半の低地開発を経て、10世紀後半頃まで長期間・安定的に継続した集落の実態が明らかになった。建物規模は潤井川下流域の集落と比べると全体的に小さいが、奈良・平安時代には転用硯や石製腰帯具、墨書・刻書土器、鉄製紡錘車などが出土しており、浮島沼北西岸地域における、律令体制下の里(郷)の中心的集落の有力候補地として評価できる内容を誇っている。中近世には、松原川西岸一帯が墓地として利用されたようである。