日韓古代山城の水門構造からみた鞠智城
主税 英徳
本稿では、日韓の古代山城を対象として、水門構造について比較検討を行い、鞠智城の特徴の把握を試みた。日韓の古代山城を比較した結果を整理すると以下のとおりである。排水口の高さという点においては、ある程度の差があることが分かった。排水口の規模については、日韓では大きな差異は見られなかった。ただ、日本の古代山城では様々なものが確認できることに対し、韓国の山城のものは、大きく2つのグループに分けられる可能性がある。排水口の形状は、日本では四角形のもののみ見られるが、韓国では、四角形に加え、台形や五角形のものも確認できる。さらに、排水口の高さの水門構造の立地の関係をみると、おおきく3つの類別に分かれることがわかった。その上で、鞠智城の水門構造をみると、排水口の高さ、形状、立地などは、日本の古代山城の多数を占める特徴と同様であることが分かった。ただし、導水溝手前に位置する「池状落ち込み遺構」は、日本の山城でも少数しか確認されておらず、特徴的であるといえる。