伊東市竹の台遺跡出土墨書土器の再評価―式内社葛見神社神戸集落の検討―
勝又 直人
静岡県伊東市竹の台遺跡は、伊豆国田方郡久寝郷内の集落遺跡で、奈良~平安時代の遺構・遺物が多く確認されたことで知られている。平成元年の伊東警察署庁舎建設に伴う発掘調査の結果、竪穴住居跡の覆土から多くの土師器坏等が焼土と共に廃棄された状況で確認された。本稿では、この調査で見出された祝関係の墨書土器から、当該集落遺跡は近接する式内社葛見神社の神戸集落である可能性を検討した。また供膳具が多く廃棄された状況から、『令集解』儀制令春時祭田条等にあるような人々が社に参集し飲酒を行うことを基軸とする共同飲酒儀礼や、祭祀後の直来に可能性を求め、墨書土器「忍□〔界カ〕」を僧名と解釈した場合、神前読経が行われたことを推定した。