#たじひのだより 松原市文化財情報誌 No.10 [写真1]河合遺跡発掘調査全景(上が北) カメラの番号は2 ページの①ー③に対応 ##整然と配置、奈良時代の役所跡発見!! 河合遺跡は、市内南西部河合地区に所在し、狭山池から北流する西除川左岸の段丘上に立地する弥生時代から近世の遺跡です。 これまでの市・府の調査で、奈良時代の人面墨画の土器や木製品などの祭祀遺物が出土した幅約12m、深さ約1.9mの大溝、大規模な掘立柱建物群、飛鳥時代の秤用の銅製おもりなど注目される遺構・遺物が発見されています。 今回、市立学校給食センター建設工事の事前調査でも、奈良時代の多数の大型掘立柱建物跡が見つかりました。 これらの施設は、建物の大きさ・構造・配置及び出土遺物などから、奈良時代の河内国丹比郡の官術(役所)跡と考えられ、古代の官術を考える上で貴重な発見となりました。 建物は、掘立柱建物といわれる地面に穴を掘りくぼめ柱を立ち上げる建物で、13棟以上が建っていたようです。中には数度にわたる建て替えが認められるものもあり、柱穴の一部に沈下を防ぐための礎板が敷設されるなど、これらの建物群が一時的な施設ではなく、継続的かつ丁寧に建てられていたようです。 建物の配置は、北側に東西6間(13m)以上、南北1間(3.lm)の東西建物1、東側に南北推定24間(約51m)、東西2間(3.3m)の南北建物、南側に東西12間(26m)以上、南北2間(3.2m)の東西建物2を配し、官術特有の長屋で囲むように「コ」又は「口」の字形に区画しています。 調査では、官術の東域が発見され、北と南の東西建物間の距離は約56mを測ります。また、この長屋の東側には、東西2間の南北3間(27.2㎡)と南北4間(31㎡)の2棟の倉庫が南北に並んでいました。 官術の建設にともない一部埋められた浅い谷の上層からは、奈良時代の軒丸瓦や瓦片が出土しています。このことから、建物の一部に瓦が使用されていたと思われ、硯や「吉」と書かれた土器等の遺物も出土していて、官術遺跡の特徴を示しています。谷の下層からは、漆が付着した飛鳥時代の壺が出土し、周辺に漆を使用する工房があったことが想定されます。また、同じく下層から堺市美原区に所在する飛鳥時代の丹比廃寺(創建に丹比氏が関わったと考えられています。)で用いられた軒丸瓦などが出土し、丹比郡を本拠とする有力氏族である丹比氏との関係にも注目されます。 [写真2]①掘立柱建物群東側の谷地形(南から) [写真3]②南北建物の北側部分と東西建物1 (北東から) [写真4]③南北建物の南側部分と東西建物2 (北から) [写真5]丹比廃寺式軒丸瓦 [写真6]漆壺 [写真7]墨書土器「吉」 ##市史編さんレポート 「三宅萬等小学校」とその児童たち 明治25年(1892) から明治42年頃までの約20年間、三宅村に「三宅高等小学校」がありました。三宅高等小学校は尋常小学校に併設されたものでなく、単独の高等小学校でした。高等小学校は義務制ではなく、義務教育の尋常小学校4年を卒業した人が進む学校です。当初は3年制で発足しましたが、翌年から4年制となり、10~14歳くらいの子供たちが通学しました。 写真は三宅高等小学校児童の作品です。襖のようなものに習字や絵を貼り付け、「三宅高等小学校児童成蹟品 奉納 明治三十五年四月」と書いて、屯倉神社に奉納したものです。 習字は第1~4学年が出品しています。学年によって題が決まっており、第1学年は「一生の計は少年の時にあり」、第2学年は「実のる程頭の下る稲穂かな」、第3学年は「琢かずば玉もおうじ鏡も何かせん」、第4学年は「王事に死するは男児の本領なり」です。 絵画は第2~4学年が出品しています。同じ絵が描かれているので、手本を模写したのでしょう。下の写真から、学年が進むふでづかにつれ、繊細な筆遣いとなっているのがわかります。 三宅高等小学校に関しては、大阪府がまとめた統計書等から児童・教員数などがわかる程度で、学校生活について具体的に書かれたものはほとんどありません。これらの作品は当時の児童を身近に感じられる資料として貴重なものです。 (明治時代以降の小学校の変遷は、『松原市史』第二巻に詳しく説明しています。) [写真8]屯倉神社奉納三宅高等小学校児童成績品(屯倉神社所蔵) [写真9]第2学年 テル [写真10]第3学年 孝太郎 [写真11]第3学年 きた [写真12]第4学年 栄一郎 [写真13]第4学年 民造 [写真14]第4学年 徳太郎 ##みて・きいて・ふれて ###「みんなで守ろう!!文化財」 昭和24年1月26日に法隆寺の金堂が焼失したことから、火災や震災から文化財を守る取り組みとして「文化財防火デー」が定められました。平成22年から松原市消防本部・消防署主導で文化財防火訓練が行われることになり、府・市指定文化財の布忍神社で初めての文化財防火合同訓練が行われました。 平成23年は、屯倉神社で神社の関係者、地元消防団の方々と合同訓練が実施され、文化財の持ち出しや放水訓練など、皆さん真剣な面持ちで訓練に取り組まれました。 [写真15]1月30日文化財防火訓練 ###松原中学校区7ェスク展示会 くらしの道具のパネルクイズと本誌で紹介した河合遺跡などのパネルや遺物の展示、ス ライド上映を行いました。くらしの道具のパネルクイズは、年配の方にはちょっと懐かしく、子供たちには初めて目にするものばかり。名答や珍答などにぎやかな声が響いていました。今では珍しくなった「さおばかり」を用いて色々なものを量る体験も行われました。 [写真16]11月14日松中フェスタ ###歴史講座発表 大阪府立近つ飛鳥博物館で冬季特別展「歴史発掘おおさか」開催中に講演会が催され、松原市からは「松原市河合遺跡ー地方官術の発見ー」の題で講演に参加しました。 河合遺跡で確認された大型掘立柱建物群が、古代の官術(役所)を考える上で貴重な発見であったことを報告し、熱心に聞いていただきました。 [写真17]3月13日歴史講座発表 ##松原市内の文化財についてお知りになりたい方へ 【ホームページ】 http:/ /www.city.matsubara.osaka.jp/10.1072.49.241.html 【文化財の展示】 ふるさとぴあプラザ1F ・郷土資料館 (財団法人松原市文化情報振興事業団) 大阪府松原市上田7丁目11番19号 (松原市役所5F ・総務部人権文化室) 大阪府松原市阿保1丁目1番1号【発掘届出・遺跡範囲確認・建築確認申請時の合議などの受付窓口] 松原市役所5F ・教育委員会地域教育振興課 〒580-8501 大阪府松原市阿保1丁目1番1号電話072-334-1550(代) 【文化財に関する各種相談・手続き・調査、図書の販売、その他】 教育委員会地域教育振興課市史文化財係阿保事務所 〒580-0043 大阪府松原市阿保5丁目21番8号 電話 072-336-6800 電話 072-334-1550(代)/電話072-336-4448 FAX 072-332-7720 FAX 072-336-4001 ##奥付 編集•発行:松原市教育委員会事務局地域教育振興課市史文化財係2011.3 印刷・製本:株式会社高速オフセット